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実家の売却はどうやって進める?相続前と後の違いや税金、特例、売却手順まで徹底解説

2023.09.14

実家の相続や売却では、大きなお金が動きます。それに伴いかかる税金の額も大きくなるため、事前にしっかりと計画を立てなければ、その後の自分自身の生活に影響を及ぼす可能性も否定できません。

実家の売却には大きく「相続前」と「相続後」の2つのタイミングがありますが、それぞれのシチュエーションでかかる税金や使える特例が異なります。まずは税金の仕組みや特例の種類を理解したうえで、自分に合ったタイミングや方法を選択していくことが大切です。

ここでは、実家を売却する2つのタイミングやかかる税金と使える特例、タイミングを選ぶときの判断基準、実家の売却手順について解説します。

実家を売却する2つのタイミング

実家を売却する2つのタイミング

実家を売却する場合、そのタイミングは大きく「相続前」と「相続後」の2つに分けられます。以下で2つのケースについて解説します。

①【相続前】所有者が健在のうちに売却

相続が発生する前、つまり所有者が健在のうちに実家を売却するケースです。

この場合、所有者である親とともに話を進められるため、比較的スムーズに売却を進めやすいという特徴があります。ただし、親が認知症などにより意思能力が欠けていると判断された場合、売却が難しくなる可能性があることを覚えておきましょう。

また、親が健在のうちに実家を売却するということは、売却後の親の住まいについても事前に計画を立てておくことが大切です。たとえば賃貸やシニア向け住宅へ住み替えたり、老人ホームに入所したり、同居といった選択肢が考慮できます。より早くから今後の住まいについて共通認識を持つことで、所有者本人の希望を反映させることもできます。

なお、不動産の売却時には売却益に対して税金(譲渡所得税)がかかります。相続前に売却した場合、この税金を負担するのは所有者(親)です。一方、相続人が負担する相続税においては、現金で相続するよりも、特例を活用して不動産を相続する方が相続税の負担を抑えやすい傾向にあります。つまり、相続前に売却すると、相続後に売却する場合と比較して相続税が多くかかってしまうこともあり得るのです。

②【相続後】所有者が亡くなってからの売却

次に、相続が発生した後、つまり所有者が亡くなった後に実家を相続して売却するケースです。
実家を相続する場合は、相続税の軽減特例の活用が検討できるため、現金を相続するより相続税の負担を抑えやすい特徴があります。また、相続税は財産額が基礎控除額を超えた分(課税遺産総額)にかかります。

出典:財産を相続したとき「課税遺産総額の計算」|国税庁

相続税は金額も高額になりやすいうえ、原則一括での支払いかつ申告・納付の期限は10か月以内と定められているため、実家を売却したお金で相続税を賄うことも視野に入れられるでしょう。

一方で、相続が発生すると、相続登記や遺産分割協議など、さまざまな手続きに追われることになります。気持ちの整理もつかないような状況のなかで、実家の売却手続きなどの対応が重なる負担は大きいものです。場合によっては思い出の詰まった実家を売却することに対し、ほかの相続人から同意が得られずトラブルとなるケースもめずらしくありません。

なお、不動産を所有するということは、維持費もかかります。不動産を相続してから売却するまでの間に固定資産税や、マンションであれば管理費・修繕積立金などの支払いをする必要があります。

実家の相続の前と後でかかる税金

実家の相続の前と後でかかる税金

実家の相続や売却にはさまざまな税金がかかります。ここでは実家を売却するうえでかかる税金を紹介します。相続前については、税金を払う主体は実家を所有する親となりますので、この後の情報をもとに発生する税金の共通認識を持つと良いでしょう。

【相続後】相続時にかかる「相続税」

相続税とは亡くなった人(被相続人)の財産を相続する人(相続人)に課税される税金です。
相続税は遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額(課税遺産総額)に対して課税され、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人(注)の数」によって計算されます。また、具体的な税率は課税遺産総額を法定相続分(民法で定められた相続財産を受け継ぐ権利の割合)で按分した所得金額に応じて決められています。

注…法定相続人とは、法律により相続権が認められている人々(配偶者や子どもなど)のことを指します。

 

詳しい税率や計算式についてはこちらの記事をご確認ください。

【相続後】名義変更時にかかる「登録免許税」

登録免許税は、不動産の登記申請を行う際に課税される税金です。土地や建物の所有権が移転(たとえば名義変更や売却など)するときに課税されるほか、住宅ローン利用時にも金融機関が抵当権を設定するための登記を行う際に課税されます。
登録免許税は土地や建物の固定資産税評価額に原則的には税率0.4%をかけて算出します。
詳しくは以下の資料をご確認ください。

【相続前・後】売却時にかかる「印紙税」

印紙税法により定められた契約書などの文書を作成したときに課税される税金です。
印紙を書面に貼り、その上を印章または署名で消すことによって納税します。不動産売却のときは、主に売買契約書を取り交わす際に印紙税が発生します。

印紙税額は国税庁のサイトから確認できます。

【相続前・後】売却後に価格に応じて発生する「譲渡所得税」

不動産売却によって得た譲渡所得に対してかかる所得税や住民税です。譲渡所得は、売却価格から物件の購入費や売却にかかった費用などを差し引いて算出します。譲渡所得がない場合には、譲渡所得税はかかりません。
税率は売却した不動産の所有期間によって変わります。所有期間5年以内の場合は「短期譲渡所得」、5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり税率が大きく減少します。

譲渡所得税を含む不動産売却時にかかる税金の種類や計算方法は、以下の記事でより詳しく解説しているので、参考にしてください。

相続前と後で使える特例

相続前と後で使える特例

上記で解説したように、不動産の相続や売却にはさまざまな税金がかかります。そのため、税負担を軽減する特例の活用はとても重要です。しかし、相続前と後では使える特例が異なるため、自分の場合はどの特例を活用できるのかあらかじめ確認しておくと良いでしょう。以下に相続前後で使える特例を3つずつ紹介します。

【相続前】で使える特例

相続前に利用可能な特例は以下の通りです。

「マイホームを売ったときの特例」(譲渡所得税)

マイホームを売ったときの特例は、自宅の売却であれば所有期間を問わず、譲渡所得から最大3,000万円まで控除ができる特例です。不動産売却時において、もっとも節税効果の高い特例と言えるでしょう。

「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」(譲渡所得税)

マイホームを売ったときの軽減税率の特例は、所有期間10年以上など複数の条件がありますが、マイホームを売ったときの特例と併用が可能であり、条件を満たせばさらに節税が可能となります。

「特定のマイホームを買い換えたときの特例」(譲渡所得税)

特定のマイホームを買い換えたときの特例は、マイホームの買い替えが対象となります。ただし、この特例は税金の軽減ではなく、税金の支払いを将来に繰り延べる特例なので、上記2つとは少しタイプが異なる点に注意しましょう。

なお、詳細な条件などは以下、国税庁のホームページから確認してください。

【相続後】で使える特例

相続後に利用可能な特例は以下の通りです。

「小規模宅地等の特例」(相続税)

小規模宅地等の特例は、自宅用の宅地や事業用の土地の税額を軽減できる特例です。活用すれば居住用は330㎡まで、事業用は400㎡までの土地にかかる税金を最大80%減額可能です。

「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(譲渡所得税)

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費(原価)に加算できる特例です。これにより、譲渡所得が減少し、税金を軽減できます。

「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(譲渡所得税)

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、被相続人が一人暮らしをしており、相続後に空き家となった場合などに適用できる特例です。一定の要件を満たすことで譲渡所得から3,000万円まで控除できます。

なお、詳細な条件などは以下、国税庁のホームページから確認するようにしてください。

実家を売却するのは相続前と後どちらがいい?2つの判断基準

実家を売却するのは相続前と後どちらがいい?2つの判断基準

実際に実家を売却するにあたっては、当人である親や相続に関係する親族など、さまざまな関係者との調整をもとに意思決定をすることになるでしょう。
以下では、意思決定の材料として税金の観点から2つの判断基準について解説します。

判断基準①譲渡所得税がかかるかどうか

実家の売却を検討する際の判断基準の一つは、売却によって得た譲渡所得かかる税金「譲渡所得税」が発生するかどうかです。
譲渡所得税は不動産の所有者が負担することになるため、負担額がどのくらいになって、相続の前と後(親が負担するか、相続人が負担するか)のどちらが良いのかを話し合っておきましょう。

また、譲渡所得の3,000万円特別控除を適用できる場合もあります。譲渡所得は売却価格から取得費などを差し引いたあと、3,000万円まで税金がからないため、売却による利益が3,000万円を超える場合は大きな軽減になるでしょう。

判断基準②相続税が発生しそうかどうか

実家の売却を検討する際のもう一つの判断基準は、相続税が発生するかどうかです。
相続税が多くかかる場合は、相続後の売却が望ましいと言えるかもしれません。相続税は現金や不動産、株式などの資産を相続するときに課税される税金で、金額や税率は相続財産の評価額によって決まります。

現金を相続した場合、相続税評価額はそのままの金額で計算しますが、不動産の場合、時価(実際に不動産を売却した場合の価格)の80%程度で税金が計算されます。そのため、実家を売却して現金を相続するより、不動産のまま保有して相続し、その後売却したほうが、相続税を減額できる可能性があります。

相続前と後で変わる売却前の確認ポイント

相続前と後で変わる売却前の確認ポイント

相続前と後で変わる売却前の確認ポイントを解説します。

【相続前】の確認ポイント

相続前に不動産を売却する場合、事前に訪問査定などを活用してできるだけ正確な売却価格を知ることは重要です。また、同様に忘れてはいけないのが、取得費や物件を譲渡時の費用を確認しておくことです。
課税対象である譲渡所得を計算する際は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた額が基準となります。かかった費用を正確に反映できなければ、税金を多く支払うことにもなりかねません。取得費や譲渡費用は、しっかり把握しておくようにしましょう。

また、相続前に不動産を売却する可能性がある場合は、家族信託の検討もおすすめです。家族信託とは自分の財産を信頼できる家族に託し、管理や運用、処分を任せられる制度で、親が認知症になるなどで意思能力がないと判断された場合にも、事前に決められた範囲内であれば財産の管理・運用・処分が可能になります。

詳しい制度の内容は以下の記事で紹介しているので、ご確認ください。

【相続後】の確認ポイント

相続後に不動産を売却する場合、まず遺言書の有無と内容を確認しましょう。
遺言書は、被相続人が生前に「自分の財産を誰にどれだけ残すのか」を明記した文書です。遺言書がある場合、相続は基本的にその内容に従って行う必要があります。

もし遺言書がない場合や不動産の相続方法についての特別な指定がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行います。この遺産分割協議でどのような分け方を選択するかで、その後の手続きやかかる税金も変わる可能性があるので、相続人同士でしっかりと話し合いましょう。その結果をもとに作成した遺産分割協議書が、正式な相続の合意を示す証明書になります。

また、相続人が決まった後は、不動産の名義変更も忘れずに行わなければなりません。名義変更手続きは自分で行うこともできますが、不慣れな方や複雑なケースにおいては、司法書士への依頼を検討しましょう。

相続した不動産を売却するときの遺産分割のポイントや手順などは、以下の記事で詳しく紹介しています。

実家を売却する手順

実家を売却する手順

相続前の売却は、一般的な売却と変わりません。手順は以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

一方で、相続後に関しては、一般的な手続きにいくつかの手順が加わります。

手順1:相続登記(名義変更)を行う
手順2:実家を片付ける(遺品整理)
手順3:査定を依頼
手順4:訪問査定を受ける
手順5:仲介業者と媒介契約を結ぶ
手順6:販売活動を始める
手順7:売買契約を結ぶ
手順8:引き渡し

上記の手順は「仲介」によって売却するケースですが、不動産会社が直接物件を購入する「買取」であれば、手順を少なく短期間で売却できます。ただし、買取では仲介と比較して売却価格が低めに設定される傾向にあるので、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで自分に合った方法を選択しましょう。

査定を依頼した後は、通常の不動産売却の手順と変わりませんが、相続後ならではの準備ポイントとして、名義変更、遺品整理があります。この2つについて、次で詳しく説明します。

実家売却のポイント1:相続登記(名義変更)を行う

実家を相続した場合の名義変更手続きを「相続登記」といいます。不動産の売却は、基本的に所有者本人のみが行うことが可能です。そのため、相続した不動産を売却する場合、相続登記を完了させて相続人の所有となることが必要です。
相続登記は今まで任意とされていましたが、2024年4月以降、義務化される予定です。義務化後は「相続が開始して所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記しなければならず、もし正当な理由がないにもかかわらず申請しなかった場合、10万円以下の過料の対象となります。

つまり、今後は売却の有無にかかわらず、不動産を相続する方は、売却する、しないに関わらず必ず相続登記をしなければなりません。

実家売却のポイント2:実家を片付ける(遺品整理)

相続後、売却するにあたっては故人の所有物を整理する「遺品整理」が必要になります。実家に遺品が多数残されている状態では売却が難しく、相続税がかかるものが含まれている可能性もあるため、速やかに実施するようにしましょう。
遺品整理は、自分自身でもできますが、遺品整理業者に依頼することで対応してもらえます。費用はかかりますが、遺品整理を速やかに行えるので、自分だけでは整理が困難な場合は依頼しても良いでしょう。遺品整理後の、不用品の処分については売却を依頼した不動産会社が担ってくれる可能性もあるので、担当者に聞いてみると良いでしょう。

専門家を上手に活用して、自分に合ったタイミング・方法を考えましょう

相続を伴う不動産の売却は、決めなければならないことや複雑な手続きが多いだけでなく、その後の資金計画にも大きな影響を与えかねません。
実家を売却する場合は、相続前と後でかかる税金や使える特例が異なるので、事前に自身のケースでは税金がいくらかかり、どの特例を活用できるのかを把握しておきましょう。計画的に特例や制度などを活用することで、負担を軽減できることがあります。

相続や不動産の売却は、大きなお金が動くうえ制度も複雑です。親やご自身だけでは判断が難しい場合は、専門家や業者を上手に活用して適切なタイミング・方法を見極めましょう。

中田敏之

監修者

中田敏之
不動産鑑定士/宅地建物取引士

三菱電機情報ネットワーク株式会社(現在の三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社)でエンジニアとして勤務し、その後一般財団法人日本不動産研究所で不動産鑑定・研究の職務に従事。その後、千葉市で株式会社中田不動産鑑定を開業し、代表取締役に就任。主に首都圏を中心に不動産鑑定・研究業務に従事しています。

会社ホームページ:https://nakata-kantei.net/

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