地震に備えた家具の転倒・落下・移動対策を紹介

2025.06.09

地震による負傷者のうち、30~50%は家具類の転倒・落下・移動が原因でケガを負っている(※1)とされています。とくに都市部の住宅では、生活空間に多くの家具が配置されているため、適切な対策が求められます。

本記事では、地震の際に家具が固定されていない場合に起きうるリスクや、家具の転倒・落下・移動を防止するための具体的対策について解説します。


地震のとき家具を固定していないとどうなる?

ここでは、家具を固定しないことによる被害例と、揺れの大きさと被害の関係について、それぞれ見ていきましょう。

家具を固定していないことによる被害例

地震時に家具を固定していないと、以下のような深刻な被害が発生する可能性があります。

  • 倒れた家具の下敷きになる
  • 落下してきた家具や家電でケガをする
  • 玄関やドアなど避難経路がふさがれて避難に遅れる
  • ストーブの近くで家具が転倒して火災につながる
  • 倒れた家具が電化製品に接触して火災につながる
  • 家具や家電のガラス部分が割れてケガをする

とくに注意が必要なのが、家屋や家具の転倒による圧死です。国土交通省の資料(※2)によると、1995年の阪神淡路大震災で亡くなった方の約4分の3を占めているのが圧死だといいます。震度7の地域では、全体の6割の部屋で家具が転倒したというデータ(※3)もあります。

また、近年発生した地震でケガを負った方のうち、負傷の原因の約30~50%が家具類の転倒・落下・移動(※1)です。なかには、水槽が転倒し、観賞魚用ヒータが衣類の上に落下したことから火災につながった実例(※4)もあります。

さらに、家具が揺れて本などの可燃物が飛散することで、電気ヒーターに接触して発火するケースも考えられるでしょう。(※5)

このように、家具の転倒・落下・移動による直接的な被害だけでなく、それによって上に置いていた水槽や収納していたものが落ちることによって被害につながるケースもあります。

揺れの大きさと被害の関係

地震の揺れの大きさによって、家具の被害状況は段階的に変化します。下表は、気象庁の震度階級と屋内の状況を基に、具体的なリスクをまとめたものです。

震度階級 屋内の状況
2 電灯などのつり下げ物が、わずかに揺れる。
3 棚にある食器類が音を立てることがある。
4 電灯などのつり下げ物は大きく揺れ、棚にある食器類は音を立てる。座りの悪い置物が、倒れることがある。この段階で、高所に置かれた不安定な物品の転倒リスクが生じる。
5弱 電灯などのつり下げ物は激しく揺れ、棚にある食器類、書棚の本が落ちる。座りの悪い置物の大半が倒れる。固定していない家具が移動したり、不安定なものは倒れることがある。
5強 棚にある食器類や書棚の本で、落ちるものが多くなる。テレビが台から落ちることがある。固定していない家具が倒れることがある。
6弱 固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。ドアが開かなくなることがある。高層階では揺れが増幅され、低層階より2~3倍長く揺れ続けるため、被害が深刻化する。
6強 固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなる。
7 固定していない家具のほとんどが移動したり倒れたりし、飛ぶこともある。阪神・淡路大震災では、この震度でタンスなどの重量家具が2m以上移動した事例が報告されている。

(※6)引用:気象庁震度階級関連解説表|気象庁

上記のとおり、家具類に危険が生じ始めるのは震度4以上です。震度5になると物が落ちたり固定していない家具が倒れるケースもあります。

また、震度7になると家具のほとんどが移動したり倒れたり跳んだりといった危険が出てきます。

どのような揺れの地震にも対応できるよう、対策を実施しておくことが望ましいといえるでしょう。

地震に備えた家具の転倒・落下・移動対策のポイント

自身による家具の転倒・落下・移動を対策するためには、以下のような対策が効果的です。

  • 生活空間の物を減らす
  • レイアウト(配置や向き)を見直す
  • グッズを活用して家具に合わせた固定を行う

適切な対策を講じることで、命を守る安全な空間を作りましょう。

生活空間の物を減らす


(※7)

生活空間にある家具や物を減らすことで、地震時の被害を最小限に抑えることが可能です。クローゼットや納戸に集中収納し、生活空間の物を減らすことで、転倒・落下・移動のリスク自体を大幅に軽減できます。

緊急時にスムーズに避難できる環境を整えましょう。

レイアウト(配置や向き)を見直す

家具の配置や向きを見直すことは、地震時の安全確保における基本的かつ効果的な対策です。東京消防庁(※7)によると、適切なレイアウト変更で転倒リスクを軽減できるとされています。

レイアウトを見直す際のポイントを以下にまとめます。

■避難経路の確保

  • 出入り口付近や廊下には転倒しやすい家具を置かない
  • どうしても置く場合は、転倒しても避難経路を塞がない向きに配置
  • ドアの開閉を妨げないように、家具と壁の間に十分な隙間を確保


(※3)

■就寝場所の安全性向上

  • ベッドや布団の周囲に背の高い家具を配置しない
  • 家具が倒れてきても就寝位置を直撃しない向きに変更
  • 寝室にはできるだけ家具を置かないのが理想的


(※7)

■危険軽減の配置テクニック

  • 背の高い家具は壁に平行ではなく斜めに配置(転倒時の影響範囲を最小化)
  • テレビ台などの低い家具は避難経路から離して配置
  • ガラス製品や重い物は下段に収納(重心を下げて転倒防止)

グッズを活用して家具に合わせた固定を行う

グッズを活用して家具を固定することも効果的です。適切な固定器具を使用することで、地震時の家具の転倒リスクを軽減できるという報告もされています。

以下のように、家具や家電にあわせた方法で固定します。

  • 家具類を壁にL型金具でねじ止めをする
  • 家具類と天井のすき間に突っ張り棒を設置する
  • キャスター付き家具はロック機能や下皿などを使い固定する
  • テーブルやイスなどの家具には粘着マットや滑り防止マットを設置する
  • 吊り下げ式照明器具などはチェーンやワイヤーで結ぶ
  • テレビや冷蔵庫はベルトなどを使って固定する
  • 棚の中のモノが飛び出さないよう、扉の開放を防ぐストッパーを付ける
  • 家具の前下部にストッパーを差し込み、壁側に傾斜させる
  • ガラス部分のある家具や家電は飛散防止フィルムを貼る


(※7)

また、以下の転倒防止器具別の効果を参考に、家具類の固定方法を選択しましょう。

■転倒防止器具別の効果

(※7)

上記は、震度6強の揺れを再現した実験で、その効果を測定したものです。転倒防止グッズは適切なものを設置しないと防止機能が働かなくなります。

家具の転倒防止はL型金具で壁に直接固定するのが効果的ですが、難しい場合は補助的に他のグッズを併用して補強することを検討しましょう。

また、設置時には以下のような点に注意しましょう。

  • 固定器具は家具の両端に均等に配置する
  • 壁に固定する場合は下地チェッカーで柱を確認する
  • 積み重ね家具は上下を連結固定する
  • ガラス面には飛散防止フィルムを内側に貼付する

 

まとめ

地震時の家具転倒は、負傷事故の主要因として深刻なリスクをもたらします。家具の転倒・落下・移動防止のポイントをおさえ、適切な対策を講じることで、こうしたリスクを大幅に軽減可能です。

また、地震の備えは家具類の転倒・落下・移動対策だけでなく、ライフラインなどの備えも重要になります。

太陽光発電と蓄電池をあわせて設置すれば、震災などによる停電時にも電気の確保が可能です。

「備えあれば憂いなし」の言葉どおり、日頃からの防災対策が命を守ります。今日からできる対策を始め、万が一に備えましょう。

はるいく

執筆者

はるいく

医療機関→公務員→医療機関という経歴のWebライターです。
公務員での医療災害対策業務に従事した経験を活かして、医療機関では防災対策を担当。
医療機関のリスクマネジメント、ISO9001内部監査員も担当しています。
現在は元公務員×医療従事者×Webライターとして活動中。

(※1)出典元:家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック|東京消防庁
(※2)出典元:第1章 死者を減らすために|国土交通省 近畿地方整備局 震災復興対策連絡会議
(※3)出典元:地震による家具の転倒を防ぐには|総務省消防庁
(※4)出典元:東北地方太平洋沖地震により東京消防庁管内で発生した火災事例|消防防災博物館
(※5)出典元:地震に伴う製品事故に注意! |消費者庁・経済産業省・独立行政法人 製品評価技術基盤機構
(※6)出典元:気象庁震度階級関連解説表|気象庁
(※7)出典元:自宅の家具転対策 | 東京消防庁
(※8)出典元:自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策|東京都防災ホームページ

 

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