災害対策として家庭でできること|自然災害への備えを紹介

2024.08.26

災害対策として、普段からできる備えとしては、どのようなものがあるのでしょうか。

災害は昼夜を問わず突然やってくるため、普段からどのようなことが起きるのかをイメージしておくことが大切です。防災対策として家庭でできることを、以下の2つに分けて解説していきます。ぜひ参考にしてください。

  • 災害発生時に命を守るための対策
  • 被災後の生活のための対策

災害発生時に命を守るための対策

災害が発生したら、まずはその場で命を守る行動を取ることが大切です。緊急時にも適切に動けるよう、普段から以下のような準備をしておきましょう。

  • 身の回りにある災害リスクを理解する
  • 避難場所や避難経路を確認する
  • 防災情報の入手方法を把握する
  • 災害状況を理解できるよう災害の警戒レベルを理解しておく
  • 緊急時の家族との連絡方法を決める
  • 防災訓練に参加する
  • 地域の方とコミュニケーションをとっておく
  • 救急箱を用意し、応急処置の方法を理解しておく
  • 家具の向きや配置を見直す
  • 家具や家電の転倒・落下対策をする

それぞれ解説します。

身の回りにある災害リスクを理解する

災害対策は、自宅のある地域にどのような災害リスクがあるのか、地形や気象の特徴を踏まえて理解するところから始めましょう。下表は、地形の特徴ごとの、起こりやすい災害をまとめたものです。

地形の特徴 起こりやすい災害
沿岸部 津波・高潮
山間部・台地の崖近く 土砂災害
河川沿い 洪水

また、地震は上表の災害と比較しても事前の予想がし難いため、いつどこで発生するか分からないものと捉えて対策しておきましょう。とくに揺れやすさや火災の起きやすさをみておきます。

自治体では、地域の特性を踏まえて災害ごとのリスクを地図にしたハザードマップ(防災マップ)を作成しており、ホームページで公開されているものもあります。最新のものを入手しておきましょう。

実際に災害が起きる前に、自分たちの地域がどの程度災害に強い(または弱い)のかを知っておくことで次の対策を適切に行うことができます。地震や水害など災害ごとにチェックしておきましょう。

避難場所や避難経路を確認する

身の回りの災害リスクについてチェックしたら、災害が起きたときの安全確保の方法を地図上で確かめます。

どの場所が安全か、避難時にどの道を通るのがよいか、災害の種類ごとに想定しておきましょう。

なお、避難場所や避難経路もハザードマップで確認できます。また、災害ガイドラインなどを活用し、避難行動の手順や注意点を整理しておくと、いざというとき冷静に行動できます。

避難場所と避難経路を確認したら、実際に地図を持って歩いてみるのがおすすめです。道幅や倒壊の危険性、アンダーパスなど浸水の危険性、水路や側溝など夜間に道との境目が見えにくい場所など、危険性の高い場所をチェックしておきましょう。

ブロック塀や大きな看板、自動販売機、工事の土で詰まった側溝など、地図だけではわからない危険箇所もあるため、実際に歩いて確かめておき、我が家の防災マップを作っておくと安心です。

防災情報の入手方法を把握する

災害が発生すると、被災地内では状況の全容がつかめるまでに時間を要します。SNSで個人が発する情報はパニックによる誤情報やデマなども多いため、災害が起きたらすぐに正しい情報を入手できるよう、あらかじめ災害情報の入手先をリストアップしておきましょう。

災害事象については、気象庁で、気象(台風・大雨・竜巻・土砂・浸水・洪水・雪など)、地震、津波、火山、海洋の情報を発表しています。また、国土交通省では防災ポータルを立ち上げて日頃から確認したい情報やいざというときに見るべき情報をまとめています。

そのほかにも、防災アプリ、テレビのデータ放送、ラジオ、防災行政無線などを用意し、公的機関から発信される情報をすぐに入手できるようにしておきましょう。

停電や通信障害、アクセス過多によるサイトダウンなどの事態も考えられるため、情報の入手先は複数用意し、通信機器と充電とあわせて準備しておきましょう。

災害の警戒レベルを理解しておく

防災情報から状況を正しく把握し、自らの判断でタイミングよく避難行動に移ることができるよう、災害の「警戒レベル」について理解しておきましょう。

警戒レベルとは、防災気象情報をもとに発表される5段階のレベル表示です。防災情報を直感的に理解して安全確保の行動を各自がとれるよう、段階ごとに統一した色分けがなされています。警戒レベルと色、取るべき行動は以下のように設定されています。

警戒レベル(色) 取るべき行動
警戒レベル1(白) 災害への心構えを高める
警戒レベル2(黄) 自らの避難行動を確認
警戒レベル3(赤) 「高齢者等避難」危険な場所から高齢者等は避難を開始
警戒レベル4(紫) 「避難指示」危険な場所から全員避難
警戒レベル5(黒) 「緊急安全確保」生命の危険があり、直ちに安全確保

赤(高齢者など避難に時間のかかる人は避難)と紫(全員が避難)の色はとくに重要です。ニュースなどでも色を統一して警戒を呼びかけています。観察して自分の家族の状況に合ったタイミングで避難しましょう。

緊急時の家族との連絡方法を決める

いざというとき、どこへ集合するのか、どうやって連絡をとりあうのかを、家族と話し合って決めておきましょう。

大規模な災害時になると、災害対応に必要な情報通信網を確保するため、通信規制がかかる可能性があります。とくに、電話回線を使った通話は大きく制限される可能性があります。そのほかの通信手段についても普段通り使えるとは限りません。あらかじめ、どの手段で連絡をとりあうのか、複数の手段を優先順位もつけて決めておきましょう。

たとえば通信規制がかかった場合、互いの消息を確認できるものに「災害用伝言サービス」があります。固定電話や携帯電話の各社により大規模な災害が発生したときに開設され、無料で利用できます。また、実際に登録して伝言の練習ができる体験期間もあります。

防災訓練に参加する

地域で行う防災訓練に参加し、災害が発生したとき地域がどのような動きをするのかを確認しておきましょう。

防災訓練は、災害発生時の周囲の状況変化をイメージしながら自分の役割や行動を確認するものです。対応に課題はないか、備えに不足はないかなどを検証する機会にもなります。

訓練としてよく知られているのは避難訓練や救助・消火訓練です。そのほか、シェイクアウト訓練(地震発生時の安全確保訓練)、安否確認訓練、DIG(災害図上訓練)、HUG(避難所運営訓練)などさまざまな種類があり、ツールも提供されています。

とくに、防災月間などには、自治会や自治体が企画する訓練がたくさんあるでしょう。積極的に参加しておけば、いざというときに迷わず、すばやく行動できるようになります。

地域の方とコミュニケーションをとっておく

大規模な災害になると、建物倒壊や道路被害、浸水などで通行が困難となるうえ、各地で渋滞が発生し、救急車や消防車に頼ることができません。日頃から近所の方とのコミュニケーションをとって、声をかけやすい、助け合いやすい関係を築いておきましょう。

実際、1995年に発生した阪神・淡路大震災の記録では、消防・警察・自衛隊による救助はわずか2割強で、8割近くは自力または近所の人たちで力を合わせて救助や消火活動を行いました。

普段から家族構成や、高齢者などの支援を要する人がいる場合はどんな手助けが必要なのかを知っておけば、避難の際にも役立ちます。

救急箱を用意し、応急処置の方法を理解しておく

災害時には、負傷者や閉じ込め事案などが一度に多発します。とくに、火災が発生した場合、救急活動は消防を優先するため、個人の救急要請には応じられなくなる可能性が高いでしょう。

病院に行こうとしても道路が寸断されて車が出せない、病院自体が被災し特別な対応で一般外来は機能していないなどの状況も考えられます。さらに、物資の輸送も寸断された場合、包帯やガーゼ、三角巾など、応急手当や救命救急に必要な道具が入手困難になる可能性もあります。

そのため、軽微な症状であれば自分自身で対処できるよう、災害時にすぐ使えるよう救急箱を用意しておき、あらかじめ処置方法を確認しておきましょう。

また、救急箱を持ち出せない状況でもある程度の対応ができるよう、身の回りのものによる応急手当の方法も知っておきたいところです。

家具の向きや配置を見直す

家具の向きや配置を見直し、大きな地震が落ちても倒壊したり転倒したりしないよう対策することで、命を落とす確率を大きく減らせます。

阪神・淡路大震災の例では、死者のうち4分の3以上が圧死でした。倒壊した家材や家具に挟まれ、救助が間に合わずに亡くなったのです。また、火災が発生した際、倒れた家具によって避難経路を塞がれ、逃げられずに焼死した人も1割近くにのぼりました。

家屋の耐震補強を行うことはもちろん、ベッドや布団の近くに背の高い家具を置かず距離を取る、ドア付近の家具が倒れてもふさがない向きにするなど、向きや配置を見直しておきましょう。

家具や家電の転倒・落下対策をする

家具の配置や向きを見直したあとは、重い家具や家電が転倒したり、中身が飛び出したりしないよう、対策を行いましょう。ガラスが割れることを想定した飛散防止対策も重要です。下表は、家具ごとの具体的な対策例をまとめたものです。

家具の種類 対策
タンス・棚 ・柱や壁にL字金具やポール式器具、ベルト式器具などで固定する
・収納物が飛び出さないよう解放防止器具を取り付ける
テレビ ・粘着マットを敷く
・裏側をワイヤーなどで壁やテレビ台に固定する
冷蔵庫 ・冷蔵庫の天板と天井の間に突っ張り棒を設置する
・キャスターを固定し、冷蔵庫と壁をベルト式器具などで固定する
窓ガラス ・ガラス面に飛散防止フィルムを貼る
・ワイヤー入りなどの強化ガラスに張り替える

震度6弱以上の揺れから、死亡者・負傷者がふえるといわれています。実際に、食器棚の転倒や扉が開いたことで食器類がこなごなに割れて床に散乱し通れなくなった例や、上置き家具が落下して負傷した例、冷蔵庫や大型テレビ、ピアノなどの重量物が真横に飛んできた例などの被害が報告されています。

大地震ではすべてのものが倒れると考えて家中を見直し、倒れた場合にどうなるかをイメージして対策をとりましょう。

被災後の生活のための対策

大規模な災害が発生すると、被災後の生活が長期間にわたって続く可能性があります。物流やライフラインが1週間以上停止することも想定し、以下のような対策を行いましょう。

  • 備蓄・非常用品を用意する
  • 停電時でも使える電源を確保する

それぞれ見ていきましょう。

備蓄・非常用品を用意する

災害時には、道路が被害を受けて通行規制がかかり、物流も止まるおそれがあります。

被災生活を無事に送るための備蓄品を、できれば1週間分、少なくとも3日分を用意しておきましょう。

災害用の準備品には、避難の際に緊急的に持ち出すものと、当面の生活のために自宅に確保するものに分けられます。具体的な備蓄品には、水や食料、排泄や衛生管理に必要なもの、衣類や体温調整のできるもの、通信や熱源・照明を確保するものなどがあります。

年齢や性別、ペットの有無など家族の状態によって内容や必要量が異なるため、ご家族と検討して準備を進めましょう。

すぐに持ち出せるものは家族ごとに個別の袋に入れてすぐに持ち出せるようにします。そのほかの備蓄も複数箇所に分散保管すると安心です。長期保管するため、使用期限が切れていないかを定期的に確認しましょう。

停電時でも使える電源を確保する

災害後には停電になるケースが多いため、停電しても使える電源を確保することが重要です。

これまでの大規模災害の経験から、ライフラインの復旧はどの企業も、優先度の高い対応として設定しています。それでもなお、復電までに長い期間が必要となる可能性は否定できません。

たとえば、2019年に発生した台風15号では東京電力管内だけでも最大で約93万戸が停電し、送電の鉄塔や電柱が倒壊したため復旧に時間がかかり、長い地域では復電までに約2週間を要しました。残暑が続くなかの停電で、熱中症になり死亡者が出るなどの被害も発生しました。(※参考資料「令和元年に発生した災害の概要と対応|経済産業省」「令和元年台風 15 号(第 128 報)について|千葉県防災危機管理部」参照)

停電時でも自宅の機器を使える電源を確保することは、命を守るうえでも大切です。一時的であれば充電器や乾電池が有効ですが、エアコンなどの大型家電の電源や長期間の電力確保は備蓄では対応しきれません。このような場合に備えて、自宅で発電する仕組みを備えておくのがおすすめです。

たとえば、ソーラー発電であれば、日照だけで電気をつくって利用できるため、灯油やガソリンなどを必要とする発電機より効率的です。蓄電システムを並行して導入すると昼間に蓄えた電気を夜間に使用することもできます。

こうした発電システムは、普段から利用することで災害時にもトラブルなく切り替えることができます。日常生活の消費電力のチェックにもなるため、インフラ確保の重要対策として導入すると良いでしょう。

災害対策の備えはできることから準備していこう

いつ起こるか分からない災害に対しては、普段の備えが重要です。この記事ではここまで、災害発生時に命を守るための対策と、被災後の生活のための対策の2つに分け、行なっておくべき備えを紹介しました。
とくに、被災生活が長期に渡る場合は、さまざまな機器を稼働させるのに不可欠な電源の確保が重要です。燃料を必要としない太陽光発電と蓄電池の導入で、酷暑酷寒の被災でも生命を維持することのできる環境を整えておくことをおすすめします。

・参考資料:
ハザードマップポータルサイト
避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)
できることから始めよう!防災対策 第4回‐内閣府防災情報のページ
令和元年に発生した災害の概要と対応|経済産業省
令和元年台風 15 号(第 128 報)について|千葉県防災危機管理部

南部 優子

執筆者

南部 優子

防災士。2008年より、研究機関と共同で、内閣府をはじめとする国や自治体のほか、インフラ企業などを対象に、防災に関する調査分析、防災計画・事業継続計画(BCP)の策定、各種マニュアル作成、防災訓練・研修の企画運営、講師、ファシリテーターを歴任。
現在は、フリーの防災ライター&ファシリテーターとして防災力を養うための人材育成に力を入れ、地域住民を対象とした講座、研修、ワークショップも多数実施しています。

ホームページ:https://facil.shishinsha.jp/

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