災害に備えて備蓄しよう!備蓄品リストや準備する際のポイントを解説

2024.08.26

災害大国とも呼ばれる日本では、毎年のように大きな自然災害に見舞われます。地震や風水害により、ライフラインが寸断されると、突然これまでの生活が続けられなくなります。

このような災害に対し、私たちにできる重要な備えの一つが「備蓄」です。ここでは、備蓄の必要性と目安、具体的なリストと準備のポイントを解説します。

災害に備えた備蓄の重要性

災害対策として備蓄が有効な理由としては、以下の3点が挙げられます。

  • ライフラインが再開するまでに時間がかかるため
  • 食料を含めた物資の調達が難しくなるため
  • 災害支援物資の調達に時間がかかるため

それぞれ見ていきましょう。

ライフラインが再開するまでに時間がかかるため

災害によって電気、ガス、水道などのライフラインが停止してしまうと復旧までに時間を要するため、その期間の水や生活用品を確保しておくことが重要です。

近年の災害の場合、電気では数日から1週間、水道・ガスといった配管を伴うものは1週間から数か月といった長期の停止が起きています。さらに現在では、複数のライフラインが関連しあう場合も多くみられます。停電による通信機器の停波やポンプ停止での断水など、下水菅や建物に被害がない場合でもライフラインが機能しなくなることがあります。

食料を含めた物資の調達が難しくなるため

大規模災害が発生すると、ライフラインだけでなく、道路や橋梁、鉄道といった交通機関も被害を受け、物流が止まります。数日間にわたって物資を調達できない状況を想定して、十分な備蓄をしておきましょう。

被災地のスーパーマーケットやコンビニエンスストアでは、倒壊した棚の片付けやスタッフの確保を行って数日後に営業を再開させたものの、食料や生活用品があっという間に売り切れ、その後の物資供給が途絶えてふたたび休業に追い込まれるケースや、停電や断水で衛生が確保できずに販売を断念したケースなどが多くみられます。

さらに、被害が大きな被災地へのルートは、救助救急や応急復旧など、緊急対応を行う災害従事車両を優先させる通行規制が行われる可能性もあります。このため、一般の商業流通による在庫補充には時間がかかってしまいます。

災害支援物資の調達に時間がかかるため

大規模災害が発生した場合、国では被災地からの具体的な要請を待たずに支援するプッシュ型の物資支援を計画しています。しかし、支援物資の調達には日数を要するため、それまでの備蓄を確保しておかなければなりません。

食料、毛布、乳児用ミルク、乳幼児用おむつ、大人用おむつ、簡易トイレ、トイレットペーパー、生理用品の8品目を基本に、避難所の環境整備に必要な物資などを緊急輸送する仕組みを開発しています。それでも、道路の応急復旧に時間がかかるなどの理由から、すぐに届くわけではないのです。

また、避難施設には避難者全員が数日過ごせる物資が備蓄されているわけではなく、外部から支援を受け入れる自治体の職員自身も被災しているため、物資の受取りや荷捌きを行える体制がとれずに支援物資が中継地で滞り、避難所まで行き届かないケースも多くみられます。

避難所はスペースも足りず、支援には限界があります。このため近年は、安全を確保したうえで、自宅に残り避難生活を送る「在宅避難」を推奨する自治体も多くなっています。

災害に備えるべき備蓄リスト

ここでは、災害時に備蓄しておく物品の具体例を、急な避難の際に持ち出すものと、在宅避難に備えたものとに分けて紹介します。国は、過去の災害の経験を踏まえ、少なくとも3日分、できれば1週間分、各自が必要とする物資を備蓄するよう推奨しています。

なお、国や各自治体の救援物資対策は最低限の一般向けであることが多く、高齢者や乳幼児、アレルギーといった個人の特性に応じた生活物資の確保はより難しくなります。自分たちに必要なものをリストアップしておきましょう。

非常時の持ち出し用

避難の際に緊急的に持ち出すものは、生命を守り当面の生命をつなぐものを中心に、最低限の備蓄を揃えます。赤ちゃん用品、持病の薬やメガネなど、個別に重要なものも忘れずに揃えておきましょう。

<持ち出し用の備蓄例>

分類 品目
避難時の安全確保 ・ヘルメット、防災ずきん、軍手、毛布、雨具
・歩きやすいスニーカー
・懐中電灯(予備の電池)
・携帯ラジオ(予備の電池)
・救急用品(ばんそうこう、消毒薬、体温計など)
食料・水 ・飲料水(ペットボトル)
・非常食(缶詰、栄養補助食品など)
貴重品 ・貴重品(通帳、権利証書のコピー)、現金
・運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど
・健康保険証、診察券、お薬手帳など
生活用品 ・携帯トイレ
・タオル、着替え、歯磨きセット、洗面用具
・マスク、消毒液、ティッシュペーパー、ウエットティッシュ
・携帯電話の充電器
・ナイフ、缶切り、栓抜き
・ライター、マッチ、ろうそく
・ポリ袋、レジ袋
・筆記用具
高齢者がいる場合 ・大人用紙おむつ・紙パンツ、吸水パッド
・介護食、清拭用洗浄剤、補聴器、入れ歯(洗浄セット)
・杖、歩行補助具、老眼鏡、持病の薬、おくすり手帳
女性用品 ・生理用品、おりものシート、サニタリーショーツ、下着
・防犯ブザー、中身の見えないゴミ袋
子どもがいる場合 ・ミルク、使い捨て哺乳瓶、離乳食、携帯用カトラリー
・こども用の衣類、靴、紙おむつ、おしりふき
・ネックライト、だっこひも

持ち歩ける重さは、男性で15kg、女性で10kg程度とされています。子どもや要介護者などを連れての避難になる場合もあり、極端に重い荷物にすると持っていくことができなくなるため注意が必要です。

家族全員が一緒に行動できるとは限りません。1人分ずつ袋に入れ、個別に使えるようにします。また、出入口の近くに置くなど、確実に持ち出し可能な場所に保管しましょう。

備蓄用

続いて、在宅避難に備えて自宅に備蓄する用品について、以下の4つの分野に分けて紹介します。

  • 飲料水・食料品
  • 生活用品
  • 衛生用品
  • 救急用品

これらの用品は、納戸や車庫、自家用車のトランクなどに揃えておきましょう。

飲料水・食料品

食料品では、缶詰やレトルト食品など、日持ちするものを用意しましょう。お湯や水で戻すインスタント食品は軽くて保存しやすいのが特長ですが、ライフラインが停止するとお湯を沸かすのもたいへんになるため、複数のタイプの食品を揃えておきます。

また、被災生活ではストレスもたまりがちです。チョコレートや飴などの甘味が気分を和らげてくれた事例もあるため、さまざまな食味のものを揃えておきましょう。

<持ち出し用の備蓄例>

分類 品目
備蓄用飲料水・食料品 ・飲料水(1人1 日 3リットルが目安)
・食料(米、即席麺、缶詰、レトルト食品)
・食品(調味料、スープ、みそ汁など)
・食品(チョコレート、あめなど)

生活用品

衣類や寝具、食事道具などの日用品は、各自の生活スタイルにあわせて必要なものを揃えます。ライフラインが停止することを想定し、電気製品や暖房器具、カセットコンロなどは、乾電池やガスボンベなどの充填品も忘れず用意しておきましょう。

<持ち出し用の備蓄例>

分類 品目
備蓄用生活用品 ・照明器具、暖房器具、調理器具(ランタン、ストーブ、カセットコンロなど)、カセットボンベ
・充電器、乾電池、蓄電器(バッテリー)
・毛布、タオルケット、寝袋
・鍋、やかん、割り箸、紙皿、紙コップ
・ラップ、アルミホイル
・安全靴、ブルーシート、新聞紙、使い捨てカイロ
・予備のめがね、工具類(ロープ、スコップなど)

衛生用品

避難生活で盲点となりやすいのがトイレ問題です。配管が被災するなどで長期にわたりトイレが使えなくなる場合があり、排泄の回数を減らそうと水分を控えて体調を崩すケースがあとを絶ちません。そのほかにも、感染対策から消毒や清拭の消耗品も多めに用意しておきたいところです。

<持ち出し用の備蓄例>

分類 品目
備蓄用衛生用品 ・簡易トイレ、携帯トイレ、汚物処理剤、汚物処理袋
・洗面用具、歯みがきセット、消毒液、ドライシャンプー
・マスク、ウエットティッシュ、トイレットペーパー
・生理用品

救急用品

災害発生直後は小さなケガを気にしている余裕がないほど切迫していることが多いものですが、災害時は衛生環境が悪化するため、放置すると化膿したり破傷風など重篤な症状を招いたりする恐れがあります。自力で消毒や応急手当を行うための救急用品を揃えましょう。

<持ち出し用の備蓄例>

分類 品目
備蓄用救急用品 ・救急セット(絆創膏、包帯、消毒液など)
・消毒用エタノール、綿花
・三角巾
・痛み止め、目薬、常備薬

災害に備えて備蓄を準備する際のポイント

国や自治体が用意する災害用備蓄は生命を最低限つなぐための基本でしかありません。このため、自分たちの事情にあった内容と量を自力で確保する必要があります。一方で、いつ起きるかわからない災害に対して大量の備蓄を長期保管することは現実的に難しく、家庭での備蓄があまり進まない要因の一つにもなっています。

ここでは、日常生活に負担の少ない災害備蓄のコツをみていきましょう。

家族構成やペットに合わせて用意する

家庭内の備蓄は、家族の年齢や性別、既往症の有無、人数、嗜好、ペットの有無など生活状況によって必要となるものが異なります。

早期調達ができなかった場合、生活維持が困難となる家族が出るかもしれません。日常生活で1週間に必要とする物品を洗い出し、必要な量を揃えておきましょう。特殊な食品で調達に時間がかかるものは、少なくとも2週間分を用意しておくと安心です。

<備蓄例>

高齢者の場合 ・柔らかいもの
・塩分の少ないもの
・効率的に栄養をとれるもの(栄養補助食品など)
・食べ慣れた食品(レトルト食品)
要配慮者の場合 ・嚥下機能が弱い場合: レトルトの介護食品
・慢性疾患の場合:疾患内容に応じた食品
・食物アレルギーの場合:アレルギー対応食品
乳幼児の場合 ・粉ミルク、キューブタイプや液体ミルク、使い捨ての哺乳瓶、紙コップや使い捨てのスプーン
・調乳用の飲用水(多めに)
・ビン詰やレトルトの離乳食を少なくとも2週間分
・お気に入りのおもちゃ、安心できる毛布、音楽など
ペットがいる場合 ・ペットフード、おやつ、フード入れ、水入れ
・トイレシーツ、ペット用ウェットティッシュ、ゴミ袋
・リード、クレート、お気に入りのおもちゃ
・予防接種証明書、ペット保険証、マイクロチップの個体識別証など

栄養バランスを考える

被災生活は長期にわたる可能性があるため、体調維持を考えて備蓄します。パックご飯やカップ麺といった炭水化物に偏ると、便秘や口内炎、体のだるさなど不調を引き起こしやすくなります。果物・野菜、卵や豆類、乳製品など、タンパク質やビタミン、食物繊維などの栄養バランスをとりましょう。

また、缶詰は味が濃く、内臓に負担がかかるおそれがあります。薄味のレトルト食品やフリーズドライ素材など、多様な調理形態の食品を活用したいところです。

事前に非常食を食べてみる

非常食とはいえ、口に合わないものを我慢して食べ続けることは困難です。実際に非常用の調理具や食器などを使って試食し、水や熱源の制限がある中でもうまく食事が用意できるか、おいしく味わえるかを家族で確認することをおすすめします。高齢者や乳幼児はとくに、うまく飲み込めるか、嫌がらずに完食できるかなどをチェックしておきましょう。

ローリングストックで日常食品も揃える

災害用の特別な非常食だけでなく、日常で利用している食品の中にも、半年から1年程度の常温保存が可能なレトルト食品などが多く出回っています。

このような日常の食品は、使った分だけ買い足していくローリングストックによる備蓄が有効です。ふだんから生活に欠かせない食品や日用品を多めにストックしておき、使った分を補充する形で常に一定の量を備蓄しておきます。

ローリングストックによる備蓄ならば、保存期限を気にすることなく常に新しいものが確保できるうえ、普段の生活の延長にあるため、備蓄への負担も少なくてすみます。さらに、災害時にいつもの食べ慣れたものを口にすることができ、安心感にもつながるでしょう。

保管方法を工夫する

せっかくの備蓄も、いざというときに使うことができなければ意味がありません。保管する場所や保管方法にも気をつけたいところです。

たとえば、避難時に持ち出すものはリュックなど背負うタイプの袋に入れ、ヘルメットや靴とセットにして、玄関など必ず通る場所に置くと使いやすくなります。また、就寝時など暗闇で災害が起きた場合を想定し、懐中電灯や歩きやすい靴などは枕元にあると安心です。

ローリングストックを意識した備蓄の場合は、普段から取り出しやすい場所に、古いものから順番に使えるように並べるなどの工夫があると維持しやすくなります。
また、地震の場合は、激しい揺れによる壁の崩壊や家具の転倒など、備蓄が取り出せなくなる状況も考えられます。備蓄品は1箇所に固めず、安全な場所や車の中など、数か所に分散させておくことも重要です。

<保管の工夫例>

保管場所 ・直射日光が当たらず温度・湿度の変化が少ない場所で管理(パントリーなど)
・使い勝手を優先した分散配置にする
保管方法 ・取り出しやすいケースに入れる
・古いものほど手前に置くなど、賞味期限がわかりやすい並べ方にする
・転倒防止や落下防止を行う(重いものは下に置くなど)

定期的に見直しや更新をする

備蓄は定期的な見直しが必要です。長期保存の備蓄だと安心していると、いつのまにか使用期限が来ていて、いざというときに使えないことがあります。

備えっぱなしにならないためにはローリングストックが有効ですが、携帯トイレや防災用機器など日常で使う機会の少ない備蓄品は、日を決めて定期的に点検することをおすすめします。

防災の意識をもちやすい防災の日(9月1日)や、大きな災害が発生した日(阪神・淡路大震災の1月17日、東日本大震災の3月11日など)は、関連ニュースも多くなり、防災訓練などのイベントも開催されるため、備蓄品の見直しや更新のタイミングとして活用するとよいでしょう。

<点検項目例>

備蓄内容・量 ・現在の生活スタイルに合った内容となっているか
・家族に必要な量が揃っているか
使用期限 ・賞味期限、使用期限は十分確保されているか
・保管状態は良好か
動作 ・正常に動作するか
・充電を十分に行えるか

保管内容や保管場所を共有する

災害用の備蓄品については、何が・どこに・どの程度備えられているかを、リストなどに整理し、家族全員で共有しておきましょう。

災害はいつ起きるかわかりません。とくに地震の場合は、家族全員が家にいるとは限らないため、家族全員が備蓄品を使って生き延びることができるよう備えてください。

備蓄品と一緒に、家族の連絡先や落ち合う場所などのメモも共有しておきましょう。近年はスマートフォンの充電が切れると電話番号もわからなくなる場合が多いため、紙に書いた連絡先を保管しておくことも重要です。

災害に備えて備蓄を用意しよう

現在の日本は、南海トラフ地震や首都直下地震など、大規模で広域の地震発生が懸念されるうえ、気候変動による気象災害の激甚化傾向など、風水害でも長期的な被災生活を意識する必要性が高まっています。

とくに近年は、電気がないと稼働しない機器が増えています。充電器は停電後には充電できませんし、長期の使用に耐える電力を乾電池だけでまかなうことは困難です。手回し充電器などもありますが、体力を消耗する割に生成される電力が少なく、長期的な使用には向きません。

ここで強い味方となるのが太陽光発電です。太陽光発電は、商用電力の使用量を抑えるために普段から有効ですが、長期的に停電しても自力で電力を調達でき、災害時にも安定した生活の維持が容易になります。

太陽光発電は、夜間の電力使用を考えて日中の発電分を溜めておく蓄電池とセットで導入するとより効果的です。東京都の場合、太陽光発電と蓄電池の各導入に対して補助制度が用意されています。そのほかにも、国や自治体が同様の制度を設けている可能性があります。

東京ガスや提携する施工会社では、より効果的な導入で安心できる防災対策と快適な日常生活を送るためのノウハウや豊富な施工例を基にしたご提案が可能です。お気軽にご相談ください。

・参考資料:
災害の「備え」チェックリスト|首相官邸

南部 優子

執筆者

南部 優子

防災士。2008年より、研究機関と共同で、内閣府をはじめとする国や自治体のほか、インフラ企業などを対象に、防災に関する調査分析、防災計画・事業継続計画(BCP)の策定、各種マニュアル作成、防災訓練・研修の企画運営、講師、ファシリテーターを歴任。
現在は、フリーの防災ライター&ファシリテーターとして防災力を養うための人材育成に力を入れ、地域住民を対象とした講座、研修、ワークショップも多数実施しています。

ホームページ:https://facil.shishinsha.jp/

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