在宅避難のメリット・デメリットは?判断基準や備えておくべきことも解説

2024.08.26

在宅避難とは、災害時に自宅で避難生活を送ることです。

住み慣れた環境で避難生活を送れることがメリットですが、在宅避難が危険なケースもあることを理解しておかなければなりません。

ここでは、在宅避難が避難所への避難とどのように異なるのかを整理し、在宅避難を行う際の判断基準と、必要な準備について解説します。

在宅避難とは

在宅避難とは、災害が発生して被災した際に、避難所ではなく自宅で避難生活を送ることです。

避難所不足や、生活環境の変化による体調の変化などの懸念により、自宅の安全性の確保を前提として、自治体によっては在宅避難を推奨しています。

避難所との違いから見る在宅避難のメリット・デメリット

続いて、在宅避難のメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。

在宅避難のメリット

在宅避難の最大のメリットは、住み慣れた環境で被災後の生活を送ることができるところにあります。

警戒レベルが高いうちは避難することは重要ですが、警戒レベル解除後の長期にわたる避難生活を考えると、避難所は必ずしも過ごしやすい環境ではありません。体育館など大部屋での共同生活となるため、プライバシーが確保されにくかったり、環境の変化や周囲の人の生活音、生活リズムの違いなどによりストレスを感じる可能性があります。

また、避難所ではペットを受け入れていないことが珍しくありません。受け入れている場合も、屋外スペースへ分離されてケージから出せない状態となることがほとんどです。

この点、もし自宅が倒壊等の危険がなく安全性を確保できるのであれば、日常と変わらない環境で過ごすことのできる在宅避難は快適で安心でしょう。普段と同じベッドで寝ることができ、着替えも周りの目を気にすることなく行うことができます。音や光、匂いに敏感な人やアレルギーを持つ人も自分が落ち着く状態を保つことができるでしょう。ペットと共に過ごすことができ、ペットの不安を和らげることができます。

※在宅避難は、自宅の安全性や備えを十分に確保した場合の選択肢であることに注意してください。具体的な判断基準については、「在宅避難か避難所へ向かうかの判断基準」で紹介しています。

在宅避難のデメリット

在宅避難のデメリットは、避難所で生活する場合と比べて、食料や飲料水、電源といった、重要な物資の獲得が難しい点です。

大規模な災害の場合、救助や応急復旧が最優先となり、通常の物流が回復するまでには時間がかかります。その際、食料や飲料水は支援物資に頼ることになりますが、これらの物資は避難所と違い、在宅避難の場合は支援拠点に取りに行く必要があります。

在宅避難では情報を得ることも難しい場合があります。被災者支援情報は毎日変化するため、地域ごとの細かな情報や連絡事項は避難所の掲示板に貼られることが多く、ホームページの更新は後回しになりがちです。このため、在宅避難をしていても、情報や物資の支援は避難所まで出向いて自力で確認することになります。

また、避難所へは近隣の人たちが集まり助け合って生活しているため、在宅避難よりコミュニケーションの機会は多くなります。在宅避難は身の安全を確保できる建物であることが大前提で、地震の場合は何度も大きな揺れが続くことも多く、一人暮らしの高齢者などでは不安が高まりストレスになることもあるでしょう。

在宅避難か避難所へ向かうかの判断基準

災害発生時、在宅避難にするべきか、避難所に向かうべきかで悩む人は少なくないでしょう。ここでは、判断する際の基準として、以下の2つの項目を紹介します。

  • 自宅の安全性をチェック
  • 自宅での生活が可能かをチェック

それぞれ見ていきましょう。

判断基準1:自宅の安全性をチェック

はじめに、自宅が災害にどの程度耐えられるのかを確認します。

居住地の災害のリスクや防災情報が掲載されているハザードマップを入手し、自宅周辺がどのような災害でどの程度の被害を受けると予測されているかを確かめましょう。ハザードマップは自治体が作成・配布しており、ホームページで公表されている場合もあります。

ハザードマップには、以下のような災害が起きやすい場所や予想される規模が、地図上に記載されており、災害リスクの高さに応じて色分けされています。

  • 水災害:大雨や高潮により浸水しやすい場所
  • 土砂災害:土石流、地すべり、がけ崩れが起きやすい場所
  • 地震:揺れによる建物倒壊、火災、液状化が起こりやすい場所
  • 津波:浸水範囲や津波の高さ、到達時間

自宅周辺の災害リスクが高い場合や、耐震や浸水対策などが不十分で自宅の安全性が確保できない場合、在宅避難は危険です。必ず安全なエリアにある避難所への避難を決めましょう。避難所までの移動ルートの安全性も確認しておくのを忘れないようにしてください。

なお、ハザードマップの災害リスクが低い場所であっても、必ずしも安全であるとは限らない点に注意してください。自宅の土地が周りと比べて低い位置にないか、崖のそばにある自宅でないかなど、実際の周辺状況も踏まえて危険性を判断しましょう。この場合は、市区町村が発令する避難情報に応じて避難してください。

また、自宅の想定被害が低い場合でも、実際に災害が発生した際は自宅の安全性をチェックする必要があります。

<チェックポイント>

  • 自宅は無事ですか?(被災建築物応急危険度判定で要注意、危険と判定されていないか?家屋に倒壊などの被害状況は?)
  • 近隣の住宅は無事ですか?(倒壊・火災などで自宅に影響がありませんか?)

被災建築物応急危険度判定とは万一の大震災の際に、被災後すぐに市区町村が被災した建物を調査を行い、その建物が使用できるかどうかを応急的に判定するものです。「危険」「要注意」「調査済」の三種類のステッカーで、建物の出入り口などの見やすい場所に表示されるため、自宅が被災した際に危険に該当した場合は、倒壊の危険性があるため立ち入りも避けたほうがいいでしょう。要注意の場合は、余震などによって危険性が増す可能性があり、立ち入りに注意を要するものです。これらはあくまで応急的な診断であり絶対的なものではありませんが、ご自宅に避難するかの判断材料になるでしょう。

チェックした結果、どちらか一方でも当てはまらない場合は危険性があるため、避難所へ向かいましょう。当てはまる場合は在宅避難の安全性を確保できている状況なので、判断基準2へ進んでください。

判断基準2:自宅での生活が可能かをチェック

安全性の観点から在宅避難が可能と判断した場合は、自宅で被災生活が無理なく行えるかをチェックします。

<チェックポイント>

  • 他者のサポートを受けずに生活が可能ですか?

具体的には、トイレや電気、水道などが使用でき、食料などの必要物資が確保できているかどうかです。災害の規模にもよりますが、復旧活動や救援物資の到着までには3日~1週間はかかるとされています。その間を生き延びることができるライフラインと必要物資の確保が必要です。

また、病気や身体的・精神的な不自由を抱えている方で、家族や知人による協力で問題なく日常生活を送れない場合や、高齢者などの避難に時間を要する方は、早いタイミングで避難所へ避難してください。必要に応じて、ご近所さんへサポートをお願いすることも大事になります。

在宅避難に向けて備えておくべきこと

災害はいつ発生するかわかりません。どんな状況になっても適切な判断で対応できるよう、日頃から備えておきましょう。在宅避難を想定する場合、準備するべき事柄は以下のとおりです。

  • 情報収集
  • 備蓄
  • 電気の確保
  • 災害に備えた家づくり

順番に見ていきましょう。

情報収集

災害発生直後は状況が刻々と変化します。適切に判断して行動するためには、情報収集が欠かせません。

突然の災害発生でも混乱しないよう、どの情報源から何の情報を収集し、誰に対して何の手段でどのような連絡を取るのかを、あらかじめ決めておきましょう

<災害時の行動例>

  1. 安全の確保
  2. 家族の安否の確認
  3. 災害情報や周囲の状況の収集
  4. 避難の可能性の判断
  5. 避難場所(集合場所)、安全なルートの確認
  6. 火災や怪我、救助などの応急対応

また、災害時の連絡手段については、すばやく操作ができるよう、普段の連絡にも使って慣れておくことが重要です。

備蓄

在宅避難を行う家族構成や人数を踏まえ、十分な備蓄を備えておきましょう。

災害が起きると、建物の倒壊や大規模火災、広範囲の浸水、配管被害などが発生し、電力や上下水道、ガスが機能停止します。また、救助救急などの緊急対応を優先するため、通信規制がかかって電話がつながりづらくなります。

さらに、道路も被害を受けるうえ、緊急自動車の通行を優先させるための通行規制もかかる可能性があり、食料や水、生活必需品などの流通も滞ります。

そのため、家族全員が少なくとも3日、できれば1週間は生活できるよう、食料、飲料水、生活用品、衛生用品、救急用品などを揃えておいてください

とくに、排泄や嚥下などに機能障害をもつ高齢者や、病気療養者、既往症やアレルギーの保持者、乳幼児、ペット飼育など、一般の救助物資では対応しきれない事情をもつ人がいる場合は、必要なものを十分に備蓄しておく必要があります。

電源の確保

災害によって停電した場合、電化製品を使用できなくなります。スマートフォンが使えなければ情報収集や安否確認に支障が出てしまいますし、冷蔵庫や冷暖房、照明などが使用できなければ、在宅避難の継続は難しいでしょう。そのため、非常時でも電気を使えるよう備えておく必要があります。

電源の確保手段としては、モバイルバッテリーや充電器、手回し発電機のほか、ガソリンやカセットボンベを使ったポータブル発電機、蓄電池などが挙げられます。用途別に複数を揃えておきましょう。

ただし、充電器の場合は電力の供給が復旧しない限り充電することができず、モバイルバッテリーは一度使い切ったらおしまいになってしまいます。燃料を必要とする発電機も同様で、流通が止まって燃料を調達できなければ、継続した発電が困難になります。

そこで一度検討していただきたいのが、太陽光発電です。太陽光発電なら、日照中は発電することができるため、燃料の心配がありません。また、太陽光発電と蓄電池を組み合わせると夜間や悪天候時でも蓄えた電気を使うことができます。継続的な在宅避難を行う場合は、ぜひ備えておきたいところです。

災害に備えた家づくり

在宅避難を行うには、災害発生時にも安全を確保できる家屋の確保が大前提となります。

新しく家を建てる場合は、ハザードマップや過去の被災の有無などを参考に、災害リスクの少ない土地を選び、揺れや液状化、浸水を防ぐ基礎と建物構造の家屋を建築しましょう。災害に強い壁の配置や間取り、備蓄の収納を考えた設計にすることも重要です。

既存の自宅の場合は、筋交いや屋根の改良など建物の耐震補強や、浸水や暴風対策など家屋の周辺の整備を行ったうえで、家具の固定やガラス飛散防止、火災報知器の設置などの設備の災害対策を行いましょう。

状況に応じて在宅避難も視野に入れておこう

在宅避難は、災害時に避難所へ行かずに自宅で避難生活を送ることです。災害発生で状況が変わった中でも、普段の状態を極力維持できる生活を目指すことにより、災害による体調不良やストレスを軽減させる災害対応の一つです。

ただし、在宅避難を検討する際は、自宅の安全性の確認と備えの確保が重要となります。ハザードマップや目視によって、自宅の場所や、その周辺の災害リスクが低いかを確認しましょう。

自宅の安全性に問題がなければ、生活維持を可能とするため通信などの情報収集方策を整備し、食料や水、生活用品といった備蓄の確保を行います。

なかでも近年の生活になくてはならない電源に関しては、災害時にどの設備を使うのかを明確にしたうえで、長期にわたって使用することができるよう、発電機能を含めた電源確保が重要です。少なくとも3日、できれば1週間分は、自力で調達しておきましょう。

東京ガスや提携する施工会社では、災害時に燃料を必要とせず電源確保が可能な太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムを紹介しており、目的に応じた提案が可能です。ぜひご相談ください。

・参考資料:
ハザードマップポータルサイト

南部 優子

執筆者

南部 優子

防災士。2008年より、研究機関と共同で、内閣府をはじめとする国や自治体のほか、インフラ企業などを対象に、防災に関する調査分析、防災計画・事業継続計画(BCP)の策定、各種マニュアル作成、防災訓練・研修の企画運営、講師、ファシリテーターを歴任。
現在は、フリーの防災ライター&ファシリテーターとして防災力を養うための人材育成に力を入れ、地域住民を対象とした講座、研修、ワークショップも多数実施しています。

ホームページ:https://facil.shishinsha.jp/

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