不動産の相続〜売却までの手順とは?活用すべき特例、注意点も解説

2023.09.11

相続の際に受け継ぐ不動産は、受け継がれる人の「住みたい」という希望と合致し、相続人同士の意思決定がスムーズにいけば大変喜ばしいものです。

しかし、すでに住まいがあるため不動産が不要なケースや、相続人同士での分配のために売却しなければならないケースもあります。

相続にはさまざまな手続きが必要で、制度も複雑です。相続人同士の話し合いや手続きをスムーズに進めるには、不動産相続に必要な手続きをしっかりと理解しておくことが大切です。

この記事では、不動産の相続が生じた際の手続きから、相続した不動産を売却する流れを解説します。

相続手続きの流れ|売却を前提とするときは「遺産分割協議」と「相続登記」がポイントに

相続手続きの流れ|売却を前提とするときは「遺産分割協議」と「相続登記」がポイントに

相続が発生した場合、まずは相続するための手続きが必要です。これらの手続きがきちんと行われていないと後にトラブルにつながる可能性もあるため、しっかりと理解したうえで相続手続きを進めましょう。

以下で、相続に必要な手続きと流れを解説します。

1. 遺言書の有無の確認
被相続人(故人)の遺言書が遺されている場合は、一般的に遺言書の内容に沿って相続が行われるため、まず遺言書の有無を確認します。

2. 相続人の確定(相続人調査)
被相続人の遺言書がない場合、相続人となる人物を確定させます。

3. 相続財産の特定(相続財産調査)
不動産や預貯金、有価証券などのプラスの財産から、住宅ローンや固定資産税の未払い分などのマイナスの財産まで調査します。その結果を相続財産目録に一覧でまとめます。

4. 遺産分割協議
すべての相続人が参加して、誰が、どの財産を相続するか協議します。遺産分割協議で合意した内容は、遺産分割協議書にまとめます。

5. 相続登記
被相続人から不動産を相続する相続人へ名義を変更するために登記手続きを行います。

6. 相続税の申告・納税
被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告を行い、納税する必要があります。

くわしい相続手続きの手順や方法は、こちらをご確認ください。

また、不動産を相続した場合は、その後の取り扱いも重要です。相続した不動産に誰かが住む場合は大きな問題はありません。しかし、誰も住まないので売却する場合や、相続税を支払うために不動産を売却して売却代金を納税資金としたい場合には、相続手続きで「遺産分割協議」と「相続登記」の2つの手続きが重要になります。

それぞれの内容と注意点についてくわしく見ていきましょう。

ポイント1. 遺産分割協議|どの分割方法を選ぶかで売却手順や、かかる税金が異なる


出典:代償分割なら「遺産を平等に分割」できる!基礎知識と注意点を解説|弁護士法人サリュ

相続人が複数いる場合は、遺産をどのように分割するかを協議しなければ相続手続きは進みません。不動産の分割方法は以下の4種類があります。

  • 換価分割
  • 現物分割
  • 代償分割
  • 共有分割

ここでは分割方法ごとの概要や売却方法の違い、かかる税金などについて解説します。

換価分割の場合

換価(かんか)分割とは、不動産などの財産を売却し、現金化してから分割する方法です。たとえば、相続人3人で不動産を相続し、1,500万円で売却した場合は500万円ずつ受け取ります。
換価分割は以下2つのやり方があります。

1.売却代金を受け取る相続人全員の共有名義にして売却する
2.相続人代表者の単独名義にして売却する

2.の単独名義であっても、実質的には相続人全員で売却した扱いになります。そのため、売却によって税金がかかる場合は、自分が取得した金額のみ負担することになります。

現物分割の場合

現物分割とは、不動産などの財産をそのまま分割する方法です。たとえば、「不動産は長男、預貯金と車は長女、株式は次男が相続する」といったケースです。

現物分割は対象財産を1人の相続人が受け継ぐため、手続きが簡単に済みます。不動産を現物分割で相続した名義人は、自己判断で売却が可能です。また、売却によってかかる税金も名義人が1人で負担します。

代償分割の場合

代償分割とは、1人の相続人が不動産など財産を取得し、ほかの相続人に代償金を支払うことで清算する分割方法です。

たとえば、3,000万円の価値のある不動産を3人の相続人で分割するとしましょう。代表者1人が不動産を取得し、残り2人に1,000万円ずつ代償金を支払うことで、3人全員が1,000万円分の財産を取得したことになります。

代償分割では、遺産分割協議で決めた代償金を支払うことで、不動産を相続した名義人が自己判断で売却することができます。売却によってかかる税金も、名義人が1人で負担することになります。

共有分割の場合

共有分割とは、「不動産を長男、長女、次女の3人で3分の1ずつ相続する」のように、財産を複数の相続人で共有取得する方法です。法定相続分で分割する場合に、財産を公平に分けることができます。

1つの不動産を複数人で共有するため、売却する場合は全員の合意が必要です。自分の共有持分だけであれば、自己判断で売却できますが、あまり現実的ではありません。その後売却するにせよ、全員の同意が必要になるというデメリットがあります。

ポイント2.相続登記|登記を完了させないと売却ができない点に注意

相続した不動産を売却したい場合、相続登記を終えている必要があります。不動産の名義が故人のままでは、売主と不動産所有者が一致しないため、売買契約を進められないからです。
不動産登記法の改正により、2024年4月1日以降は相続登記が義務化されます。相続発生および所有権の取得を知ったときから3年以内に手続きを行わないと、10万円以下の過料が当該不動産を相続した人に科される可能性があります。

相続した不動産を売却するには?

相続した不動産を売却するには?

相続した不動産は、相続登記のあとに売却できるようになります。不動産の売却方法には「買取」と「仲介」の2つがあり、自身のニーズに合った売却方法を選択する必要があります。

ここでは、それぞれの特徴を説明します。

買取

買取とは、買取業者(不動産会社)に直接物件を買い取ってもらう方法です。買主を探す必要のある仲介とは異なり、スピーディーに売却を進められる点がポイントです。ただし、買取価格は、仲介による売却の相場よりやや低めに設定されるのが一般的です。
買取の特徴について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

仲介

仲介とは、仲介業者に買主を探してもらう方法です。相場に沿った価格で売却が可能です。

一方で、買主が見つかるかどうかは物件の条件次第でもあり、買取に比べて売却に時間がかかる傾向にあります。また、仲介業者に対して仲介手数料を支払わなくてはなりません。

仲介の特徴について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

相続した不動産を売却する場合は特例の活用も検討しましょう

相続した不動産を売却する場合は特例の活用も検討しましょう

不動産の売却では、売った金額がそのまま手元に入るわけではなく、税金や仲介による売却では手数料などの支出が生じます。少しでも支出を抑えるために、税務上の特例の活用を検討しましょう。

ここでは、相続不動産の売却に活用できる特例を紹介します。

相続税の取得費加算の特例

相続財産の取得費加算の特例とは、相続によって取得した不動産を一定期間内に売却した場合に利用できる特例です。

相続税額のうち一定額を不動産の取得費に加算できるため、譲渡所得が減額され、譲渡所得税の負担が軽くなります。

本特例を利用できるのは、相続税が課税された人のみです。

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除

空き家の数を抑えるため、空き家の譲渡所得の3,000万円を特別控除するという制度です。これは相続によって取得した空き家を一定期間内に売却した場合に利用できます。一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を差し引くことができるため、譲渡所得税の負担が軽減されます。

「昭和56(1981)年5月31日以前に建築された」「区分所有建物登記がされている建物でない」などの要件を満たす空き家が適用対象です。また、先ほど紹介した取得費加算の特例とは併用できません。

なお、相続した不動産に住んでから売却する場合はマイホーム扱いとなり、利用できる特例が変わる可能性があるので注意が必要です。

相続した不動産を売るときは、「期限」と「相談先の選択」が重要に

相続した不動産を売るときは、「期限」と「相談先の選択」が重要に

相続や不動産の売却には大きな労力とお金が動きます。しっかりと計画を立てたうえで動かないと、思わぬ負担が増えることにもつながります。ここでは、相続した不動産の売却を検討するうえで、押さえておくべきポイントを解説します。

3年以内に売却を完了させないと活用できなくなる特例もある

相続した不動産は、3年以内を目安に売却することが大切です。相続不動産の売却で利用できる特例は、適用期限が約3年となっています。

特例 適用期限
相続税の取得費加算の特例 相続開始日の翌日から3年10か月以内
空き家譲渡の3,000万円特別控除 相続開始日の翌日から3年後の年末

相続発生後、おおむね3年を目処に売却を完了させないと特例を活用できず、税負担が増える恐れがあるので注意が必要です。

売却したお金を相続税の支払いに充てるなら相続開始から10ヶ月以内の売却が必要

相続税の申告・納付は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。つまり、相続した不動産を10か月以内に売却できれば、売却代金を相続税の支払いに充てることができます。

その場合は、売却手続きの際に「買取」を検討しても良いでしょう。仲介と比較してもスピーディーな売却ができるため、相続税の支払い期限に間に合わせやすくなります。

そのほかにも相続手続きにはさまざまな期限があります。詳しくは以下の記事で解説しています。

状況に応じて最善の方法を示してくれる不動産会社/専門家に相談しましょう

相続した不動産を売却する場合は、まず、不動産会社に査定依頼をし、売却額の相場を確認します。このときに、複数の不動産会社に査定依頼することも大切なポイントです。査定を依頼した不動産会社の中から、状況に応じて一番良い対応を考えてくれる不動産会社を選びましょう。

また、相続や不動産の売却にはさまざまな手続きが必要です。制度が複雑で、専門知識も求められます。信頼できる不動産会社、専門家に相談すれば、安心して手続きを進められるでしょう。

信頼できる業者や専門家とともに、あなたの最善の方法を見つけましょう

信頼できる業者や専門家とともに、あなたの最善の方法を見つけましょう

相続は被相続人の死亡によって生じ、多くの場合、被相続人は身近な親族です。相続の直後はさまざまな対応に追われるため、体力的にも精神的にもつらいと感じるかもしれません。

しかし、相続手続きの多くは期限があります。とくに、相続した不動産を売却する場合は、相続税の支払いも視野に入れ、できるだけ早く手続きを進めることが大切です。

一人で悩まず、専門家を頼りながら最善の方法を見つけましょう。

富岡 淳

監修者

富岡 淳
司法書士・行政書士

司法書士・行政書士事務所ビスポークオフィス(東京都台東区)代表。「家族信託」「任意後見」「遺言」といった生前対策や、相続案件のエキスパート。ただの「登記屋さん」に終わらず、相談者の抱える問題に対し、あらゆる法制度を総合して解決策を立案・サポートすることが可能。相談者との対話を大事にすることをモットーとしている。このほか、一般社団法人にじいろソリューションの代表理事としてLGBTQの方への法律サポートに注力中。

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