目次
家の査定は、仲介や買取を依頼する不動産会社を選ぶ際の重要な要素です。査定額の多寡ではなく、他社の査定、自分で調べた相場とも比較しながら、信頼のおける不動産会社を選びましょう。
ここでは、家の査定を依頼する際の注意点や、査定後の注意点について解説します。査定の際に伝えておくべき内容も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
家の査定を依頼するにあたっての注意点
家の査定結果は、依頼先の不動産会社が有する情報や、会社ごとの査定方法によって異なります。提示された査定額が妥当かどうかを判断するためには、相場の知識や査定結果の比較が欠かせません。ここでは、査定を依頼する際の6つの注意点を見ていきましょう。
目的に合わせて査定依頼先を選ぶ
家の査定依頼先は、売買取引されるときの価格に詳しい不動産会社と、公的な価格を調べられる不動産鑑定士に分かれます。売却前提であったり、売るかどうか決める時の判断材料が欲しかったりする場合は、基本的に不動産会社に依頼して問題ありません。
一方で、売却前提でも特殊な事情があったり、売却ではなくトラブル解決や課税額のシミュレーションを目的とする場合なら、不動産鑑定士に依頼する必要があります。査定依頼先ごとの違いは、次のようにまとめられます。
査定依頼先 | 不動産会社 | 不動産鑑定士 |
---|---|---|
査定価格の 用途 |
売却価格の目安 | 相続などの公的な手続き |
費用 | 無料 | 有料 |
特徴 | 売買仲介や買取サービスの勧誘の一環として行われる | 相続や法律トラブル・権利設定に必要な公的な価格を調べられる |
不動産鑑定士に依頼するケースとして挙げられるのは、家を相続するとき、家の所有権や担保権について解決したいことがあるとき、離婚により財産分与が発生するときなどです。最終的に家を売るつもりであっても、上記のように公的な手続きが関わる場合は、不動産鑑定士が依頼先となる可能性があります。
複数の不動産会社に依頼する
家の査定は、1社だけでなく複数の不動産会社に依頼しましょう。1社にしか依頼しなかった場合、比較対象がないため、その会社の査定額が妥当であるかどうかの判断が難しくなるからです。
なかには、実際の相場よりも高額な査定価格を提示して勧誘したり、相場よりも割安な価格で買取をしようとしてくる会社もあります。このような会社を避けるため、少なくとも3社程度は査定依頼すると良いでしょう。
書類や情報を整理しておく
査定依頼にあたっては、家の所在地や間取り・構造などの情報が必要です。具体的には、家を買った時の売買契約書や、同じく買うタイミングでもらった重要事項説明書、図面や設備などの仕様書などが挙げられます。これらの書類や情報を事前に整理しておけば、スムーズに依頼できるでしょう。
なお、不動産会社の査定には複数の方法があり、うち簡易査定(机上査定)やAI査定であれば大まかな情報だけで価格の目安が分かります。集合住宅なら物件名や間取りなど、ごくシンプルな情報だけで査定してもらえるのはメリットですが、結果の精度は低めです。
関連記事
訪問査定時に確認されるポイントを把握しておく
実際に売却を予定しているなど、より正確な査定価格が必要な場合は、事前に物件情報を見てもらった上で、調査担当者に現地に来てもらう「訪問査定」を利用します。この場合、家のどういった点をチェックされるのか、あらかじめ知っておくと安心です。
現地調査に来る査定担当者が見るポイントとしては、実際の周辺環境や、内装・設備の状態、日当たりなどが挙げられます。これらのポイントは、ただ見てもらうだけだと利便性や状況が伝わり辛いため、住人として感じていることを当日しっかり伝えられるようにしておくと良いでしょう。
住宅ローン残債を確認しておく
家の売却を目的とする査定依頼では、住宅ローンの状況も重要です。住宅ローン完済前の家を売却しようとするときは、売却代金による一括返済が前提になるからです。ローンの残債を確認しないまま家を売却すると、ローンの返済により、手元に残る金額が想定よりも少なくなってしまうおそれがあります。あらかじめ住宅ローンの残債が分かっていれば、希望売却価格について伝えた上で査定に出し、結果と共に売却について意見してもらえるでしょう。
なお、住宅ローンを提供する金融機関の多くは、ネットバンキングから残債情報の確認が可能です。
自分でも売却時の相場を確認しておく
査定価格が適正かどうかを判断するためには、複数の不動産会社に査定を依頼すれば安心です。ただし、念のため、自分でも売却時の相場をチェックしましょう。
近い条件の物件が過去どのくらいの値段で取引されているか調べる際は、国土交通省の「土地総合情報システム」や、不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」が参考になります。
家の査定の依頼後に注意したい点
不動産会社の査定サービスは基本的に、売買・買取を依頼してもらうための営業活動として行われるものです。なかには「自社に売却手続きを依頼してもらうため」「割安で買い取るため」といった目的で、不適切な査定を行う、悪徳な不動産会社もあります。
ここでは、売買・買取を依頼する際に、信頼できる不動産会社かどうかを判断するためのポイントを紹介します。
査定額の根拠を説明してもらう
査定結果が出たら、その根拠について説明を求めましょう。適切に査定を行う会社であれば、地域・立地・直近の取引状況・そのほかの事情などを挙げて、詳しく説明してくれるはずです。
なお、不動産会社に売却手続きを依頼するときの方法は、買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社が買主となる「買取」のいずれかとなります。仲介を前提に査定してもらうケースでは、実際よりも高い査定結果を提示され、売買成立時に期待外れとなってしまう失敗が起こりかねません。
仲介と買取のどちらの方法でも、査定結果の根拠や理由をきちんと確認し、納得できるかどうかが重要です。
担当者が信頼できるかを確認する
家の売却依頼を前提とする査定にあたっては、担当者が信頼できるかどうかも見極める必要があります。とくに仲介の場合は、売買が成立するまでの少なくとも4か月から6か月ほどかかり、その期間は担当者と密にコミュニケーションを取ることになるからです。
安心して任せられる担当者かどうか見極める上では、やり取りのささいな部分にも注目しましょう。不動産市況や法律・税金といった専門的な知識があるかどうかだけでなく、メールや電話での口調、返信の速さも判断材料になります。
家の査定を依頼する際になるべく伝えたいこと
家の査定を依頼する際には、以下のような情報を不動産会社に伝えておきましょう。
- 売却に関する希望・要望
- 不具合や故障といった物件のマイナス面
- 売主から見た物件のアピールポイント
それぞれの項目について、詳しく解説します。
売却に関する希望・要望
査定依頼時に伝えたいこととして、第一に「売却に関する希望・要望」が挙げられます。金額などの売却条件だけではなく、配慮してほしい事項もまとめておきたいところです。具体的には、次のような項目が挙げられます。
- 希望する売却価格
- 希望する売却時期
- 訪問査定での現地調査、内覧の希望時間帯
- そのほか、現在住んでいる人に対する配慮事項
売却に関して望むことを細かく伝えれば、適切な提案や配慮が得られます。あまり積極的に提案してもらえなかったり、十分な配慮が得られないと感じたりしたときは、売却依頼を見合わせても構いません。
特に、時期については重要な要素になります。仲介ではどうしても短期間で売却できないため、絶対に売却を完了させなければいけない時期があるかを明確にしておきましょう。
不具合や故障といった物件のマイナス面
査定依頼時に伝えたいこととして、第二に「物件のマイナス面」があります。よくあるのは内装や設備に関するもので、具体的には次のようなポイントが挙げられます。
- 雨漏り、結露
- 壁紙やフローリングの破損、汚損
- 水回り・ガス設備などの不良、破損、汚損
- 近隣に高層物件が建つ予定など、日当たりや景観に関する問題
「マイナス面を伝えることで、売却額が下がってしまうのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、内装や設備・日当たりや景観に関する問題を不動産会社も見過ごしたまま売却すると、民法で定める「契約不適合責任」に問われ、買主に損害賠償請求される恐れがあります。売却後のトラブルを避けるためにも、マイナス面は正確に伝えましょう。
売主から見た物件のアピールポイント
査定依頼時に伝えたいこととして、第三に「住人・売主視点での物件のアピールポイント」が挙げられます。下記のような要素は、不動産のプロであっても伝えられるまで見極め難いため、是非とも伝えておき、査定価格に反映してもらいたいものです。
- 断熱リフォームによる室温の改善
- 耐震補強工事による安全性の向上
- 水回り・ガス設備の交換履歴、修繕履歴
- 近隣に新しくできる予定の施設(スーパーなど)
- 実際に暮らしてみないと分からない交通の利便性
とくに、住宅性能を向上させるためのリフォームや設備の見直しは、買主側に税額軽減のメリットが生じ、売れやすさにも繋がります。不動産会社の販売戦略を効果的にするためにも、家の良い面は積極的に伝えましょう。
注意点をおさえて家の査定を依頼しよう
家の売却目的であれば、査定依頼先は不動産会社で問題ありません。気を付けたいのは、査定価格の精度や、依頼する不動産会社が信頼できるかどうかです。家を売却したときの価値を知りたいケースを前提に、注意したいポイントをあらためてまとめると、次のようになります。
- 複数の不動産会社(3社以上が目安)に査定依頼する
- 査定に必要な書類や情報を整理しておく
- 住宅ローン返済中の場合、残債を確認する
- 自分でも相場を確認する
- 査定額の根拠の説明、担当者の対応などに注目する
査定価格しだいで家の売却を依頼しようと考えるのであれば、売主としての希望や物件の良い面・悪い面をしっかりと伝えることが大切です。
以下の記事では、査定依頼であり得るトラブルについて解説しています。こちらも確認のうえ、自身の希望に合った方法を選べるようにしましょう。