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不動産会社のマンション査定を受けたあとで、売却手続きに進むかどうかは人によって異なります。マンション査定だけ依頼するのは一般的であり、「本当に売却するかどうかわからないから」といって気遅れする必要はありません。
とはいえ「査定だけでも費用がかかってしまうのではないか」「適正な価格で売ってもらうには結局どうすればいいのか」と、悩んでしまう人もいるでしょう。
ここでは、マンション査定から売却依頼までの注意点や方法、心構えを紹介します。
■この記事でわかること
- マンション査定だけ依頼するのは大丈夫なのか
- 査定費用を請求されることはないのか
- 査定を頼む時や一括査定の注意点は何か
マンション査定だけして実際に売らなくても大丈夫
マンション査定だけを依頼して売却手続きまで進まないのは、ごく普通のことであり、全く問題ありません。不動産会社は査定依頼について、「将来のお客さまと接点を持つ機会」と考えており、査定費用を無料とするのが一般的です。
ここでは、マンション査定の背景にある事情や、費用の考え方について解説します。
査定したら売却が必須なわけではない
不動産会社にマンション査定をしてもらったからといって、実際に売却しなければいけないわけではありません。
株式会社不動産のミカタが2022年10月に実施した「所有権移転率調査」によれば、2021年3月に行われた290件の一括査定のうち、翌年の2022年3月までに所有権移転が完了したのはわずか57件で、同年9月までの半年でも11件しか増加しませんでした。つまり、査定から1年半で売買が成立しているのは、全体の23.4%にあたる68件のみです。
引用:【第2回】一括査定反響の所有権移転率 調査レポート│不動産のミカタ
この数値は、不動産会社にマンション査定依頼する人のうち約8割弱が、実際には売却していないことを示しています。査定だけの依頼は決して珍しいことではないのです。
査定だけしたい理由も人それぞれで多岐にわたる
マンション査定を受ける理由は人それぞれで、必ずしも売却を目的とはしません。マンション査定だけを依頼する際の、よくある目的としては以下のようなものがあります。
- 周辺の物件価格が変わっているようなので、自宅についても調べてみたい
- 分譲マンションの一室を相続したが、売るべきか活用すべきか迷う
- 将来的に売るつもりではあるが、リフォームや設備改良が必要か確認したい
- 住み替えを検討しているが、売るべきか、貸して賃料を得るべきか考えたい
上記のように「いったん査定価格を確認してみて、その結果しだいで今後を決めたい」という人は多数います。地域によっては、人口動態や開発事業の影響で集合住宅の価値が増減する場合もあり、適当な時期に自宅の資産価値を確認しておくことは欠かせません。
また、不動産会社側も、マンション査定にさまざまなニーズがあることは理解しています。そのため、査定だけを依頼して売却の手続きに進まなかったとしても、悪く思われることはありません。
売らずに査定だけしても費用はかからない
不動産会社に依頼するマンション査定は、ほとんどの場合、無料で受けることができます。
不動産会社が無料でマンション査定を行う目的は、潜在的売主と接点を持ち、自社のサービスや情報の質をアピールすることにあります。無料のマンション査定でサービスや情報の質を高く評価されれば、その時点では売却の意思がなくても、将来売却を検討する際に仲介業者として選ばれる可能性が高くなるからです。
不動産会社にとっては査定にかかるコストよりも、潜在的売り主との接点を持てるメリットのほうが大きいと捉えるからです。上記のような事情から、マンション査定は「お客さまに良し悪しを確かめてもらう機会」として、一般的に無料で提供されています。
ただし、例外的に査定費用が発生する場合もあります。売却を目的とした査定ではなく、不動産鑑定士による公的な価格計算である「鑑定」が必要なケースです。当てはまる例として、次のようなものが挙げられます。
- 土地の相続、遺言による贈与などを考えているケース
- 親子やきょうだいなど、親族間で土地の譲り合いを考えるケース
マンション査定だけ依頼する方法
マンション査定だけを依頼する方法として一般的なのは、不動産査定サイトの利用です。また、売却予定がはっきりしている場合や、そのほかの理由で正確な査定価格が知りたい時は、不動産会社の担当者に来てもらう「訪問査定」が選ばれます。
不動産査定サイトを利用する
マンション査定のみを依頼するのであれば、不動産査定サイトの利用は手軽な手段です。
不動産査定サイトには個人情報を入力して行う一般的な査定と、匿名査定の2種類があります。また、近年では人間ではなくAIが査定を行うAI査定も徐々に増えてきており、よりスピーディに査定結果を知ることができます。
査定の種類 | 査定価格の精度 | 特徴 |
---|---|---|
一般的な査定 | 精度が高い | ・依頼を受け取った企業が簡易査定(机上査定)を実施。より精確な階数、部屋番号を入れるため、精度が高くなる。 ・近年ではAIが価格を査定し、そのままWEB上で不動産会社の直接買取価格を決定するWEB買取サービスも登場している。 |
匿名査定 | 精度は低い | ・利用者情報を知らせず、マンション情報も簡単に入力するだけで、売買契約が成立した時の価格の目安がわかる。 |
実際に不動産会社に訪問してもらう
本格的なマンション査定を希望する場合は、不動産会社に実際に訪問してもらう「訪問査定」をおすすめします。
この方法では、事前に提供したマンション情報(登記簿や建物の図面)を元に簡易査定(机上査定)を行い、そのあとに専門家が訪問して物件内外を詳しくチェックします。査定価格が出るまで1週間から2週間ほどかかりますが、過去の取引事例だけでなく、中古マンションごとにある個別の事情まで考慮して、より売却価格に近い査定結果を教えてもらえます。
利用者が「今マンションを売るべきか」「そもそも売却していいのか」を判断するための材料となる、信頼性の高い査定価格を得る手段です。
訪問方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
マンション査定だけする場合の注意点
マンション査定だけ不動産会社に依頼するときの注意点は、以下の4つです。
- 不動産会社には「売却する場合の査定価格が知りたい」と伝える
- 正確な査定価格を知りたいときは、訪問査定が必要
- 査定価格の比較検討は、2社から4社程度への依頼が適切
- 売却手続きを進めるときは、改めて査定を依頼する
一つずつ詳しく解説します。
不動産会社に売却の検討状況を伝える
マンション査定だけを希望する際、最初から「査定だけで売却の意思はない」とはっきり示す必要はありません。理想的なのは「売却するとしたら、いくらになるか知りたい」といった伝え方です。加えて、「売却したい時期」についても伝えておくと、より正確な査定価格を得やすくなるでしょう。
前述のとおり、無料のマンション査定は不動産会社にとって自社のサービスの質をアピールする機会ですが、売却の意思がないことを伝えることは、依頼する不動産会社のお客さまにはならないことを伝えることになります。
不動産会社に対して失礼にならないよう、どのぐらいの粒度で検討しているかを伝えることを意識しておきましょう。
正確な査定金額の算出には訪問査定が必要
マンションの正確な査定金額を得るためには、査定担当者が実際に物件を訪れる訪問査定を受ける必要があります。不動産査定サイトの結果は、敷地・立地・設備の状態といった、実際の状況を反映していないため、あくまでも参考価格としての扱いにとどまります。
訪問査定における、担当者の訪問時間は通常2時間ほどで、特別な準備は必要ありません。平日・土日祝問わず対応してくれることが一般的で、都合の良い日時で調整できます。
売却に対する意欲が高い場合や、具体的な売却時期が決まっていて手続きに移りたいときは、できるだけ早く訪問査定を依頼するのがベストです。スムーズに売却を進めたい場合は、仲介ではなく買取を行なっている企業に依頼するのも選択肢の一つです。
たくさんの不動産会社に依頼しすぎない
マンション査定の結果は不動産会社によって異なるため、複数の不動産会社に依頼するのが一般的です。とはいえ、あまりにも多くの会社に依頼しすぎると、対応する手間や、セールスを受ける機会が多くなり、気苦労の原因となります。
目安は2社から4社程度で、大体3社に依頼すれば正確かつ相場の売却価格がわかると考えておくと良いでしょう。
売却手続きを進めるときは改めて査定する
マンション査定の価格は、不動産査定サイト、訪問査定のどちらであっても、おおむね3ヶ月以内に売買契約が成立した場合を前提としています。
不動産市況や物件固有の事情は時間とともに大きく変化するため、査定から期間を置いて売却を検討する場合は、当初の査定価格から大きく離れた値段になってしまう可能性が高いといわざるを得ません。
査定だけを依頼したあと、期間を置いて本格的に売却を依頼したいと思ったときは、売却対価と差が大きく出ないよう、再査定してもらうのが大切です。その結果しだいで、売却や広告開始の時期について相談したいことが新たに出てくるかもしれません。
まとめ
マンション所有者が、不動産会社に査定だけを依頼するのは全く問題なく、実際に査定する人の8割は売却手続きまで進んでいないというデータもあります。
査定だけ依頼する目的は「資産価値を確認しておきたい」「いつ・どう活用すれば利益になるのか知りたい」などさまざまです。査定だけ依頼する場合は、売却の検討状況を伝えることで、不動産会社も考慮して査定を進めてくれるでしょう。
なるべく早く売却を進めたい場合は、不動産会社の仲介ではなく買取をお願いするのも選択肢の一つです。東京ガスグループでは、分譲マンション・中古マンションの査定・買取を行なっております。査定額がそのまま売却額になるほか、仲介よりも早く売却を進められます。