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家族信託契約では、信託を設定して財産を委託する委託者、委託された財産について適切な運用を行う受託者、運用から利益を得られる受益者の3者が主な当事者になります。契約の際は委託者と受託者で契約を行い、その契約について記した書類を作成する必要があります。
家族信託の契約書には、当事者や信託の目的、財産の管理方法、変更や終了の条件といった内容を記載しましょう。
契約書の作成は司法書士や弁護士、家族信託を専門に扱う企業といったプロに任せるのが一般的です。しかし、自分で作成することも、法律上は不可能ではありません。
ここでは、家族信託の契約書に記載するべき内容や、作成にあたっての注意点などについて解説します。
家族信託契約書は自分で作成できる?
家族信託の契約書は、特別な資格がなくても作成することができます。作成しようと思えば、委託者と受託者で協力し、自分たちで作成することも可能です。
自分たちで作成すれば費用を抑えることが可能ですが、家族信託の契約書作成には、信託法や税法などに関する豊富な専門知識が必要です。作成にかかる時間や手間、トラブルのリスクなどを考慮すると、デメリットのほうが大きいといわざるをえません。
そのため、信託契約書の作成は司法書士や弁護士といった専門家に任せるのが一般的です。費用こそかかりますが、文言の違いや記入漏れ、誤記によるトラブルを回避できるため、ストレスを少なく済ませられるでしょう。
家族信託契約書に記載すべき内容
家族信託契約書に記載すべき内容は、状況によって異なります。契約の項目としては、次のようなものが挙げられます。
- 家族信託における当事者(委託者・受託者・受益者)
- 家族信託の目的
- 家族信託の対象にする財産
- 信託財産の管理方法
- 家族信託契約の変更・終了
- 残った財産の帰属先
それぞれ解説します。
家族信託における当事者(委託者・受託者・受益者)
信託における当事者の氏名、住所、生年月日などを記載します。
家族信託では、少なくとも委託者、受託者、受益者の3者が当事者になります。受益者については、死亡したときの次の受益者だけではなく、さらにその次の受益者(二次受益者)についても設定可能です。
受益者が高齢者あるいは未成年者など、保護する必要がある場合は、信託監督人や受益者代理人を決めておいても良いでしょう。信託監督人は適切に契約内容が履行されているかチェックする役であり、受益者代理人は本人の代わりに信託契約に関与する立場の人です。一般的には、弁護士や司法書士などを信託監督人または受益者代理人とします。
家族信託の目的
信託の目的を記載します。契約の根幹となる部分で、委託者が考える「今回の契約で達成したい内容」にあたります。下記は、不動産を信託するときの例文です。
本信託の目的は、信託財産として以下に定める不動産(以下「本不動産」という。)を信託財産として管理し、委託者権受益者である信託一郎の生活の安定を図り、円滑に財産承継を果たすことである。
信託の目的はさまざまで「教育費の確保」や「特定の目的のため収益をあげること」などを複数設定しても問題ありません。ただし、どのような内容を記載する場合も、事前に家族でよく話し合いましょう。
家族信託の対象にする財産
信託の対象となる財産(信託財産)を定めて記載します。
家族信託では、委託者の持っている資産すべてを対象とする必要はありません。たとえば「賃貸経営中の不動産のみ」など、特定の財産のみを指定することも可能です。生活費などは個人資産として確保し、必要な財産だけを信託しましょう。
なお、信託する財産の種類が多い場合は、契約書とは別に信託財産目録を作成しておく必要があります。加えて、不動産が信託財産になる場合は、登記事項証明書に記載された表示の通りに記載しなければなりません。
信託の対象となる財産を指定する前に、委託者の財産をすべてリスト化しておくと良いでしょう。実際には、予備的に任意後見契約を締結することなども多く、リストがないと「どれがどの財産なのか」ややこしくなります。
信託財産の管理方法
信託財産における管理の仕方や、信託財産から得られた利益の取り扱いについて記載します。とくに、受益者の権利濫用を防ぐため、受託者が具体的にどこまで管理・処分ができるのか明確に決めておく必要があります。信託契約書に記載する事項のなかでも、とりわけ重要なものといえるでしょう。
信託財産の管理方法は、信託の目的に沿うように設定する必要があります。基本的には、家族で合意した内容をたたき台として用意し、契約文言に落とし込みます。
家族信託契約の変更・終了
家族信託は非常に長い契約期間を持ち、変更する必要に迫られることもあり得ます。そこで、基本事項である信託契約の内容を変更できる条件と共に、終了事由についても定めておきましょう。
定めておくべき内容は、次の通りです。
- 信託の変更の条件:「受益者の死亡」や「信託監督人との合意」
- 信託の終了事由:信託法163条にある事由以外のもので任意の条件など
変更条件や終了事由は、いくつ定めても構いません。
残った財産の帰属先
信託契約の終了事由と共に、残った信託財産の帰属先も事前に定めて、記載しておくことができます。帰属先を設定していない場合、委託者または委託者の相続人が帰属先となるため、家族信託の目的が果たせないうえに状況が複雑化する恐れがあります。
ほかに、信託しなかった個人の財産についても、誰が相続するかを決めておかなければなりません。信託財産以外の資産は契約書に記載できないため、別途で遺言書の作成を検討します。
家族信託契約書の作成にあたっての注意点
家族信託の契約書は、誤った方法で作成すると、契約が無効になったり、トラブルに発展したりする恐れがあります。
ここでは、正確な信託契約書を作成するために押さえておきたい注意点について見ていきましょう。
公正証書で作成する
家族信託の契約書は、信託法の定めにより、公正証書で作成する必要があります。
公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成・認証することで、民間の契約書にはない公文書としての効力を有するようになる書面です。紛失・偽造・改ざんといったリスクがなく、信託口口座を作ることが可能です。
公正証書の作成にあたっては、最寄りの公証役場での手続きを予約し、委託者および受託者が本人確認書類や実印を持って訪れる必要があります。ここでは、信託しようとする財産の評価額に応じた作成手数料もかかりますので持参しましょう。
委託者が高齢だと「認知症により契約を結べない状態にある可能性」を考慮して、公証人から何度も呼び出されたり訪問を受けたりすることがあります。時間がかかる可能性もあるため、締結までの期間に余裕を持っておくと良いでしょう。
ひな形はあくまでも参考程度にする
家族信託契約書のひな型は多数ありますが、いずれも正しいとは限りません。状況別に多数のパターンを掲載するサイト・書籍もあるものの、個別の事情までは折り込めていないのが現実です。
契約書のテンプレート・ひな型と書かれてあるものについては、参考程度に留めましょう。それぞれの家庭の事例に当てはめて使用したい場合、適切に内容を変更していきます。
専門的な知識が必要になる
家族信託の契約書は、一般的な契約書・合意文書とは違い、専門的な知識が必要になります。契約書の作成にあたって、信託法や民法、時として税法に関する知識がないと、不足や誤りの判断ができません。自分自身で調べるにしても、時間と労力が必要です。
この労力が過大に負担となることが多いため、家族信託の契約書は弁護士・司法書士などの士業や家族信託を専門に取り扱っている企業に依頼するのが一般的です。
契約書作成の費用相場としては、契約1本につき10~15万円程度と言われていますが、契約内容を取り決めるためのコンサルティング費用に内包されているケースもあります。
家族信託の契約書の作成はプロに任せよう
家族信託の契約書は専門知識が必要となり、自力での作成はトラブルが発生するリスクが多くつきまといます。契約書を作成したあとも、信託不動産の登記や信託口口座の開設など手続きが必要となるため、知識がないところから着手するのは現実的とはいえず、最初から専門家に任せるのが安心です。
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