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家族信託を検討するなかで「費用がどれくらいかかるのか知りたい」「安く抑える方法はないか」とお悩みの方もいるでしょう。
ここでは、家族信託で発生する費用の目安や内訳、具体例を用いたシミュレーション、開始後に発生する費用や、節約するためのポイントなどについて解説していきます。
・家族信託の契約で発生する費用の目安がわかる
・家族信託でかかる費用のシミュレーションができる
・家族信託を始めたあとにかかる費用の内容がわかる
家族信託で発生する費用の目安
家族信託にかかる費用は、「どこまで自分で手続きするか」「専門家に依頼するか」によって大きく変わります。
自分で手続きを進める場合に必要な費用は、公正証書の作成費用や登記にかかる税金などの実費のみとなり、20万円前後が目安です。
一方、専門家に依頼する場合は、契約内容の設計や手続き全体をサポートしてもらうためのコンサルティング費用が発生します。費用は30万〜60万円程度が相場とされています。
ただし、信託する財産の額や種類、家族構成、どのような管理・運用を実現したいかによって金額は変わるため、明確な目安はないのが実情です。
そのため、家族信託を検討する際は、制度の仕組みとあわせて「どのような費用が、どの場面でかかるのか」を大まかに把握しておくことが重要です。
家族信託で必要な費用の内訳
家族信託で生じる費用にはさまざまなものがあります。主な6つの費用について、それぞれの概要や目安を把握しておきましょう。
コンサルティング費用
家族信託を専門家に依頼する場合、信託内容の設計や整理に対するコンサルティング費用が発生します。
具体的な金額は専門家により異なりますが、信託財産評価額の1.1%前後が目安とされています。たとえば、信託する財産が4,000万円の場合、40万円前後がコンサルティング費用としてかかるイメージです。
なお、信託財産の額が少額な場合は、30万円程度の「最低金額」の設定がなされているところもあります。
実際の費用は家族構成や信託設計の複雑さなどによって前後するため、事前に見積もりを取ると安心です。
信託契約書の作成費用
信託契約書の作成を専門家に依頼する場合は費用がかかります。
信託契約書とは、家族信託の土台となる書類のことです。どの財産を、誰が、どのような目的で管理・運用するのかを記載します。
家族信託の手続きを自分で行う場合、信託契約書そのものを作成するための費用は、とくにかかりません。家族信託は当事者間の合意があれば成立するため、契約書を自作すること自体は、法律上可能です。
自分で作成するのが不安な場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼すると安心です。財産額や財産の種類、相続の意向といった家族ごとの状況や希望を確認したうえで、家族信託契約書を作成してもらえます。
ただし、信託契約書の作成費用として6万〜16万5,000円程度の費用が発生するのが一般的です。なお、前述のコンサルティング費用に含まれているケースもあるため、見積書などで確認すると良いでしょう。
公正証書化費用
信託契約書を公正証書化する際にも費用が発生します。公正証書とは、公証人が法律に基づいて作成する公文書のことで、高い証拠力をもつものです。
家族信託は、委託者と受託者の合意があれば成立します。そのため、信託契約書は、必ずしも公正証書で作成するべきものではなく、私文書による契約も可能です。しかし、公正証書で作成すれば契約内容の有効性を明確に示せるうえ、将来のトラブル防止にもつながります。
公正証書を作成する場合は、信託財産の額に応じて公証人手数料を支払う必要があります。公証人手数料は、自分で行う場合でも専門家に依頼する場合でも生じるものです。
手数料額は作成する証書の金額に応じて段階的に定められており、たとえば信託財産の価額が5,000万円以下であれば、5,000円〜2万9,000円程度が目安となります。
| 目的の価額 | 手数料 |
| 50万円以下 | 3000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 13000円 |
| 500万円を超え1000万円以下 | 20000円 |
| 1000万円を超え3000万円以下 | 26000円 |
| 3000万円を超え5000万円以下 | 33000円 |
| 5000万円を超え1億円以下 | 49000円 |
| 1億円を超え3億円以下 | 4万9000円に超過額5000万円までごとに1万5000円を加算した額 |
| 3億円を超え10億円以下 | 10万9000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
| 10億円を超える場合 | 29万1000円に超過額5000万円までごとに9000円を加算した額 |
家族信託用の口座開設費用
家族信託では、受託者名義の専用口座を開設すると、信託した金銭を安全に管理しやすくなります。受託者自身の財産と信託財産を明確に分けて管理する分別管理は、家族信託を適切に運用していくうえで重要です。
信託口座を開設する際には、金融機関によって口座開設手数料や口座維持手数料が発生する場合があります。費用は、5万〜10万円程度が目安です。
また、多くの金融機関では、公正証書で作成された信託契約書の提出を求めており、私文書では口座開設手続きができないケースがみられます。
口座開設を予定している場合は、事前に金融機関に問い合わせて必要書類や条件を確認しておきましょう。
信託登記の手続き費用
家族信託を自分で手続きする場合、不動産の種類により以下の登録免許税がかかります。
- 土地:固定資産税評価額の0.3%(令和8年3月31日まで)
- 建物:0.4%
たとえば、信託財産が土地2,000万円・建物1,000万円の場合、登録免許税は土地が6万円、建物が4万円で、合計10万円となります。
さらに、信託登記手続きを専門家に依頼する場合、登録免許税に加えて信託登記の手続き代行費用として10万円前後が必要になるのが一般的です。
なお、所有権移転登記の登録免許税は、信託の場合は非課税になります。
登録免許税は、原則として不動産一つ一つに課税されるものであるため、複数の不動産を信託する場合は、その分費用が増加することになります。
必要書類の取得費用
家族信託の手続きを進めるにあたっては、契約内容の確認や各種手続きのために、以下のような公的書類を取得する必要があります。
- 戸籍謄本:450円
- 住民票:300円程度
- 印鑑証明書:300円程度
- 固定資産評価証明書(不動産を信託する場合):300円~400円程度
- 登記事項証明書(不動産を信託する場合):490円~600円
上記書類は、市区町村役所や法務局で取得可能です。
費用は自治体や必要枚数によって変動しますが、目安として数千円〜1万円程度の実費がかかることを見込んでおくと良いでしょう。
また、私文書で信託契約書を作成する場合には、内容に応じて収入印紙代が発生するケースがあります。細かい費用ではありますが、事前に把握しておくことで手続きがスムーズに進められます。
【ケース別】家族信託費用シミュレーション
家族信託をする際に発生する費用を、以下の2つのケースでシミュレーションしてみましょう。
- ケース1:現金5,000万円を家族信託
- ケース2:現金1,000万円+土地3,000万円+建物2,000万円を家族信託
なお、計算結果は概算となりますので、あくまでも目安として参考にしてください。
ケース1:現金5,000万円を家族信託
現金5,000万円のみを家族信託する場合の各項目の算出条件は以下の通りです。
- コンサルティング費用:信託財産評価額の1.1%
- 公正証書化費用:信託財産に応じた手数料
- 信託契約書の作成費用・信託口口座の開設費用:費用目安の中間額
- 必要書類の取得費用:1万円
| 家族信託の手続きに関する項目 | 自分で行う場合 | 依頼する場合 |
| コンサルティング費用 | – | 55万円 |
| 信託契約書の作成費用 | – | 11万円 |
| 公正証書化費用 | 3.3万円 | |
| 信託口口座の開設費用 | 7万円 | |
| 必要書類の取得費用 | 1万円 | |
| 合計 | 11.3万円 | 77.3万円 |
手続きを専門家に依頼した場合、コンサルティング費用が発生するため、費用の目安は77万3,000円程度になります。
一方、自分で手続きを行う場合は、コンサルティング費用や信託契約書の作成費用を抑えられ、11万3,000円程度が目安となります。
なお、コンサルティング費用や公正証書化費用は、家族信託する財産額が大きくなるほど増加する傾向があることに注意しましょう。
ケース2:現金1,000万円+土地3,000万円+建物2,000万円を家族信託
現金1,000万円+土地3,000万円+建物2,000万円を家族信託する場合の、各項目の算出条件は以下の通りです。
- コンサルティング費用:信託財産評価額の1.1%
- 公正証書化費用:信託財産に応じた手数料
- 信託契約書の作成費用・信託口口座の開設費用:費用目安の中間額
- 信託登記の代行費用:10万円
- 必要書類の取得費用:1万円
| 家族信託の手続きに関する項目 | 自分で行う場合 | 依頼する場合 |
| コンサルティング費用 | – | 66万円 |
| 信託契約書の作成費用 | – | 11万円 |
| 公正証書化費用 | 4.9万円 | |
| 信託口口座の開設費用 | 7万円 | |
| 信託登記に関する費用 | 【登録免許税】 17万円(土地:9万円+建物:8万円) |
【登録免許税】 17万円(土地:9万円+建物:8万円)【代行費用】 10万円 |
| 信託登記代行費用 | – | 10万円 |
| 必要書類の取得費用 | 1万円 | |
| 合計 | 29.9万円 | 126.9万円 |
自分で手続きを行う場合は、登録免許税と公正証書化費用が主な負担となり、29万9,000円程度が目安です。専門家に依頼する場合は、自分で行う場合の費用にコンサルティング費用や登記代行費用が加わり、126万9,000円ほどが目安となります。
不動産を含む家族信託では、信託登記にかかる登録免許税が発生するため、現金のみのケースより費用が高くなるのが一般的です。
なお、不動産の規模や評価額が大きくなるほど、付随する登録免許税などのコストも増大します。とくに、複数の不動産を信託する場合は、コスト増に留意しなければなりません。
家族信託開始後に発生する費用
家族信託に関する費用は、制度の利用を開始するまでだけでなく、利用中にも発生します。具体的には以下のとおりです。
- 受益者代理人・信託監督人への報酬
- 家族信託契約の内容を変更する場合の費用
- 家族信託の契約が終了したときの費用
それぞれの費用について確認していきましょう。
受益者代理人・信託監督人への報酬
家族信託は、契約を締結して終わりではなく、そこから信託財産の管理・運用が始まります。契約時に受益者代理人や信託監督人を選出した場合は、選出した人へ報酬を支払う必要があります。報酬額はそれぞれ月に1万~2万円程度が相場になります。
受益者代理人と信託監督人の役割については下記のとおりです。
- 受益者代理人
受益者の代わりに、受益者の権限を行使する人のことです。受益者本人が認知症などによって判断力を失っている場合や、複数の受益者がいるために意思決定が困難な場合などに定められます。 - 信託監督人
受託者が信託契約の内容にしたがって財産の管理・運用を行っているかどうかを監督する人です。信託財産の金額が大きい場合や、受益者が未成年であったり、障害者であったりする場合に定められます。
また、信託監督人を司法書士に依頼した場合は、毎月数万円の費用が必要になることを覚えておきましょう。
家族信託契約の内容を変更する場合の費用
信託契約の内容は、当事者間での合意があれば、あとから変更することも可能です。その際、既存の信託変更契約書を変更する必要があるため、契約書費用として約10万円がかかります。信託変更契約書を公正証書として作成する場合は、契約時と同じく公正証書作成費用も必要になります。
また、関係者が亡くなったり、住所の変更が必要になった際には、信託関係者の変更登記が必要です。こちらには手数料と登録免許税がかかり、あわせて数万円程度です。
家族信託の契約が終了したときの費用
家族信託契約が終了した際にも生じる費用があります。家族信託の契約内容により、以下のような費用が例として挙げられます。
- 受益者の死亡により信託契約が終了したときに発生する相続税
- 信託契約終了によって不動産の名義を変更する際の信託不動産の登記費用
- 家族信託の契約終了に伴う専門家への報酬
相続税や登記費用は、家族信託の契約内容や財産の種類、資産額などによって、必ずしも発生するとは限りません。また、専門家との契約内容によっては、終了に伴う報酬が発生しないケースもあります。
家族信託の契約が終了する際の費用は信託内容によって異なります。手続きを進める際に、終了後のことも視野に入れて検討することが大切です。
家族信託にかかる費用を抑える3つのポイント
家族信託にかかる費用を抑えるためには、主に以下の3つの方法があります。
- 信託契約書を私文書で作成する
- 家族信託に盛り込む財産を最低限にする
- 専門家に依頼せず自分で手続きする
それぞれの方法を採用した場合の、メリットとリスクを確認しましょう。
信託契約書を私文書で作成する
前述の通り、信託契約書は必ずしも公正証書にする必要はなく、私文書でも有効です。公証人手数料や専門家への公正証書作成代行費用として、10万~20万円程度かかりますが、私文書で作成すればこれを節約できます。なお、確定日付(※)のみを公証役場で取得する方法もあり、この場合は数百円程度の費用で済みます。
ただし、金融機関の多くは公正証書がなければ信託口口座を開設できません。財産管理に支障が出る可能性があるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
※確定日付:公証役場で「確定日付」のスタンプを押してもらうことで、「その日時点では、確かにその文書が存在していた」ことを公的に証明できる制度
家族信託に盛り込む財産を最低限にする
コンサルティング費用は信託財産評価額の約1.1%が相場です。したがって、信託財産を減らせば、その分費用を抑えることが可能です。
そもそも家族信託では、委託者の全財産を対象とする必要はありません。資産凍結を防ぎたい財産や、将来動かす可能性のある財産だけを信託すれば十分です。
たとえば、信託財産が3,000万円であればコンサルティング費用は約33万円ですが、1,000万円に抑えられれば約11万円となり、大幅な節約になります。
信託財産の中に不動産が含まれる場合、「名義変更」の手続きが必要になり、登録免許税や司法書士への登記費用が発生するのが一般的です。最低限必要な不動産のみに絞ることで費用を抑えられるでしょう。
専門家に依頼せず自分で手続きする
家族信託の手続きを自分で行えば専門家への報酬が不要となり、公正証書の手数料や不動産の登録免許税といった実費のみで済むため、大幅に費用を抑えることが可能です。
ただし、家族信託の契約設計は、法律や税務の理解が不十分なまま進めると、想定外の贈与税が発生したり、信託の目的が正しく実現できなかったりするおそれがあります。
とくに、公正証書化の手続きや信託登記は実務上のハードルが高く、専門知識や経験が求められます。
費用を抑えることだけを重視せず、自分で行うことのリスクも冷静に見極めたうえで判断することが重要です。
家族信託の費用に関するよくある質問
ここからは、家族信託の費用に関してよくある質問について回答していきます。疑問や不安解消のために参考にしてください。
家族信託費用は誰が払う?
家族信託にかかる費用は、原則として受益者が支払うとされています。家族信託では「受益者課税の原則」が採られており、信託財産から生じる利益を受け取る人が、税金や関連費用を負担するという考え方があるためです。
受託者は財産の管理・運用を担う立場であり、信託から直接的な利益を受け取るわけではありません。そのため、家族信託に関する費用負担は、利益を受ける受益者が行うのが一般的です。
ただし、実際の支払い方法や負担の考え方は、家族構成や信託内容によって異なる場合もあります。後々のトラブルを防ぐためにも、契約前に関係者間で話し合い、信託契約の中で明確にしておくのがおすすめです。
家族信託の受託者へは報酬を支払うべき?
家族信託では、親族の誰かが受託者となるケースが多く、受託者への報酬を設定しないまま契約するのが一般的です。
ただし、受託者は信託財産の管理・運用・処分といった実務を担う立場であり、その負担は決して小さくありません。そのため、家族間の関係性や信託内容によっては、信託事務の対価として受託者報酬を設定し、負担感や遠慮を減らしてスムーズな運用につなげるケースもあります。
なお、受託者に報酬を支払うためには、家族信託契約書の中に「受託者報酬を支払う旨」を明記することが必須です。報酬を設定する場合は、支払うかどうかだけでなく、金額や支払頻度(毎月・毎年など)、上限の有無まで含めて、契約時に具体的に定めます。
まとめ
家族信託にかかる費用の目安や内訳、ケース別のシミュレーションを解説しました。家族信託は自分で手続きを進めることも可能ですが、契約設計の自由度が高い分、法律や税務の知識が求められ、手続きや判断に想像以上の手間がかかるケースも少なくありません。
内容によっては、思わぬ税負担やトラブルにつながるリスクもあります。リスクを回避するためには、費用はかかりますが、専門家に依頼することで安心して手続きを進められるでしょう。
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