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マンションの買い替えのタイミングや事情は人それぞれです。とくに親の介護、転勤・転職、定年退職など、ライフスタイルの変化が買い替えの判断に大きな影響を与えます。
買い替えには、大きな労力とお金を要するため、納得のいくかたちで進められるように、事前に対策を考えておくことが大切です。
ここではマンションの買い替えを考えるきっかけの事例や、買い替えの基本的な知識、制度について解説します。
マンションの買い替えタイミングにはどのようなものがある?
マンションの買い替えのタイミングとして、多い事例を5つ紹介します。
親の介護のために同居もしくは近くに引越す
1つ目は親の介護のために同居もしくは近くの物件に引越すために買い替えるケースです。
親の介護が必要になったとき、同居を考えるケースも多いと思います。親の家で同居するパターンもあれば、親に自宅へ来てもらうパターン、二世帯住宅などの新居を購入・建築して同居を始めるパターンもあります。
もしくは、別で暮らす場合にもお互いが遠く離れた場所に住んでいると、介護に通う負担が大きくなるため、近くに引越して負担を軽減するという選択肢もあるでしょう。
転勤、転職のために引越す
2つ目は転勤、転職など職場環境の変化によって買い替えるケースです。
とくに遠方への長期の転勤は通勤の負担が大きいため、単身赴任や住み替えなどを伴うことがほとんどです。転職の場合も会社が変わるため、勤務地によっては今よりも通勤しやすい場所への引越しを検討することになるでしょう。
子どもが独立し「手広」になったマンションからダウンサイジングで引越す
3つ目は子どもの独立によって買い替えるケースです。
子どもと同居していた家庭では、子どもが独立して家を出ると、部屋が手広になり持て余してしまう場合があるでしょう。その場合、コンパクトなマンションに住み替えれば、管理費や光熱費などが安価になったり、掃除の手間も減ったりと暮らしやすくなるメリットがあります。
マンションが老朽化したため引越す
4つ目はマンションの老朽化によって買い替えるケースです。
一般的にマンションは老朽化が進行すると、管理費や修繕積立金が高くなっていきます。
管理組合が機能しており、修繕が順調に行われているのであれば良いのですが、修繕を怠っているマンションも少なくないのが現状です。
管理や修繕を怠っていると、徐々にマンションの美観が損なわれるだけでなく、雨漏りや設備の不具合が頻繁に発生するようになるため、住環境は悪化します。
こうした将来性に不安のある古いマンションの場合、住み替えを検討することもあるでしょう。
定年を迎えて、新しい環境で生活を始めるため引越す
5つ目は定年を迎えたときに新しい環境を求めて買い替えるケースです。
定年退職後は通勤の必要が無くなるなど生活環境が大きく変わるため、新しい生活に適した住まいを求める方が多いタイミングです。年齢を重ねることで変化する身体面で病院への通院や入院が増えることなどを見据え、利便性の高い地域への住み替えが人気です。
ただし、定年後の仕事の有無、余暇の過ごし方など、ライフスタイルによって適した住まいは異なるので、自分の生活に必要な条件は何か、よく考えたうえで判断することが大切です。
紹介したように、買い替えのタイミングや理由は人それぞれです。1つ目の親の急な介護や、2つ目の転勤や転職などのやむを得ないケースはスケジュール優先で進める必要がありますが、その他のケースでは早めに準備をしてスケジュールや資金面で余裕を持って進めることをおすすめします。
マンション買い替え時の手順は2種類
マンションの買い替えには、大きく分けて「売り先行」と「買い先行」があります。
売り先行と買い先行はどのような意味なのか、メリット・デメリット含め紹介します。また、それぞれどのような状況において利用するのが適切なのかを解説します。
売り先行
現在住んでいるマンションを売却した後で新居を購入する方法です。売り先行のメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 売却代金を現在の住宅ローンの返済や新居の購入費に充てられるため、資金計画が立てやすい
- 物件の維持費を2軒分負担しなくて良い
【デメリット】
- 住みながらの売却となるため、内覧への対応など販売活動の負担がかかる
- 売却と購入のタイミングを合わせるのが難しく、仮住まいが必要となる場合もある
売却代金を住宅ローンの返済や新居の購入費に充てることができる点が最大のメリットといえます。また、同時に物件を2つ保有することはないので、維持費の負担がダブルで生じることはありません。
一方、住みながらマンションを売りに出す場合、内覧の調整や準備で負担がかかります。また、売却と購入のタイミングを同時に合わせるのが難しく、時期が空いてしまった場合は仮住まいを挟むため引越しが2回必要になる可能性があります。
売り先行を選択する例
売り先行が適しているのは、以下のようなケースです。
- 売却まである程度の時間を確保できる
- 住宅ローンの残債が多く残っている
- 資金的に余裕がない
たとえば、子どもの独立やマンションの老朽化により買い替えを考える場合は、ある程度前もってスケジュールを立てられるため時間をかけて売却できるでしょう。
売却までに多くの時間をかけられれば、価格に妥協せずに買い手を見つけられる可能性も高くなります。あわせて、資金計画もじっくり考えられるので、売り先行に向いているといえます。
また、よほど預貯金に余裕がある方でなければ、現在返済中の住宅ローンの返済資金や、新居の購入資金が不足してしまうリスクがあるため、先に売却を済ませることによってまとまった資金を得たほうが好都合でしょう。
買い先行
先に新居を購入した後で、現在住んでいるマンションを売却する方法です。買い先行のメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 余裕をもって新居を探すことができる。
- 仮住まいが不要で引越しも1回で済む。
- 人が住んでいない状態で購入希望者を募集できるため、内覧を実施しやすい。
【デメリット】
- マンションが売れない期間中は、2重の維持費や住宅ローンが発生する。
- 正確な売却額が見通せない状態で新居を購入するため、精神的な不安が大きい。
購入に時間をかけられるので、余裕をもって新居を探すことができます。また先に新居を購入するため、仮住まいは不要で引越しも1回で済みます。
そのほかにも、マンションに誰も住んでいない空き家の状態で買主を募集できるので、内覧やスケジュール調整がしやすく、売却には有利になります。
一方、マンションが売れない期間中は、2つの物件の維持費や住宅ローンの支払いが発生します。また、正確な売却額が確定しない状態で新居を購入することになるため、経済的に余裕がない場合は、売却までの間、不安を抱えることになるでしょう。
買い先行を選択する例
買い先行が適しているのは、以下のようなケースです。
- すぐに引越す必要がある
- 新居選びに妥協したくないという要望がある
- 仮住まいになるリスクを防ぎたいという要望がある
たとえば、転勤や転職によって引越す場合は、仕事のスケジュールに左右されることもあり、急いで買い替える必要があるケースが多いでしょう。また、どうしても住みたい家がある場合は、先に物件を確保するのも選択肢です。このように、スケジュール優先の方には買い先行がおすすめです。
ただし、デメリットでお伝えしたようにダブルローンになる可能性もあるため、現在の住まいの住宅ローンを完済していたり預貯金があったりするなど、資金面で余裕がある方におすすめの方法です。
買い先行・売り先行の詳しい手順に関しては、以下の記事で紹介しているので、ご確認ください。
マンション買い替え時にかかる税金は?
マンション買い替え時に生じる税金について、売却時と購入時に分けて解説します。
売却時にかかる税金
マンション売却時にかかる税金は、主に以下の3種類があります。
- 譲渡所得税
- 登録免許税
- 印紙税
このうち、譲渡所得税は売却によって利益が出た際にのみかかる税金で、売却した年の翌年の確定申告で納税します。
不動産の売却価格から経費等を差し引いた利益(課税譲渡所得)に対して課税され、税率は売却した不動産の所有期間によって変わります。
所有期間5年以内の場合は「短期譲渡所得」となり、39.63%。一方、5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、20.315%と大きく減少します。さらに、自宅(居住用財産)を売却するときは、課税譲渡所得から3,000万円の控除ができるなど、買い替えで利益や損失が出た場合に活用できる特例もあります。
登録免許税は不動産の登記申請をする人に対して課税される税金、印紙税は主に不動産の売買契約書を締結する際にかかる税金です。
なお、マンション売却のときの税金は、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
購入時にかかる税金
マンション購入時にかかる税金は、主に以下の4種類があります。
- 消費税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
登録免許税と印紙税は前述した通りの税金ですので、ここでは消費税と不動産取得税について説明します。
消費税
消費税は、建物部分に対してのみかかります(土地部分は非課税)。ただし、中古住宅などで売主が個人の場合、消費税はかかりません。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得したときに必ずかかる税金であり、原則として「固定資産税評価額×4%」で算出されます。ただし、2024年3月末までは、特例措置によって住宅および住宅用地にかかる税率のみ3%に軽減され、マンションも対象となります。
また、宅地の課税標準額を固定資産税評価額の1/2にしたり、住宅の取得時には課税標準額から1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)控除したりする特例もあります。
マンションを買い替えたいが、ローンが残っていても大丈夫?
マンションの住宅ローンが残っている状態でも買い替えは可能です。
ただし、ローンの残債がマンションの売却価格を下回っている「アンダーローン」と、反対にローンの残債がマンションの売却価格を上回っている「オーバーローン」では、方法が異なります。
アンダーローンの場合は、マンションの売却代金によって住宅ローンの残債を返済することができます。一方、オーバーローンの場合は、資金が足りない分を預貯金によって補填するか、住み替えローンを活用して資金調達するなどの手段を考える必要があります。
なお、ローン残債がある場合にマンションを売却する方法については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
マンション買い替えを成功させる4つのコツ
それでは、マンションの買い替えを成功させるポイントは何でしょうか。この章では4つのコツについて解説します。
コツ1:具体的な資金計画を立てる
家の売却や購入には大きな労力とお金がかかるため、具体的な資金計画を考えたうえで進めることが重要です。
資金計画を考えるときは、住み替えのタイミングをいつにするか、目標を明確にするとともに、売却価格や自己資金の目安、住宅ローンの残債をしっかりと確認しておきましょう。
コツ2:住み替え先選びは慎重に
住み替え先にどのような物件を選ぶかどうかで先々のライフスタイルが変わるため、慎重に選ぶようにしましょう。
物件を選ぶ際は、価格や周辺環境、建物の設備などさまざまなポイントがありますが、すべて自分の希望に一致する物件は簡単には見つけられません。
まずは目標とするライフスタイルを実現するために、重要視するポイントは何かを考え、優先順位をつけてから物件探しに移ることをおすすめします。
コツ3:自分の状況にあった住み替えの方法を選択する
資金計画を踏まえ、自分の状況や希望に応じて住み替え方法を選ぶことも大切です。
たとえばすぐに引越しをしたい場合は買い先行、資金的な余裕があまりない場合は売り先行にするなど、優先する条件を考えるようにしましょう。
また、買い替え特例、譲渡所得の特別控除など、特例制度を上手に活用することも重要なポイントです。
コツ4:信頼できる専門家や業者を上手に頼る
住み替え時には専門的な知識が必要になるため、自分だけでは判断が難しいケースもあります。そのため、信頼のおける不動産会社や金融機関、税理士、司法書士などさまざまな専門家を上手に活用することも大切です。
事前準備をして納得のいく住み替えを
マンションの買い替えは、置かれた環境によって適切な方法を考えていかなければなりません。
実際に買い替えをする際には、タイミング、買い先行か売り先行か、売却するマンションの価格、購入したい物件の価格、住宅ローンの有無、税金の額など、さまざまな観点から検討する必要があります。
納得のいく住み替えをするために、上にあげたコツをもとに、しっかりと事前準備をして進めるようにしましょう。
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※個別事案については、専門家へのご相談をお勧めします。