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不動産を相続したものの「どのように遺産分割すればいいの?」「査定は必要なの?」と、悩んでいる方も多いでしょう。
不動産を相続した際は、まず査定を依頼して、不動産の価値を明確にする必要があります。
そこで、ここでは不動産査定が必要な理由や、具体的な依頼方法、注意点などを解説します。相続が発生した方や、今後相続が発生する可能性がある方は、ぜひ参考にしてください。
相続する不動産の査定が必要な理由
相続した不動産の査定が必要な理由は、以下の2つです。
- 相続する不動産の適正な価値を知るため
- 遺産分割協議をスムーズに行うため
それぞれについて、詳しく解説します。
相続する不動産の適正な価値を知るため
不動産の価値は市況や社会的要因で変わるため、相続した時点で適正な時価を把握する必要があります。対象不動産の現在の価値がわかれば、いくらの相続税が課されるのかが明確になるため、今後の資金計画を立てやすくなります。
売却を検討する際も譲渡所得税の目安を算出できるので、「不動産を相続するならまずは査定」と覚えておきましょう。
なお、不動産の築年数や立地条件、権利関係によっては、必ずしもプラスの資産になるとは限りません。たとえば、団体信用生命保険に加入していない状態でローンを組んでいた場合、ローンの残債が残っている可能性があります。
また、将来的な使い道がない場合、相続しても毎年固定資産税の支払いや管理に追われる可能性があるでしょう。場合によっては、相続放棄や限定承認などの手段を検討する必要があるため、適正な価値を把握しておくことが大切です。
遺産分割協議をスムーズに行うため
相続人が複数いる場合、遺産を分割する必要がありますが、不動産は金銭と違いそのままの状態では分割できません。
詳しくは後述しますが、「不動産を売却した資金をもとに分割をする」「1人の相続人が不動産を相続して代償金を支払う」といった方法で分割する必要があります。その際、明確な根拠に基づいた不動産の価値が分からなければ、公平な分割ができず、トラブルに発展してしまうでしょう。
査定をして相続不動産の金銭的価値を正しく把握することで、遺産分割協議を円滑に進められます。
相続する不動産を査定する方法
不動産の査定は類似物件の事例などを検索して、自分で目安の金額を算出することもできますが、査定額の正確性・精度の面からおすすめできません。
また、自分の査定では遺産分割協議にも活用できないため、不動産会社もしくは不動産鑑定士へ依頼しましょう。それぞれの違いや依頼方法について解説します。
不動産会社に査定を依頼する
相続した不動産の売却を検討している場合、不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。不動産会社による査定は、営業活動の一環であるため、無料で行ってもらえます。
査定にはいくつかの種類があります。詳しくは以下の表を参考にしてください。
査定の種類 | 特徴 |
---|---|
AI査定 | ・24時間いつでも査定を依頼できる ・匿名で利用できるサービスもある ・査定の精度があまり高くない |
簡易査定 | ・過去の取引事例などをもとに机上で査定をする方法 ・査定を依頼してから3営業日ほどで結果がわかる ・不動産会社の担当者に会わずに査定できる ・訪問査定に比べると精度が低い |
訪問査定 | ・不動産会社の担当者が実際に不動産を見て査定する方法 ・担当者との日程調整が必要になる ・査定の精度が高い |
相続に用いる場合、より精度の高い訪問査定の利用を基本に考えましょう。どうしても日程が合わない場合や賃借人がいて室内を確認できない場合は、簡易査定を依頼しても良いかもしれません。
なお、不動産会社に査定を依頼する際は、複数の不動産会社に依頼するのがおすすめです。
不動産会社によって査定価格は異なるため、複数社の査定価格をもとに相場を把握しましょう。
ただし、不動産会社による査定は、裁判などで用いる公的な資料とはならない点に注意が必要です。
不動産鑑定士に査定を依頼する
不動産鑑定士は国家資格であり、不動産の鑑定評価を専門に行う職種です。不動産会社による査定を「不動産査定」、不動産鑑定士による査定を「不動産鑑定」と呼びます。
不動産鑑定士による査定は有料ですが、法的な効力を持つことが特徴です。仮に遺産分割協議で揉めてしまった際は、裁判所に提出する公的な資料として活用できます。
不動産鑑定にかかる費用は、不動産の価格によって変動するのが一般的です。少なくとも20万円程度の費用がかかると考えておきましょう。
また、不動産鑑定書の作成には概ね2週間程度の期間がかかります。調査が必要な場合は1か月程度の期間がかかることもあるため、相続が発生した時点で早めに相談しておくのがおすすめです。
相続の分割方法から考える不動産査定(の必要有無)
相続する不動産を査定する目的や依頼方法がわかったところで、分割方法に応じた査定の必要性について紹介します。
まず、相続財産を分割する方法は、以下の4つに分けられます。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有分割
相続人の数や不動産の状態などによって、最適な分割方法は異なります。各分割方法の特徴について紹介するので、どの分割方法にすべきか相続人全員で話し合ってみましょう。
現物分割
現物分割とは、それぞれの相続財産を各相続人が相続する方法です。たとえば、現金(預金)・株式・不動産といった相続財産がある場合、以下のように分割します。
- 妻:不動産
- 長男:預金
- 長女:株式
現物分割する場合、資産の厳密な評価は必要ありません。各相続人が互いに納得さえすれば、スムーズに分割できます。
また、土地の場合は分筆(1つの土地を複数の土地に分けること)が可能なため、300平方メートルの土地を100平方メートずつ、3人の相続人で相続するといった方法も可能です。その際、必要な手続きは分筆登記と所有権移転登記のみです。
ただし、現物分割は不公平な相続になってしまう場合もあります。以下のようなトラブルが生じる可能性がある点に注意しましょう。
- 預金や株式、不動産の価格が大きく異なる場合
- 土地をうまく分筆できない場合
- 建物があり物理的に分割できない場合
特に、資産の額が大きいケースでは、公平性に欠ける現物分割に納得しない相続人もいるでしょう。
また、土地は必ずしも整形地とは限りません。敷地延長の土地など、不整形地は分筆できない可能性があるため、その場合はほかの分割方法を検討する必要があります。建物がある場合も同様です。
代償分割
代償分割とは、はじめに1人の相続人が不動産をすべて相続し、その後、相続した人がほかの相続人に対して、不動産の額に相当する金銭やほかの財産を提供する分割方法です。
たとえば、3人の相続人のうち1人が3,000万円の不動産を相続した場合、残りの相続人には1,000万円ずつ別の資産を提供します。代償分割は、各相続人が同等の資産を相続することになるため、トラブルが発生しにくいことが特徴です。
ただし、代償分割は代表して不動産を相続する人に、ほかの相続人に支払えるだけの資産がなければ成立しません。また、正確な不動産の価値を判断するためにも、不動産の査定が必要になります。
換価分割
換価分割とは、相続で取得した不動産を売却し、売却して得た資金を相続人で分割する方法です。最終的に現金での分割になるため、相続人同士で公平に分けられる特徴があります。
換価分割が用いられるのは、以下のような場合です。
- 将来的に不動産を使う予定がない
- 築年数が経過しており早めに処分したい
- 相続人同士で揉めたくない
換価分割を行う場合、売却前提での分割になるため、早い段階で査定を依頼し、各相続人がいくらの財産を相続できるかを明確にしておくのがおすすめです。ただし、不動産の売却は必ずしも査定価格で売れる訳ではない点に注意しましょう。
また、中古不動産の売買では、買主から価格交渉を受けることも多く、当初想定していた価格よりも低い価格での売却となるケースがあります。
そこでおすすめなのが、不動産の買取です。不動産の買取とは、不動産会社が直接不動産を購入する取引形態です。仲介で売却するときと違い、不動産会社が提示した価格での取引となるため、スムーズかつ希望の金額で売却できます。
不動産の売却は相続人全員の同意が必要になるので、事前に相続人同士で話し合っておくことをおすすめします。
共有分割
共有分割とは、相続人全員の共有名義にして不動産を相続する方法です。たとえば、妻と長男、長女で相続した場合、以下のようになります。
- 妻:1/2
- 長男:1/4
- 長女:1/4
手続きは所有権移転登記のみであるため、手軽に遺産分割を済ませられますが、所有権が煩雑になるため後々トラブルになる可能性もあります。
たとえば、共有名義人のどなたかが亡くなった場合、さらに相続が発生して共有名義人の数が増えます。最終的に会ったこともない遠い親族と共有名義になることも少なくありません。また、不動産を売却する際は、共有名義人全員の同意が必要になるため、手続きがスムーズに進まない恐れがあるのです。
共有分割を行う場合、不動産の査定は必要ありません。ただし、不動産のほかにも資産がある場合は公平性を保つために査定を依頼しておくのがおすすめです。
相続した不動産を査定するにあたっての注意点
最後に、相続した不動産を査定するにあたっての注意点を2つお伝えします。
- 査定を依頼するタイミング
- 不動産にローンが残っているかの確認
それぞれについて見ていきましょう。
査定を依頼するタイミング
相続が発生したら、なるべく早いタイミングで査定を依頼しましょう。相続が発生してから10か月以内に、相続税の申告・納付をしなければならないためです。相続財産が不明瞭だと、相続税を把握できなくなり、今後の計画に支障が出てしまいます。
また、不動産の売却には時間がかかるため、相続税の金額次第では、納付のタイミングまで現金化しておく必要があります。
前述の通り、査定額はあくまでも売却見込み価格であり、必ず査定額で売れるとは限りません。査定額がそのまま売却額になる、不動産買取会社にも査定を依頼しておくと良いでしょう。
不動産にローンが残っているかの確認
不動産を相続したら、その不動産にローンが残っているかどうかを確認しましょう。ローンの残債がある場合は、査定額から残債を差し引いた金額が評価資産として扱われます。
なお、残債が査定額を上回る「オーバーローン」の状態の場合、売却資金だけではローンを完済できないため、自己資金で補填する必要があります。
なお、新たに不動産を購入する予定であれば、住み替えローンや買い替えローンで補填する手段もあるため、不動産会社や金融機関に相談してみるのがおすすめです。
補填する手段がない場合は、相続放棄を行う、もしくは「任意売却」の手段を取る必要があります。任意売却とは、金融機関の同意を得て残債のある不動産を売却する方法です。任意売却後に残ったローンは、支払金額を調整のうえ、返済を続けることになります。
相続不動産は査定をして適正な価値を知ろう
この記事では、不動産査定が必要な理由や具体的な依頼方法、注意点などを解説しました。相続が発生した際は、相続する不動産の適正な価値を把握し、遺産分割協議をスムーズに行うために、できるだけ早く査定を依頼しましょう。
不動産会社による無料査定と、不動産鑑定士による有料査定がありますが、通常は無料査定で問題ありません。査定の結果を踏まえて、分割方法を考えるのも良いでしょう。
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