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定年を迎えた後も仕事を続ける方は、近年増加傾向にあります。
総務省統計局「労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果」(※1)によると、65歳以上で定年後も仕事をしている方の割合は、男性が35.0%、女性が19.3%です。男性の約3人に1人、女性は約5人に1人が定年後も働いている状況です。
ここでは、定年後の仕事探しについて、3つの選択肢やチェックポイント、タイプ別の選び方、成功させるコツなどについて解説します。
・定年後の仕事の3つの選択肢
・ニーズに合わせた仕事の選び方
・定年後の仕事選びを成功させるコツ
定年後の仕事には選択肢が3つ
定年後に働く場合の主な選択肢としては、次の3つが挙げられます。
- 現在の会社で働く
- 新たな職場で再就職する
- フリーランス・個人事業主として働く
それぞれ見ていきましょう。
現在の会社で働く
多くの企業では、定年後も働き続けられるよう「再雇用制度」や「勤務延長制度」が設けられています。
長く勤めてきた会社で働き続けられれば、転職活動を行う必要がなく、時間や精神的な負担をかけずに済みます。また、業務内容や職場環境に慣れた状態で仕事を続けられることもメリットです。
雇用契約を継続することで厚生年金保険にも引き続き加入できるため、将来受け取る老齢厚生年金の受給額が増え、老後資金の形成にもつながります。
令和3年4月からの高年齢者雇用安定法の改正により、企業には70歳までの定年の引上げなど就業機会を確保する努力義務が課されており、定年後も同じ会社で働く選択肢は、制度上広がりつつあります。
再雇用制度
再雇用制度とは、いったん定年退職をした後に、改めて雇用契約を結ぶ制度です。雇用契約は1年ごとの更新となるケースが多いですが、企業により異なります。
なお、再雇用制度では、定年前と同一の雇用形態や勤務条件が適用されるわけではなく、正社員であった方でも再雇用後はパートや嘱託といった雇用形態になるのが一般的です。
現役時代と比べて賃金が下がることや、役職を離れて業務にあたることなど、立場の変化が生じる場合もあることを認識しておきましょう。
なお、現役時代と業務内容などが変わらないにもかかわらず賃金が著しく低く設定されることは法律上認められておらず、一定の水準は確保される仕組みとなっています。
勤務延長制度
勤務延長制度は、定年後も雇用契約を終了させず、そのまま継続して働く制度です。基本的に雇用形態は変わらないため、正社員だった方は引き続き正社員として雇用されるケースが多いです。
再雇用制度と比べ、賃金や勤務条件が大きく変動しないため、生活の急激な変化を抑えられるでしょう。勤務延長制度は業務内容や職場環境が定年前と近い形で継続されることが多く、制度としては「定年を延ばす」イメージに近いと言えます。
新たな職場で再就職する
定年後は、アルバイトやパート、あるいは正社員として新たな職場に再就職するという選択肢もあります。現在の会社を離れて未経験分野へ挑戦することは、定年後も社会との関わりを持ち続けたい方にとって、これまでにない新鮮なキャリア形成の機会となるでしょう。
知人や従来の人脈を通じて再就職先が見つかる場合は、信頼関係という土台がすでにあるため、一般的な公募に比べて採用に至るまでのハードルが低いです。
一方で、一般的な求人応募の場合は、年齢的な理由や未経験分野への挑戦といった条件面などから、ハードルが高くなるケースも少なくありません。
とくに、60代以降は正規雇用の割合が低下する傾向にあります。正社員に限定せず、パートやアルバイトなど柔軟な雇用形態も含めて検討することで、選択肢を広げやすくなるでしょう。
画像引用:第2節 高齢期の暮らしの動向|令和7年版 高齢社会白書
フリーランス・個人事業主として働く
専門的な知識やスキル、経験をもつ方は、定年後に独立してフリーランスや個人事業主として働くという選択肢もあります。
日本政策金融公庫が公開している「2025年度新規開業実態調査~アンケート結果の概要~」によると、開業時の年齢が最も高いのは40歳代ですが、50歳代が21.8%と3番目に多く、60歳代でも6.4%となっています。(※3)
フリーランスや個人事業主は、働く時間や場所を比較的柔軟に調整しやすいのがメリットです。一方、会社員のように毎月決まった収入が保証されるわけではなく、営業力や実績に左右される傾向があります。
そのため、定年後に独立を検討する場合は、在職中から取引先との関係づくりや仕事の基盤を整えておくことが重要です。
定年後の仕事を選ぶ際のチェックポイント
定年後の仕事選びの際には、次の3つの点を十分に確認すると、自分に適した職場を選びやすくなります。
- 無理なく働けるか
- 老後に必要な資金の確保が見込めるか
- やりがいを感じられそうか
仕事選びで後悔しないよう、詳しく確認していきましょう。
無理なく働けるか
定年後の仕事を考える際は、まず「今後の生活の中で無理なく続けられるか」という視点をもつことが大切です。現役時代とは生活リズムや身体的な状況が変わることが多く、これまでと同じ働き方が負担になるケースも少なくないためです。
通勤時間や勤務日数、拘束時間などを含めて、自分のライフプランに合った働き方かどうかを確認しておくと、長く安定して仕事を続けやすくなるでしょう。
収入はもちろん大切な要素の一つですが、日々の生活とのバランスを意識しながら仕事を選ぶことが、定年後の働き方を考えるうえでの重要なポイントとなります。
老後に必要な資金の確保が見込めるか
定年後の働き方は、老後の生活費を貯蓄や年金でカバーできるかを検討して決めることも大切です。現在の貯蓄が十分でない場合や年金だけで生活できるか不安な場合などは、働ける間に老後資金を準備すると安心感が増します。
統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の無職夫婦世帯では、毎月約3万4,000円の生活費が不足しています(※4)。
画像出典:統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」
85歳までの20年間では816万円の赤字に、90歳までの25年間では1,020万円の赤字になる計算です。
人生100年時代といわれる今、老後資金3,000万円以上が必要ともいわれています。以前は「2,000万円が不足する」という試算がありましたが、インフレの影響や、より豊かな老後生活を送ることを考慮すると、3,000万円ほど必要になるという計算です。
そのため、貯蓄状況や年金収入を踏まえたうえで不足が見込まれる場合は、収入面を意識した働き方を検討することが望ましいでしょう。
やりがいを感じられそうか
定年後の仕事選びでは、収入や勤務時間といった条件面だけでなく、自分がやりがいを感じ、納得感をもって働けるかどうかを意識することも大切です。
定年後は、現役時代と比べて、仕事を通じた社会との関わり方や役割が変わる方も少なくありません。同時に、働く意義が「お金のため」から「承認欲求」や「価値ある時間を過ごすこと」などに変化する傾向があります。
たとえば、人と接することで誰かの役に立てることに喜びを感じる方もいれば、一人で黙々と作業し、その結果を通じて社会に貢献できることに価値を見出す方も少なくありません。
これまでの仕事経験を振り返り、自分がどのようなときにやりがいを感じるのかをあらかじめ整理しておくと良いでしょう。
【タイプ別】定年後の仕事の選び方
定年後の仕事は、どのようなワークスタイルを希望するかで選び方が異なります。
主な4つのタイプ別に、仕事の選び方のポイントを解説していきます。
- 人間関係や業務を変えずに、慣れた環境で働き続けたい人
- 収入額や働き方の選択肢を重視したい人
- 自分のペースで無理なく働きたい人
- キャリアを活かして仕事を続けたい人
人間関係や業務を変えずに、慣れた環境で働き続けたい人
定年後も、可能な限り人間関係や業務内容を変えずに働き続けたい方には、「再雇用制度」や「勤務延長制度」の活用がおすすめです。新しい職場に適応したり、通勤や生活リズムを大きく変えずに済むため、精神的・肉体的な負担を抑えて働き続けることが可能です。
この選択肢を検討する場合は、現在の会社で利用できる制度の内容をあらかじめ確認しておきましょう。
また、再雇用制度では、給与が従来よりも減額になることや、1年契約になることが多いことなどを理解する必要があります。
勤務延長制度では、体力面で現役時代のように対応できなくなる可能性があることや、退職金の支給が遅くなるなどの注意点があります。
収入額や働き方の選択肢を重視したい人
定年後も収入を重視しながら自分に合った働き方を選びたい方には、シニア向けの求人情報サイトを活用して仕事を探す方法が向いています。
求人サイトでは、時給や勤務日数、雇用形態などの条件を比較しながら選べるため、「どのくらい働いて、どのくらい稼ぎたいか」を調整しやすいです。
実際に企業では、非正規雇用のシニア層を採用する意向は高く、とくに警備・清掃・配送などの分野では求人が多い傾向があります(※5)。
正社員にこだわらず複数の選択肢をもつことで、自分のライフスタイルに合った収入バランスを見つけやすくなるでしょう。
ただし、定年後も働きながら厚生年金を受け取る場合、給与額によっては「在職老齢年金」により年金の一部が支給停止となるケースがあります。(※6)2026年4月からは、月収と年金月額の合計が62万円を超えると支給停止の対象になります。
収入を重視して働く場合は、「いくら働くと、年金はいくら減るのか」といった点も含めて確認しておくと、後悔のない選択につながるでしょう。
自分のペースで無理なく働きたい人
定年後は、収入よりも体力や生活リズムを重視し、無理のないペースで働きたいと考える方も少なくありません。そういった場合は、前述した現在の職場での再雇用制度に加え、勤務時間や日数を抑えた仕事を選ぶことが一つの選択肢となります。
具体的には、各市区町村に設置されているシルバー人材センターを活用する方法があります。シルバー人材センターは、地域に密着した軽作業や短時間の仕事が中心となっており、体力的な負担を抑えながら社会とのつながりを持ち続けやすいという点がメリットです。
仮に1か月に8〜10日就業した場合の収入は、月額3〜5万円程度と比較的抑えめになるものの、生活のリズムを崩さずに働ける点や、生きがいを感じながら仕事ができる点が魅力です。
年金受給額を具体的にシミュレーションし、月5万円程の追加収入があれば生活費がまかなえるようであれば、検討する価値があると言えるでしょう。
また、無理のないペースで働くためには、毎月の収入を増やすだけでなく、生活全体を見直して「働かなくても成り立つ余裕」をつくるという考え方もあります。
たとえば、保険料や通信費といった固定費を一度見直せば、節約効果が長く続き、無理なく支出を抑えることができます。また、自家用車や持ち家を売却して生活費の補填や老後資金に充てるというのも一つの選択肢です。こうした工夫によって毎月の生活費にゆとりが生まれれば、働く時間や日数に縛られない、より自分のペースを大切にした働き方を選びやすくなるでしょう。
キャリアを活かして仕事を続けたい人
これまでの経験や専門性を活かし、定年後も仕事の内容や役割にやりがいを求めたい方には、キャリアを軸にした働き方が選択肢となります。具体的には、現役時代と同様の分野への転職や、知識・スキルを活かしてフリーランス、個人事業主として起業する方法などがあります。
定年後の転職は、条件面で調整が必要になるケースもありますが、資格や実務経験がある分野であれば、年齢に関わらず活躍できる場が見つかる可能性があるでしょう。
アドバイザーや顧問などで客観的な立場からの助言をしたり、得意分野の専門職としてプロジェクトに参加したりする方法があります。また、社会保険労務士や行政書士といった士業の資格があれば、事務所を開設して本格的に事業を開始できます。
定年後の仕事探しを成功させるコツ
定年後に納得できる仕事を探すためには、次の2つのコツを押さえることがポイントです。
- 早い段階から求人を探しておく
- 自分のもつ強みやスキルを棚卸ししておく
早い段階から求人を探しておく
定年後もスムーズに仕事を続けたい場合は、できるだけ早い段階から仕事探しを始めておくことをおすすめします。
定年を迎えてから求人を探し始めると、希望条件に合う仕事が見つからなかったり、不採用が続いたりして、想像以上に時間がかかることがあります。
いつまでも仕事が決まらず焦りや不安が強くなると、「とりあえず働けそう」という理由だけで仕事を選んでしまいがちです。そうして選んだ仕事が自分に合わなかったり、やりがいを持てなかったりした場合、出勤することが苦痛になりかねません。
現役のうちから求人情報をチェックしたり、職業紹介サービスに登録したりすることで、時間的・精神的に余裕を持った仕事選びがしやすくなります。
自分のもつ強みやスキルを棚卸ししておく
定年後の仕事探しを成功させるためには、これまでの経験やスキルを整理し、自分の強みや適性を把握しておくことが重要です。
専門的な知識や資格だけでなく、マネジメント経験や対人調整力、長年の業務経験なども立派な武器となり得ます。こういった強みは自分では気づきにくいものですが、企業側に高く評価されることも少なくありません。
過去の業務内容や取得資格を書き出し、活用できる場面を整理しておくことで、応募できる仕事の選択肢が明確になります。あわせて、勤務条件面の優先順位も考えておくと、仕事選びがスムーズに進みやすくなるでしょう。
まとめ
定年後の働き方には、「現在の会社で働き続ける」「新たな職場で再就職する」「フリーランス・個人事業主として働く」といった選択肢があります。それぞれの働き方には特徴があるため、体力や生活スタイル、老後資金の状況などを踏まえながら、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
また、定年後の働き方を考える際には、「収入を増やすこと」だけでなく、生活全体を見直してゆとりをつくるという視点から考えてみるのも一つの方法です。
たとえば、保険料や通信費などの固定費を見直して生活費を削減するほか、自家用車や持ち家を売却して老後資金を確保することが考えられます。
こうした選択肢も視野に入れながら無理のない働き方を考えていくことが、定年後の安心した暮らしにつながるといえるでしょう。
(※1)労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)平均結果
(※2)高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~|厚生労働省
(※3)「2025年度新規開業実態調査」|日本政策金融公庫
(※4)統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」
(※5)非正規雇用の外国人・シニア採用に関する企業調査(2025年) | マイナビキャリアリサーチLab
(※6)在職老齢年金制度の見直しについて|厚生労働省
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