太陽光発電は災害時に使えない?導入によって得られる4つの安心を紹介

2024.08.26

大規模な災害には停電がつきものです。たとえば、2011年の東日本大震災では東北地方で約466万戸が停電しました。8日後には94%が解消したものの、完全な復旧には約3か月がかかりました。(※)

停電が起きると、冷暖房や冷蔵庫、照明器具、通信機器など、生活の維持にかかせない電化製品が使用できなくなります。そのため、自宅の建物自体に損傷がなくても、停電を理由に避難するケースも少なくありません。

そこで活用したいのが、太陽光発電です。自宅で発電する太陽光発電で自立運転が可能な機種であれば、災害により電力会社が電気を供給できなくなり停電しているときでも、電化製品の使用を継続することが可能です。

しかし、「災害時には太陽光発電は使えないのでは」という不安から、万が一の備えとして設置すべきか悩まれる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、災害時に使えないと言われている理由や、災害時と平常時それぞれにおける太陽光発電のメリットについて紹介します。 

太陽光発電は災害時に使えない?

災害対策として効果的な太陽光発電ですが、以下を注意しないと「使えない」という状況になりえるため注意が必要です。

  • 自立運転モードに切り替えないと使えない
  • 電気が1,500Wまで・100Vの家電製品しか使えない
  • 太陽が出ていない時間帯は使えない

それぞれ見ていきましょう。

自立運転モードに切り替えないと使えない

停電時に太陽光発電を利用する際には、パワーコンディショナーを「自立運転モード」に切り替える必要があります。

パワーコンディショナーとは、太陽光発電で発電した電気を、家庭で使える状態に変換する設備です。このパワーコンディショナーは普段、外部の電力によって稼働していますが、自立運転モードに切り替えることで、太陽光発電の電力だけで稼働することが可能になります。

停電して外部の電力が使えなくなった際には、この自立運転モードへの切り替えをしないと、太陽光発電を利用できません。この切り替えの操作は、平時には行うことがないため、いざ災害が発生したときに操作方法が分からず、「太陽光発電を使えない」という事態に陥るケースがあります。あらかじめ取扱説明書で操作方法を確認しておくことが重要です。

災害時に使えなかったといわれる機器類は、操作方法を知らなかったり、誤った手順で操作してしまったために、機能はあったのに作動しなかったという事例が多くみられます。普段から操作して確かめておきましょう。

電気が1,500Wまで・100Vの家電製品しか使えない

自立運転モードに切り替えても、普段どおり無条件で電気が使えるわけではないという点にも注意が必要です。

自立運転モードでは、一般的に、一度につなぐことのできる家電製品が1,500Wまでと上限を設けられています。これは、太陽光発電は日照の状況に発電量を左右されるため、安定した電力供給となるように抑えられていることと、一般的な家庭用コンセントの容量が1,500Wとなっているためです。

複数の家電製品を自立運転用コンセントに差す場合には、合計の消費電力が1500Wを超えないように注意して利用しましょう。たとえば、200Wの冷蔵庫をつないだ状態で800Wの電気ポットと1,000Wのドライヤーを同時に使うことはできないのです。

消費電力は機器により異なります。また稼働中の消費電力も状態によって変わるため、取扱説明書などを見て使用できる範囲を確かめておきましょう。

また、電圧にも上限があります。通常100Vまでとされ、200Vの規格の家電製品は使うことができません。たとえ自立運転用コンセントにプラグが届いたとしても、200V規格の電子レンジやエアコン、IH調理家電などは利用しないなどの注意が必要です。

停電時にも200Vの家電製品を使用したい場合や、使用可能なコンセントかどうかを気にせず普段どおりに電力を使用したい場合は、太陽光発電と併用して、全負荷型(対応する範囲が家屋全体)の蓄電池を導入することをおすすめします。

太陽が出ていない時間帯は使えない

太陽光発電は太陽の光を電気に変える発電ですから、太陽が出ない間は発電できません。夜間はもちろん、雨天や曇りの場合も発電量が不足する場合があります。

昼夜や天候によらず安定して電力を使用したい場合は、太陽光発電でつくった電気を蓄える蓄電池を備えて、併用しましょう

蓄電池を導入すれば、日中の晴天時に発電した電気をためておき、夜間や悪天候時には蓄電池から電力を供給するサイクルにより、24時間の電力使用が可能です。

太陽光発電と蓄電池をうまく併用すれば、使用可能な時間帯の制限がなくなるだけでなく、一度に利用できる電力量や利用できる場所の不自由さも解消される可能性が高まります。

災害時に太陽光発電を使える4つの安心

災害時に太陽光発電が使える主なメリットとしては、以下の4点が挙げられます。

  • 家族や友人に連絡ができる
  • 防災情報を継続的に入手できる
  • 長期間、食べ物の確保ができる
  • 暑さ・寒さの対策ができる

それぞれ見ていきましょう。

家族や友人に連絡ができる

災害時には通信状況が悪くなり、連絡がつきにくくなることが珍しくありません。とくに、家族が別々の場所にいる際に地震が起きた場合、連絡を取り合えないと、安否の確認はもちろん、落ち合う場所を決めることも難しくなります。

また、停電により充電できない状況で家族の安否確認などを続けていると、早々にバッテリーが切れてしまい、状況が変わったときにお互いの様子を伝え合う手段がなくなってしまいます。太陽光発電で電源を確保すれば、電話やスマートフォンなどを使った連絡を、充電状態を気にせず行うことができます。互いの安否や対応状況を確かめあい安心感を得ることで、災害時の心理的な負荷を少しでも下げることができます。。

防災情報を継続的に入手できる

災害発生直後は、刻々と状況が変化していきます。また、SNSなどで誤情報やデマも流れやすくなるでしょう。国や自治体、ライフライン企業など公的機関の公式サイトでは信頼性の高い情報が公表されますが、SNSやテレビ報道とでは時間がずれることもあります。災害時には、流れてくる情報の特性をふまえつつ、冷静に状況判断していくことが重要です。

太陽光発電で電気が安定して使えると、警報や避難指示などの警戒情報や、救助・物資の支援状況、ライフラインの被災と復旧状況などの情報を、テレビやラジオ、ウェブサイト、スマートフォンアプリなどから、機器の充電の残量を気にせず継続的に収集できます

長期間、食べ物の確保ができる

大規模な災害では物流も止まるため、家庭にある食料品は貴重な備蓄となります。ところが停電で冷蔵庫が使えなくなると、冷凍食品は溶けてしまい、冷蔵食品は腐ってしまうなど、せっかくの食料を使い切れず捨てることになりかねません。とくに大雨や台風シーズンなど気温の高い時期には、腐敗した匂いや衛生問題に悩まされることも多くなるでしょう。停電時に安定して電力が使えると、こうした問題が解消します。

また、ほかの調理家電も使えるため、調理の選択肢も増えます。とくに、乳児の離乳食や高齢者の介護食、アレルギー対応食などの特殊な食事は、確保が難しい場合もあるため、自力で調理できるメリットは大きいといえます。

暑さ・寒さの対策ができる

近年は、気候変動の影響により、猛暑や酷寒など極端な気象状況になることも増えています。とくに夏季の熱中症や冬季のヒートショックなど、寒暖差のある居住環境が生命の危険に直結する場合も少なくありません。

停電時に太陽光発電によって電力供給がなされると、扇風機やヒーターなどの冷暖房器具が使用できます。蓄電池を併用した家屋全体での電力供給を行う仕組みにすればエアコンも利用することができ、生活の維持がより確実なものとなります

とくに夏から秋にかけての暑い時期に、大雨による浸水や土砂災害などが発生しやすく、炎天下での避難生活となり、熱中症の被害が拡大するケースも目立っており、冷房対策は重要課題になっています。

災害時だけじゃない太陽光発電のメリット


ここまで災害での停電時に太陽光発電を利用する利点をみてきましたが、太陽光発電は平常時にも以下のようなメリットがあります。

  • 電気代を抑えられる
  • 環境保全に貢献できる
  • 断熱効果が期待できる

順番に見ていきましょう。

電気代を抑えられる

太陽光発電を導入すると、電気を太陽光発電でまかなうことになるため、毎月の電気代を抑えることができます

近年、世界的な燃料の高騰により、電気代は値上がり傾向です。2023年1月からは国の緩和事業によって調整されましたが、これも2024年5月で終了し、以降はふたたび上昇傾向にあります。太陽光発電により自力で発電していれば、このような商業電力の価格変動の影響を最小限に抑えることが可能です。

環境保全に貢献できる

太陽光発電は、地球温暖化の要因となる二酸化炭素を排出しない自然エネルギーです。

日本の電力は、二酸化炭素を排出する化石燃料(石炭、天然ガス、石油など)による発電の割合が高い状態が続いています。経済産業省がまとめたエネルギー需要実績(2022年度確報)によると、発電電力量に対する再生可能エネルギー(太陽光、水力、風力、地熱、バイオマスによる発電)の割合はわずか2割あまり(21.7%)にとどまっている状況です。

二酸化炭素排出を排出しない太陽光発電であれば、生活水準を下げることなく、環境保全に貢献することができます。

断熱効果が期待できる

太陽光発電は、太陽光をエネルギーに変えるため集光パネルを設置します。家屋の場合、最も良く日光が当たる屋根に設置するのが一般的です。太陽光パネルで熱も受け止めるため、家屋の断熱効果が高まります。

その結果、夏季には屋根の温度が上がりにくくなって室内の冷房が効きやすくなり、冬季は室内の温かい空気が逃げにくくなって暖房効率が上がります

このように断熱効果の高い家屋の場合、室内が適温に保たれやすくなって冷暖房の稼働を抑えることができ、節電効果も高まるのです。

災害時に備えて太陽光発電の導入を検討しよう

太陽光発電を導入すれば、災害時に停電しても電気を使うことができます。家族の安否確認や情報収集、食べ物の確保、住環境の維持などが可能になるため、被災生活を乗り切りやすくなるでしょう。

一部では「太陽光発電を導入したものの、災害時に使えなかった」という口コミもみられますが、主な原因には、自動運転モードへの切り替え方法が分からなかったなどが挙げられます。平時には使うことのない機能のため見落としがちですが、あらかじめ確認し、いざというときに操作できるようにしておくことが重要です。

また、太陽光発電には災害時だけでなく、平時においても、電気代の節約や、環境保全、断熱効果といったメリットがあります。

東京ガスや提携する施工会社では、豊富な施工実績をもとに、生活状況や家族構成に応じた適切な太陽光発電の設置・運用、蓄電池を組み合わせたシステムや導入を応援する補助制度など、最新の動向も踏まえて提案します。お気軽にご相談ください。 

(※)参考資料:
3月11日の地震により東北電力で発生した広域停電の概要|経済産業省提供資料

南部 優子

執筆者

南部 優子

防災士。2008年より、研究機関と共同で、内閣府をはじめとする国や自治体のほか、インフラ企業などを対象に、防災に関する調査分析、防災計画・事業継続計画(BCP)の策定、各種マニュアル作成、防災訓練・研修の企画運営、講師、ファシリテーターを歴任。
現在は、フリーの防災ライター&ファシリテーターとして防災力を養うための人材育成に力を入れ、地域住民を対象とした講座、研修、ワークショップも多数実施しています。

ホームページ:https://facil.shishinsha.jp/

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