蓄電池が災害時に果たす役割や選び方、使える補助金も解説!

2024.08.26

蓄電池があれば、災害時に電力供給が途絶えても、電化製品を稼働させることが可能です。

通信や照明、冷暖房など、生活に必要なものの多くは電力を必要とするため、蓄電池の有無は、被災後の自宅での生活を大きく変える要素と言えるでしょう。

ここでは、過去の実災害や今後想定される大規模災害を踏まえつつ、蓄電池の選び方や、導入時に活用できる補助金制度などについて解説していきます。

蓄電池が災害時に果たす役割

蓄電池は、電気のエネルギーを一時的に蓄え、必要に応じ機器に給電する機能を持った装置です。携帯電話のバッテリーなども蓄電池にあたるため、普段から身近にある存在と言えるでしょう。

蓄電池は、災害への備えに用意しておきたい設備の一つでもあります。災害時には
停電が発生する可能性が高まり、電気を必要とする製品が使用できなくなることがあります。しかし、容量が十分ある家庭用蓄電池を用意しておけば、停電時でも以下のような製品を使うことができ、被災後の生活の利便性を大きく高めることが可能です。

  • 通信機器(スマートフォン、電話、FAX、PCなど)
  • 照明機器(ランタン、懐中電灯、ヘッドライト、照明灯など)
  • 冷暖房器(エアコン、温冷蔵庫、扇風機、ファンヒーターなど)
  • 医療機器(吸引器、人工呼吸器、輸液ポンプ、透析装置など)
  • そのほか、水を組み上げるポンプなど

蓄電池が活躍するシーンの具体例

ここでは、災害時に蓄電池が活躍するシーンの具体例として、過去に実際に発生した停電被害と、近い未来に想定される停電被害を、それぞれ紹介します。

過去の災害で発生した停電被害

過去の災害で実際に発生した停電被害として、以下の3点を取り上げて見ていきましょう。

  • 2011年 東日本大震災
  • 2018年 台風15号・2019年 台風15号

2011年 東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方の三陸沖で発生しました。マグニチュードは9.0と、国内観測史上最大の規模であり、世界でも4番目に規模の大きい地震です。

とくに被害の大きかった東北電力管内では、送電や一次変電所、発電所の被害が多発し、電力が停止しています。3日後には約8割、8日後には約9割が復旧したものの、復旧が完了したのは地震発生から3か月以上経った6月18日でした。

また、東京電力管内でも約405万戸が停電し、完全な復旧は地震発生の8日後となっています。

2018年 台風21号・2019年 台風15号

2018年に発生した台風21号は、1993年に多大な被害を及ぼした第13号以来、25年振りに上陸した非常に勢力の大きい台風です。停電件数は最大で約240万戸、復旧(99%解消)には約5日を要しました。

また、停電に伴い供給ポンプが停止したため、飲料水やトイレも最大で1週間使用できない状態となりました。

一方、2019年に発生した台風15号は、伊豆諸島や関東地方南部を中心として強烈な雨風となり、観測史上1位の最大風速・最大瞬間風速を観測するほどの台風でした。

停電件数は東京電力管内で最大約93万戸と、2018年の台風21号の停電件数(最大約240万戸)よりも半分以下と少ないものの、復旧には約12日を要しました。これは、記録的な暴風による電柱の破損や倒壊、それに伴う断線、交通の妨げによる復旧作業の長期化などが原因として挙げられています。

予測される災害の停電被害

災害大国とも呼ばれる日本では、今後も東日本大震災のような大規模な災害に見舞われる可能性が高く、いつどこで深刻な停電被害があるかわかりません。

今後発生が懸念される災害と、それに伴う停電被害として、以下の2つを取り上げて紹介します。

  • 南海トラフ地震
  • 首都直下地震

南海トラフ地震

南海トラフ地震は、2020年1月24日時点で、今後30年以内にマグニチュード8~9クラスの地震が発生する確率が70~80%とされている地震です。静岡県から宮崎県にかけての一部地域では震度7、隣接する周辺の広域では震度6強から6弱が想定されています。

この南海トラフ地震が発生した場合、東日本大震災を超える甚大な被害をもたらすと考えられています。停電の被害想定は被災直後で最大約2,710万軒と、東日本大震災の停電被害の件数486万戸の5.5倍の数値です。

また、建物の全壊および焼失被害の想定は約238.6万棟であり、関東地方から九州地方の太平洋沿岸地域には10mを超える津波が押し寄せるとされています。このことから、電力施設の被災、損傷や沈下といった道路の被害などにより、停電の復旧に時間を要する可能性があります。

首都直下地震

首都直下型地震とは、南関東地域を中心として、2020年1月24日時点で30年以内にマグニチュード7程度の地震が発生する確率が70%と予想されている地震です。地震発生後、東京都内の約5割の地域で停電し、1週間以上は不安定な状況が続く見込みとされています。

なお、この地震は広域で震度6強から6弱、最大震度7となり、発生場所の特定が困難とされています。そのため、想定される全域での備えが求められています。

停電時に家庭用蓄電池で過ごせる時間はどれくらい?

災害による停電が発生した際には、家庭用蓄電池でどれくらいの期間過ごすことができるのでしょうか。蓄電池のみを使用する場合と、太陽光発電と蓄電池を併用する場合とで、それぞれ見ていきましょう。

蓄電池のみの場合

家庭用として販売される蓄電池の平均容量は5~7kWhとされます。この範囲でどの程度の家電製品を稼働させることができるのでしょうか。

消費電力は、家電製品のラベルなどに記載されています。機種により幅があるものの、およそ以下のような電力を必要とします。

  • エアコン:500~2,000W
  • 冷蔵庫:200~500W
  • 電子レンジ:500~1,000W
  • 照明器具:1基10~60W
  • 洗濯機:400~500W
  • テレビ:100~500W
  • ノートパソコン充電:20~30W
  • スマートフォン充電:3~5W

たとえば、過去の災害でも需要の高かったエアコン(600W)、冷蔵庫(250W)、照明器具(30W×4基)、スマートフォン充電(3W×3台)、ノートパソコン充電(20W×1台)を合計すると、1時間あたりの消費電力は約1kW(999W)となります。

つまり、一般的な家庭用蓄電池では、上記の家電だけに絞っても、5~7時間程度しか稼働させられません

太陽光発電と併用する場合

蓄電池単体では停電時に充電できず、蓄電分を使い切ったらおしまいです。しかし、太陽光発電を併用すれば日照中に充電することができるため、蓄電池を繰り返し利用することができます。

日中は太陽光発電設備が発電する電気を直接使用しつつ、蓄電池に充電しておき、夜間は蓄電池を使って蓄えた電力を使用するというサイクルにより、より長い間の電力使用が可能となります。

加えて、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることにより、日常的に商業電力を減らして電気代を節約できるだけでなく、長期化した停電時にも、自宅での生活を安定して続けることができるメリットがあります。

災害時に備えた家庭用蓄電池の選び方

災害に備えて家庭用蓄電池を選ぶ際には、蓄電池のタイプと、蓄電容量に着目して選ぶとよいでしょう。それぞれのポイントについて解説していきます。

特定負荷型と全負荷型

蓄電池は、停電時の負荷の範囲(電力の供給範囲)によって、次の2タイプに大別されます。

  • 特定負荷型:停電時に事前に決めた特定の部屋や家電にのみ電力を供給する
  • 全負荷型 :停電時でも家屋全体に電力を供給する

それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。

特定負荷型のメリット・デメリット

特定負荷型は、電力供給の範囲を絞るため、比較的価格が安く、設置スペースも少ない点がメリットです。また、蓄えた電力の容量が少ない場合でも、全負荷型と比べて長時間の電気仕様が可能です。

一方で、停電時に利用できる場所や家電が限定されるため、生活の不自由さは増えます。とくに、近年増えている200Vのエアコンや調理器具、給湯器、洗濯乾燥機などが使えないため、揃えている設備によっては使える家電製品が大きく制限されるでしょう。

これらの特徴から、特定負荷型の蓄電池は、限られた予算しかない場合や、もともと電力消費量が多くないため停電時に必要最低限の電力使用で問題ない場合、設置スペースがとれない場合などに向いているといえます。

全負荷型のメリット・デメリット

全負荷型の場合、家屋全体に電力が供給されるため、停電時であっても普段どおりの生活を送れることがメリットです。

ただし、使用する電力量に制限が設けられないことから、消費電力の大きな家電製品をむやみに使うと蓄えた電力量を上回って、全体での使用時間が短くなる可能性があります。蓄電池の容量とのバランスをとりながら使用すると効果的です。

また、全負荷型は200Vの家電製品も利用できるのですが、契約しているアンペア数より蓄電池が対応するアンペア数が低い場合は、実質的に蓄電池の値まで使用に制限がかかります。全負荷型を選ぶ場合は、分電盤に表示されている契約アンペア数を確認しておきましょう。契約アンペア数によって書いてある数字は異なりますが、「30A」といった表記がされています。

契約アンペア数は、基本料金に影響する料金体系で契約している場合、家庭に毎月届く検針票(電気ご使用量のお知らせ)や請求書で確認できます。

そのほか、全負荷型の場合は特定負荷型よりも広い設置スペースが必要となり、価格も高めになります。

上記の特徴から、全負荷型の蓄電池は、停電しても家族構成などにより現状の生活を維持する必要がある場合、停電時の備えとして予算をスペースを確保できる場合に選ぶとよいでしょう。

蓄電容量

蓄電容量は「kWh」という単位で表し、製品ごとに異なります。必要となる蓄電容量を把握したうえで導入する製品を選びましょう。必要となる容量を算出する際の手順は以下のとおりです。

  1. 停電時でも稼働させたい重要な家電製品を特定する
  2. 家電製品の消費電力(W)を取扱説明書や機器のラベルなどで確認し、合計する
  3. 1日で稼働させたい時間(h)を決める
  4. 消費電力合計(W)と稼働時間(h)を掛け合わせ、1,000で割る(kWh)

たとえば、1日7時間、合計して900Wの家電を利用する場合、必要な電力は6.3kWhとなり、蓄電容量は6.3kWh以上を目安にして選定します。

災害時に備えた蓄電池の導入で補助金制度は使用できる?

蓄電池の導入は、蓄電池は、災害対策としてだけではなく、環境対策(省エネ策)の観点も、国や自治体が普及の取り組みを進めています。

日中の電気代が安い夜間に蓄電池へ電力を蓄えておき、日中に蓄電池からの電力を使用することで、全体の電気代を抑えるイメージです。太陽光発電と併用することで日中に発電して電力を蓄え、余った分は売電して収入を得ることも可能です。

補助金制度は防災の観点とは異なるものもあり、申請の条件や支給対象を確認する必要があるものの、うまく利用すると設置の費用を抑えることができます。

補助金制度は年度ごとに更新されます。目的も条件も多岐にわたるため、こまめにチェックしておくことをおすすめします。

<補助金制度の例>

制度名 執行団体 補助額
子育てエコホーム支援事業 64,000円/戸
DR補助金 一般社団法人 環境共創イニシアチブ 3.7万円/kWh(導入費用の1/3以内:上限60万円)

※家庭用蓄電池の場合

令和6年度 家庭における蓄電池導入促進事業 自治体(東京都) ■太陽光発電システムがある場合:以下のうち小さい額

1.蓄電容量6.34kWh以上(100kWh未満):15万円/kWh

2.蓄電容量6.34kWh未満:19万円/kWh(最大95万円)

3.助成対象経費の3/4の額

■太陽光発電システムがない場合:以下のうち小さい額

1.蓄電容量6.34kWh以上(100kWh未満):15万円/kWh

2.蓄電容量6.34kWh未満:19万円/kWh(最大95万円)

3.120万円

4.助成対象経費の3/4の額

※新規で設置する場合のみ

災害時に備えて家庭用蓄電池の導入を検討しましょう

蓄電池は、災害により停電が発生した場合でも、通信や照明、冷暖房など生活に大きな影響を与える家電製品の使用を可能にする、重要なライフライン機器です。

また、平常時にも、蓄電からの電力供給をうまく活用することにより、省エネで環境問題への貢献ができたり、全体での電気代を下げることができたりするメリットがあります。

とくに太陽光発電と併用すれば、日中に電力をつくって蓄えることにより、夜間も十分な電力供給が可能となり、長期にわたる停電が発生した場合でもより負担なく自宅での生活を送れる可能性が高まります。

東京ガスや提携する施工店では、最新の補助金制度の情報も含め、家族構成や生活状況に応じた適切な蓄電容量や蓄電のタイプ、太陽光発電と組み合わせたシステムなど、数多くの施工事例から最適なものを提案します。お気軽にご相談ください。

・参考資料(2011年 東日本大震災):
3月11日の地震により東北電力 で発生した広域停電の概要|内閣府3月11日の地震により東北電力 で発生した広域停電の概要
災害時に備えて食品の 家庭備蓄を始めよう|農林水産省
今回の地震・津波による主な被害等|内閣府
公共インフラ及びライフライン等の被害|総務省 消防庁

・参考資料(2018年 台風21号・2019年 台風15号):
令和元年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-3 平成30年台風第21号による災害|内閣府
「台風」と「電力」〜長期停電から考える電力のレジリエンス|経済産業省 資源エネルギー庁

・参考資料(南海トラフ地震):
2 巨大地震のリスク|国土交通省
南海トラフ地震対策|内閣府
南海トラフ巨大地震の被害想定について (施設等の被害)|内閣府政策統括官(防災担当)

・参考資料(首都直下地震):
2 巨大地震のリスク|国土交通省
2018 SEPTEMBER 14 いつ起きてもおかしくない首都直下型地震から命をどう守るのか【専門家解説】|東洋大学
特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)|内閣府

南部 優子

執筆者

南部 優子
防災士。2008年より、研究機関と共同で、内閣府をはじめとする国や自治体のほか、インフラ企業などを対象に、防災に関する調査分析、防災計画・事業継続計画(BCP)の策定、各種マニュアル作成、防災訓練・研修の企画運営、講師、ファシリテーターを歴任。 現在は、フリーの防災ライター&ファシリテーターとして防災力を養うための人材育成に力を入れ、地域住民を対象とした講座、研修、ワークショップも多数実施しています。

ホームページ:https://facil.shishinsha.jp/

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