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静岡市の移住支援担当者に聞く、首都圏からの移住先として人気の理由と注意点とは?<50代、60代の移住マニュアル>

2024.01.19

「地方移住に興味はあるけれど、どのエリアを候補地に選べば良いのか。どのように進めれば良いのか…」。そんな悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。​

​​本記事では​​、自身も移住経験者である筆者が、移住支援をしている行政の方へのインタビューを通して、50代、60代で暮らしを見直し、理想のセカンドライフをめざしている方に向け、​​​​実際の移住に必要な情報をお伝えします。

​​​​移住を積極的に受け入れている自治体の魅力​​に触れることは、移住検討の第一歩としてもおすすめです。​​移住の検討方法や、受けられる移住支援制度も具体的に紹介し​​ます​​ので、ぜひ検討を進める際の参考にしてください。​
​​
今回は、首都圏へのアクセスが良く、自然と街のバランスが取れた自治体、静岡市を取り上げます。

<インタビューに協力くださった静岡市の移住支援ご担当の皆さま>

増田早紀さま

静岡市企画局 企画課 移住・事業推進係
主任主事 増田早紀さま

淺羽克彦さま

静岡市企画局 企画課 移住・事業推進係
移住コンシェルジュ 淺羽克彦さま

工島彩加さま

静岡市保健福祉長寿局 地域包括ケア・誰もが活躍推進本部 誰もが活躍推進係
主任主事 工島彩加さま

首都圏からの移住に、​​静岡市がおすすめな理由

――まず、移住先として人気である静岡市の魅力を伺えますか。

増田
魅力に感じていただけるポイントはさまざまですが、一つは、交通の便の良さです。東京へは新幹線に乗れば1時間で行けますし、市内にはJRと私鉄が走り、バスも約100路線運行しています(2023年12月時点)。市街地は坂が少ないので、自転車での移動も楽。静岡駅の周辺が栄え、コンパクトな街になっていて生活がしやすい点にメリットを感じていただける方が多いですね。

静岡駅周辺の風景
静岡駅周辺の風景

淺羽
静岡市であれば、名古屋へも新幹線で1時間、大阪もおよそ2時間でアクセスできます。3大都市圏に何らかのご縁がある方が多いので、ご親戚やご友人との縁を切らさない距離感もポイントだと思います。
あとは、「ほどよく田舎で、ほどよく都会」というところも大きな魅力ですね。

増田
そうですね。海・山・川などの自然が街から近いのも魅力の一つです。静岡駅から車で15分も走れば、海にも山にも行けますよ。

気候が穏やかで暖かく、市街地で雪が降ることはほぼありません。とくにご年配の方や東北・北陸から移住された方は、「暖かいから」「雪かきをしなくていいから」という理由で静岡市を選んだと話されます。

富士山や茶畑を望める静岡市の風景
富士山や茶畑を望める静岡市の風景

――過ごしやすくて魅力的ですね。静岡市への移住者は増えていますか。

増田
増えています。移住相談窓口などの支援制度を利用して県外から移住した方は、2020年度に139人、2021年度に158人、2022年度に255人でした。首都圏からの移住が7割を占めています。

――とくに50代、60代にお勧めするポイントはありますか?

淺羽
将来の健康を考えると、市内に総合病院が9つある点は安心できるポイントの一つです。先々を見据えて、医療機関の充実度を気にされる方は多くいらっしゃいますから。

工島
静岡市の中心市街地である葵区であれば、車がなくても駅から歩いて行ける総合病院が2か所あります。
また、高齢者に対しての福祉サービスも充実していると思います。市内30か所の「地域包括センター」ではご家族の介護やご自身の体調について幅広い相談ができます。加えて葵区には、「認知症ケア推進センター」という認知症に関する相談が気軽にできる施設もあります。

――首都圏などの都市部から静岡市への移住で、理想とのギャップを感じてしまうケースについて教えてください。

増田
ギャップとして時々耳にするのは、「意外と物価が高い」「もっと田舎だと思っていた」という声です。

増田さんインタビュー風景
企画課で移住支援を担当する増田さん

淺羽
「田舎」の捉え方ですが、例えば、移住を検討されている方の現在の居住地が千葉県の南房総エリアの場合と、東京都港区の場合とでは、バックグラウンドがまったく違います。移住後にギャップを生まないためにも、私たちが移住相談を受ける際は、その方が思う「田舎暮らし」のイメージや必要な生活インフラを丁寧に確認することを大切にしています。

増田
また、静岡市は穏やかで優しい人が多く、コミュニケーションものんびりしているので、人によっては「距離が詰めにくい」と感じる方もいるようです(笑)。

​​静岡市への移住の検討ステップ​​と受けられるサポート

――「移住を検討しようかな」と思ったら、まずはどうしたらいいでしょうか?

増田
まずは「どうして移住したいと思ったのか」というきっかけや目的を整理して、理想の暮らしに必要だと思う条件を具体的にイメージすることが重要です。移住コンシェルジュの淺羽さんに相談していただいても構いません。イメージしている理想の暮らしが本当に静岡市でかなうのかを丁寧に一緒に考えていきます。

淺羽
あとは、一緒に暮らすことになるご家族がいらっしゃる場合にはコンセンサス(合意)が大切になりますので、検討段階からしっかり詰めていただくことも重要でしょう。

――「市役所の方に相談するのはまだハードルが高い」という場合のおすすめはありますか?

増田
東京・有楽町にある全国各地への移住を支援する「ふるさと回帰支援センター」を訪れることをお勧めします。各都道府県の相談窓口があるなか、静岡市は市町村で唯一単独での窓口を設けていて、そちらでも情報収集が可能です。

ふるさと回帰支援センター
ふるさと回帰支援センター相談窓口の様子

――私自身も経験しましたが、移住の際には住まい探しが大きなハードルだと思います。静岡市ではどんな方法がありますか?

淺羽
基本的には民間の不動産会社を通して家を探していただいています。静岡県が運営する「しずおか移住応援団」に登録されている不動産会社を紹介することもあります。こちらの不動産会社では、移住希望者で土地勘がないことや、現在のお住まいを整えてから転居するため、契約までに時間がかかることも前提で相談に乗ってくれます。

――私自身は空き家バンクを通して物件を購入したのですが、静岡市にも空き家バンクはありますか?

増田
はい。静岡市の場合は南北にとても広いので、市街地エリアと中山間地エリアに分けて物件を掲載しています。

――50代、60代が移住する際、家探しで知っておくべきことは何でしょうか。

淺羽
50代、60代の住まい探しでは、賃貸料やローンの支払いの信用がお仕事の兼ね合いから低くなってしまい、契約がスムーズに進まないという問題が起こり得ます。このような場合、静岡県が指定する「住宅確保要配慮者居住支援法人」に仲介に入ってもらうこともあります。

また、最初はほとんどの方が賃貸でマンションやアパートに入られます。実際に市内に暮らしながらいろいろな地域を見て、最終的により気に入った場所で物件を購入される方も多いですね。

淺羽さんインタビュー風景
静岡市役所で移住コンシェルジュを務める淺羽さん

――移住先で仕事をしたい方もいるかと思います。静岡市での仕事探しのサポートについて教えてください。

淺羽
お仕事探しについては、最初はハローワークをご紹介しています。それ以外にも静岡県の総合就職支援機関である「しずおかジョブステーション」でも相談が可能です。
「ふるさと回帰支援センター」内の静岡県のブースでは、「静岡U・Iターン就職サポートセンター」の就職相談員が就職・転職に関する相談にも対応しています。オンラインでの相談も可能なので、遠隔地の方にもお勧めです。

工島
静岡市役所内には55歳以上の方を対象にして求職の相談に乗る「NEXTワークしずおか」という窓口があります。ご本人がバリバリ働きたいのか、少しだけ働きたいのか、ニーズを伺ったうえで、お仕事探しのサポートを行っています。

工島さんインタビュー風景
50代、60代向けの移住支援に携わる工島さん

――「セカンドライフで飲食店を開業したい」などの夢をお持ちの方にはどのような支援がありますか?

増田
B-nest(ビネスト)」という創業支援を行う施設があります。また、地元企業と繋がって新しいことを始めたい、起業について勉強したいという方向けには「静岡市コ・クリエーションスペース」というコミュニケーション施設もあります。

――住まい、仕事も含めて、移住に関することは、淺羽さんのような移住コンシェルジュが相談に乗ってくれるのでしょうか。

増田
そうですね。静岡市役所には淺羽さんも含めて2名、ふるさと回帰支援センターの静岡市のブースにも2名の移住相談員がいます。直接の面談はもちろん、電話・メール・オンラインでも相談が可能です。
「ちょっと静岡市に行ってみようかな」というときには、市役所の移住相談員が、現地でお出迎えをして、静岡駅もしくは清水駅の周辺を歩きながら生活者の目線でご紹介する「まち歩き案内」というサポートも行っています。

静岡市移住支援担当者の皆さまと静岡市の街並み
市の担当者が街歩きなど移住のサポートを実施

――それは心強いですね。そのように静岡市を訪れたときに利用できる、移住希望者向けの宿泊施設はありますか?

増田
お試し暮らし体験において、宿泊を希望する方が利用できる「お試し住宅」が市内に3か所あります。いずれも、事前に移住相談員に移住相談していることが利用条件となりますので、具体的に静岡市へ移住を検討されている方は、ぜひご相談いただきたいです。

淺羽
移住希望者は、住まい探しや求職活動などで平均3回くらいは現地にお越しになられることが多いので、お試し住宅をうまく組み合わせていただくと、ご滞在の負担を軽減できるかなと思います。

▼参考:2024年1月現在のお試し暮らし体験料

1)
清水区内の市営住宅(2LDK・3LDK)
滞在期間:3泊4日〜2週間
利用料:1日500円/組
条件:移住希望世帯1組につき1回限り
2)
静岡市役所近く
葵区内の有料老人ホーム「ロングライフ・クイーンズ静岡呉服町」の一室
滞在期間:原則1週間以内
利用料:1日1,500円/人
対象:主に55歳以上の移住希望者(2名まで)

お試し暮らし体験
宿泊できる部屋の一例

3)
中山間地エリアの教職員住宅(梅ケ島地区)
利用料:1日300円もしくは500円/組
対象:中山間地エリアへの移住希望者

――50代、60代が対象になる移住に関連した補助金について教えていただけますか?

増田
移住・就業補助金や、移住後に居住する空き家の改修補助金は年齢の上限はありませんので、どなたでも要件に該当すれば使っていただけます。

▼参考:移住の際に利用できる補助金制度

・静岡市移住・就業補助金交付制度
東京圏から静岡市に移住して、就業・起業などをした方に対し、単身で60万円、2人以上の世帯で100万円の補助金が支給される。(要件あり)

※18歳未満の子を帯同して移住の場合、1人当たり100万円(2023年3月31日以前に移住した場合は30万円)が加算。

・静岡市空き家改修事業補助金交付制度
「静岡市空き家情報バンク」登録物件を購入し、改修した方が対象。水道やトイレ、屋根などの改修費について3分の1(上限額あり)が補助される。

​​静岡市への移住で知っておくべきこと

――都市部からの移住者が気になる自治会活動についてはどうでしょう?

淺羽
自治会のルールや活動参加が求められるかどうかは、地域や自治会によって異なります。不動産会社はそれぞれの自治会の情報も持っているので、住まい探しの際に聞いてみた方がいいですね。

――南海トラフ地震など、災害への備えについて教えてください。

避難所運営訓練
防災訓練の様子。避難所の設置を体験する市民の皆さま

増田
静岡は昔から地震がくると言われているエリアなので、市民の皆さんの防災意識は高いです。年に何度か防災訓練が行われています。

津波避難訓練
津波避難訓練の様子。避難経路、所要時間、場所の確認などを行う

増田
津波が心配される海側のエリアでは、毎年3月に津波避難訓練も行われています。移住されたら、自然とそのような訓練には参加することになると思います。あとは事前に、静岡市で公開している防災マップなどで津波や土砂災害のリスクを確認してもらうことも重要かと思います。

​​50代、60代の移住希望者に静岡市からのメッセージ

――最後に、50代、60代の移住希望者にメッセージをお願いします。

淺羽
これまでの人生で、いろいろな知見や経験をお持ちの皆さまと思います。ぜひその知見と経験を静岡市で活かしていくという観点から、移住計画を進めていただきたいと思います。
ぜひ、私たちを皆さまの「静岡市での最初の知り合い」と思って、ご相談ください。

工島
静岡市は移住後に大きく関わる可能性がある福祉サービス、介護予防サービスも充実している住みやすい場所です。
相談員へのご相談やお試し住宅の利用で、移住前後の不安はかなり軽減されると思いますので、ぜひご検討ください。

静岡市移住支援担当者の皆さま


船崎 桜

執筆者

船崎 桜
ライター/地域おこし協力隊

埼玉県出身。大学卒業後、新聞記者として厚生労働省や東日本大震災の取材を6年間経験。IT企業広報を経て、2021年に滋賀県長浜市へ移住。地域おこし協力隊(移住促進PR担当)として、移住者8人のチーム「イカハッチンプロダクション」で雑誌づくりなどに取り組む。暮らしているのは限界集落の築150年超古民家。炭焼きとDIYにも挑戦中。

▼静岡市に移住した60代の方のリアルな声を聞く!きっかけや移住までの流れとは?

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