災害用蓄電池の設置に使える5つの補助金制度と利用時の注意点を解説

2024.09.09

「停電や災害に備えて蓄電池の導入を検討しているが、費用が高く迷っている」という方も多いのではないでしょうか。災害用蓄電池は、補助金制度を利用することでコストを抑えて設置することが可能です。

ただし、補助金制度にはいくつかの種類があり、利用条件や期限がそれぞれ異なります。事前に確認したうえで利用しましょう。

ここでは、蓄電池の設置に利用できる5つの補助金制度の概要や対象、申請期限、条件などについて解説します。補助金制度を利用する際の注意点についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

災害用に導入する家庭用蓄電池に活用できる補助金制度

下表は、家庭用蓄電池を導入する際に活用できる補助金制度の、種類と補助金額をまとめたものです。

これらは主に、後述する蓄電池の電力需給バランスの調整能力が主目的として交付されるものです。そのため、基本的には日常の使用が必要になります。

また、蓄電池を設置する際、災害時だけに使用するのではなく、日常の光熱費節約にも利用したほうが経済的メリットが高くなります。

こうした理由から、防災のために蓄電池を設置するのであれば、日常利用も視野に入れ、効果的に補助金を利用していきましょう。

補助金制度の種類 補助金額
自治体ごとの補助金制度 ●自治体によって異なる
DR補助金

●1台あたり3.7万円/kWh(初期実効容量 )

・補助対象経費(蓄電池費+工事費)の3分の1以内

・上限60万円

DER補助金

●1kWhあたり3.2~4.7万円(初期実効容量、満たす条件によって補助額が変わる)

・補助対象経費(蓄電池費+工事費)の3分の1以内

・上限60万円

ZEH(ゼッチ)補助金 ●上限20万円
子育てエコホーム支援事業 ●64,000円/戸

それぞれの補助金制度の概要や条件、対象設備や申請期限について解説します。

自治体による補助金制度

自治体によっては、家庭用蓄電池の設置で利用できる補助金制度を独自で設けている場合があります。

ここでは参考として、以下3つの自治体の補助金制度を紹介します。

自治体・制度の名称 補助額 申請期間(予算上限に達し次第終了)
藤沢市

「令和6年度藤沢市定置用リチウムイオン蓄電池設置費補助金」

5万円 2025年2月28日まで
千葉市

「住宅用設備等脱炭素化促進事業補助金(住宅用設備関係)」

7万円 2024年5月1日から

2025年1月31日まで

埼玉市

「【令和6年度】家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」

10万円 2025年1月31日まで

対象や条件などは自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体の公式サイトや窓口で詳細を確認してみましょう。

DR補助金

DRとは、「Demand Response(ディマンド・リスポンス)」の略で、蓄電池に利用できる国の補助金制度の一つです。

■Demand Response(ディマンド・リスポンス)とは(※1)

ディマンド・リスポンス(DR)とは、消費者が賢く電力使用量を制御することで、
電力需要パターンを変化させることです。
これにより、電力の需要と供給のバランスをとることができます。

電力会社は発電した電気を貯めておくことはできないため、予測した消費電力を元に電気を発電し、供給しています。そのため、急な需要で需給バランスが崩れ、停電が発生する可能性が生じます。

また、近年の太陽光発電システムなど再生可能エネルギー拡大に伴い、電力需要が低いときに反対に供給が過剰になることも需給バランスの崩れにつながります。

こうした背景(※2)から、各家庭が電力会社などの要請に応じて電力需要の抑制するDRを行うことで、電力の需要と供給のバランスの改善に貢献します。DR補助金は、これらを通じて電力の安定供給につなげることを目的として作られました。

DRの実現のために対象となる蓄電池を設置した場合、補助金が受け取れます。

DR補助金の概要について、以下の一覧でまとめました。

補助額

●1台あたり3.7万円/kWh(初期実効容量 ※)

・補助対象経費(蓄電池費+工事費)の3分の1以内

・上限60万円

※初期実効容量とは、実際に使用できる電気の量

補助対象者

●日本国内に住んでいる者

●本事業で導入する蓄電池の所有者

●経済産業省から以下の措置を講じられていない者

・補助金等停止措置

・指名停止措置

●社会通念上、適切と認められている者

補助条件

●以下いずれかに該当すること

・設置する蓄電池を対象にDRを行うことを承諾する(蓄電池アグリゲーターとDR契約を締結※)

・小売電気事業者が提供するDRメニューにあらかじめ加入する

●補助金の各種申請手続きを、代行者(業者)を通じて行うことに同意すること

●電子メールアドレスを所有し、申請前にSIIが指定する本人確認(proost)の使用に同意すること

●DRの実施状況等を国やSIIに報告されることに同意すること

●DR対応期間終了後でも、処分が制限されている期間中は適切な使用をし、SIIから連絡があった際には対応できること

※蓄電池アグリゲーター:本事業で設置される蓄電池を活用し、電力需要に合わせて電力の供給を調整したり、蓄電池の状態を監視したりする事業者
※DR(契約):電力の需要量と供給量を合わせる(ことに同意する契約)

対象設備

●以下の要件をすべて満たす蓄電池であること

・新しく設置する蓄電池

・SIIに登録されている蓄電池

・各種法令等に準拠した蓄電池

・DRに対応可能な蓄電池

・蓄電池の購入価格と工事費の合計が目標価格以下(14.1万円/kWh(蓄電容量)

・設置予定の蓄電池のBMS(電池制御システム)のメーカー等が、過去5年の実績を含めて国際基準に反していないこと、かつ開発供給の適切性が確保できている

申請期間 2024年12月6日まで

DR補助金の申請も、本事業に登録している業者が代行して行います。

DER補助金

DERとは、「Distributed Energy Resources(ディストリビューティッド・エナジー・リソース)」の略で、「分散型エネルギーリソース」と訳されます。DER補助金も、国が行っている補助金制度の一つです。

■分散型エネルギーリソースとは

電気の消費者(企業・一般家庭)が所有している、太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー源

電気の消費者(企業・一般家庭)が所有している、太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー源

電気の需要と供給のバランスが崩れると、停電のリスクがあることは前述のとおりです。そこで、従来のように電力会社から消費者に電気を供給するだけでなく、企業や一般家庭が太陽光発電システムや蓄電池を使用し、電力エネルギーを分散することで停電のリスクを回避するDERが推進されています。
これらは、CO2の排出量削減にも寄与します。

DER補助金は、こうした背景を踏まえ、分散型エネルギーリソースの活用推進のため、DER技術の実証を行うことを目的としています。


引用:分散型エネルギーについて|資源エネルギー庁

DER補助金は例年募集が実施されていますが、2024年度の詳細は2024年7月末現在で詳細は発表されていません。そのため、2023年度の事業内容を参考として紹介します。

補助額

●1kWhあたり3.2~4.7万円(初期実効容量、満たす条件によって補助額が変わる)

・補助対象経費(蓄電池費+工事費)の3分の1以内

・上限60万円

補助対象者

●日本国内に住んでいる者

●本事業で導入する蓄電池の所有者

●経済産業省から以下の措置を講じられていない者

・補助金等停止措置

・指名停止措置

●社会通念上、適切と認められている者

補助条件

●実証参加に係る契約を締結すること

●補助金の各種申請手続きを、代行者(業者)を通じて行うことに同意すること

●本事業で設置した蓄電池の活用状況などの報告を求められ際は対応すること

●電子メールアドレスを所有し、申請前にSIIが指定する本人確認(proost)の使用に同意すること

対象設備

以下の要件をすべて満たす蓄電池であること

SIIに登録されている蓄電池

蓄電池の購入価格と工事費の合計が目標価格以下(14.1万円/kWh(蓄電容量)

設置予定の蓄電池のBMS(電池制御システム)のメーカー等が、過去5年の実績を含めて国際基準に反していないこと、かつ開発供給の適切性が確保できている

申請期間 2023年7月18日(火)13:00 ~ 2023年12月22日(金)12:00必着

 

ZEH(ゼッチ)補助金

ZEH(ゼッチ)とは、「Net Zero EnergyHouse(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略です。太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーの導入によって建物の省エネ性を高め、住宅の消費エネルギーをゼロにすることを目的とした補助金制度です。

■ZEHとは(※3)

建物の断熱性能を高めて、高効率な設備を導入することによって消費するエネルギーを少なくすることで「省エネ」を実現するとともに、太陽光発電などの再生可能エネルギーを創り出す「創エネ」によって、エネルギー収支が正味ゼロになることを目指した住宅


引用:https://zehweb.jp/

蓄電池の導入には20万円を上限として補助を受けられます。また、住宅全体の省エネ性向上を目的としているため、太陽光発電システムにも最大12~15万円の補助金が出ます。

そのほかにも対象となる施工や設置があるため、住宅全体の省エネ性を向上したい方にもおすすめの補助金制度です。

ZEH補助金の概要を以下にまとめました。

補助額 上限20万円
補助対象者

●以下いずれかの新築住宅の建築主(個人)

・注文住宅

・建売住宅

●「暴力団排除に関する誓約事項」の記載事項に該当しない者

補助条件

●政府が推進している国民運動「デコ活」の趣旨に賛同し、いかいずれか、もしくは両方をおこなっていること

・デコ活宣言

・デコ活応援団への参画

●「J‐クレジット制度」に基づく排出削減事業で、本事業によって得られる温室効果ガス排出削減効果について意思表明を行うこと

●以下の要件をすべて満たす住宅であること

・SIIに登録を受けたZEHビルダー/プランナーが関与している住宅

・申請者が日常的に暮らしている住宅(別荘などは対象外)

・ZEHまたはZEH+の交付要件を満たす住宅

・新築の専用住宅(店舗併用住宅について例外あり)

・一戸建て住宅の持ち家(賃貸住宅・集合住宅でない ※例外あり)

・新築建売戸建住宅は、過去に人が住んでいないこと、かつ未完成または交付申請日までの1年以内に完成している住宅(一度も登記されたことがない、本事業の交付決定日前に住宅の支払いや引き渡しが住んでいない住宅)

・申請を行って交付決定番号を得たあとに設置する住宅

・2024年度(1年目)の交付決定日以降の完了実績報告時までに、BELSで「ZEH」であることを示す証書を取得し、次年度(2年目)で補助の対象となる工事を完了する住宅

・敷地が「土砂災害特別警戒区域」に該当していない住宅(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律:第9条第1項)

対象設備

●以下の要件をすべて満たす蓄電池であること

・新しく設置する蓄電池

・2024年度にSIIに登録されたもの、または、「2023年度ZEH支援事業」に登録された蓄電池

・蓄電池の購入価格と工事費の合計が蓄電容量1kWhあたり13.5万円以下

・以下の「導入目的」と「接続及び運用の要件」を満たしている

・導入目的:自宅の自家消費量を増加させる
接続及び運用の要件:目的を達成するために十分な蓄電池であること

申請期間 新規 :2024年8月30日の17:00締切
一般公募:2025年1月7日の17:00締切※新規は、新たにSIIに登録を受けたZEHビルダー/プランナーを示し、一般公募はすでに登録されている者を示す
ホームページ https://zehweb.jp/

 

子育てエコホーム支援事業

「子育てエコホーム支援事業」とは、若者・子育て世帯といった物価の高騰(エネルギー価格など)の影響を受けやすい層を対象に、高い省エネ性能の新築住宅取得やリフォームを支援し、2050年のカーボンニュートラルの実現を図る事業です。

この補助金制度は、「注文住宅の新築」「新築分譲住宅の購入」「リフォーム」の3つの補助対象枠があり、既存住宅への蓄電池の設置は「リフォーム」の枠にて申請することができます。このリフォームの枠は、若者夫婦世帯や子育て世帯以外も対象となっています。

子育てエコホーム支援事業のリフォーム補助枠の詳細は、下表のとおりです。

補助額 64,000円/戸
補助対象者

●本事業の支援業者と工事請負契約等を締結して蓄電池を設置する方

●蓄電池を設置する住宅の所有者等であること

・住宅を所有して住んでいる、またはその家族

・住宅を所有して貸している、個人または法人

・賃貸住宅を借りて住んでいる人

・共同住宅等の管理組合、管理組合法人

補助条件 申請する補助額の合計が5万円以上であること
対象設備

●定置用リチウム蓄電池であること

●一般社団法人環境共創イニシアチブが2022度以降登録・公表している蓄電池であること

申請期間

※予算上限に達し次第終了

[申請期間]
予約:2024年11月30日まで(※1)申請:2024年12月31日まで※1:予約とは、交付予定申請額を一定期間、確保すること

補助金の申請は、本事業に登録している業者(エコホーム支援事業者)が行います。子育てエコホーム支援事業を利用して蓄電池の設置を検討している場合、まずエコホーム支援事業者へ相談しましょう。

なお、本事業は蓄電池以外にも防災性向上のリフォームなども補助対象(一戸あたり20万円、条件を満たした若者夫婦世帯と子育て世帯は30万円~60万円を上限)となります。
災害の備えとして、蓄電池以外のリフォームも検討してみてはいかがでしょうか。

災害に備えて蓄電池を導入する際に知っておきたい!補助金制度の注意点


災害用蓄電池を家庭で導入する場合、補助金を有効活用することで導入費用の負担を抑えることができます。ただし、補助金制度の利用には、いくつかの注意点があります。一つずつ見ていきましょう。

補助金は予算がなくなり次第打ち切られることがある

補助金には予算が設定されています。期限内に申請を行っても予算がなくなると補助金の支給は打ち切りになる点に注意しましょう。

確実に補助金を受け取るためには、できるだけ早く設置業者に相談することをおすすめします。

地方自治体の補助金は自治体ごとに申請期間が違う

地方自治体が独自で設けている補助金制度は、自治体ごとに補助金の申請期間が異なります。

また、補助金制度を行っていないケースもあるでしょう。例年募集があるものとないものがあったり、蓄電池が対象となる新しい補助金制度が行われたりする場合もあります。

自治体の補助金制度の利用を検討しているときには、事前に自治体の公式サイトなどを確認し、最新の情報を入手しましょう。

補助金の中には併用できないものもある

補助金の中には併用できないものもあるので気を付けましょう。基本的に国と地方自治体の補助金は併用できますが、国の補助金同士は併用できない場合が多いです。たとえば経済省による補助金制度のDER補助金とDR補助金は併用できません。

また、地方自治体の補助金であっても、予算が国庫から出ている場合、国の補助金と併用できないこともあります。詳細は補助金制度の公式サイトや事業者から確認しましょう。

見積時には悪徳業者に注意する

補助金の申請を、補助金事業の登録業者が代理で行うケースもあります。この際、購入者をだます悪徳業者に引っかかってしまわないように気を付けましょう。

補助金関係は専門用語が多く、一般人には理解が難しい点から、購入者をだます悪徳業者が存在する可能性もあります。補助金を利用して災害用蓄電池の導入を検討しているのであれば、まず複数の業者の口コミや評判などをチェックし、実際に業者と話してみて信頼できる業者を選ぶことが重要です。

蓄電池の補助金制度を活用して災害に備えよう

家庭向けの災害用蓄電池導入で利用できる5つの補助金制度の詳細とともに、補助金制度を利用する際の注意点を解説しました。

蓄電池の補助金制度は、支給額や条件などが制度によって異なります。導入する蓄電池の容量やメーカーなどに合う補助金制度を選び、災害に備えられる蓄電池導入につなげましょう。補助金の申請期間の確認や信頼できる業者の選定といった、確実に補助金を受け取るための準備も重要です。

これから家庭向けの災害用蓄電池の設置を検討しているなら、東京ガスにご相談ください。無料訪問相談の受付は24時間365日受付可能です。

(※1:引用)ディマンド・リスポンスってなに?|経済産業省 資源エネルギー庁
(※2:出典元)ディマンド・リスポンスってなに?|経済産業省 資源エネルギー庁
(※3:引用)ZEH補助金

森野ミヤ子

執筆者

森野ミヤ子

二児の母。子供の消防車好きと被災地への転勤をきっかけに防災や減災に興味を持ち、防災士資格を取得。 DMATなど関連機関、防災関連商品やサービスの記事作成・監修を行う。

ホームページ:https://note.com/marisubmarine

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