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太陽光発電システムの導入を検討している方の中には、売電による収入が気になる方も多いでしょう。効果的に売電収入を得るためには、売電の仕組みや手続き、実際の売電価格などについての理解が不可欠です。
ここでは、太陽光発電の売電の概要や、必要な手続き、売電価格の相場、収入の試算などについて幅広く解説します。
太陽光発電の売電とは?
太陽光発電の売電とは、太陽光発電によってつくりだした電力を売ることです。売電方式には、主に「全量売電」と「余剰売電」の2種類があります。
両者の特徴を以下の表にまとめました。
売電方式の種類 | 全量売電 | 余剰売電 |
---|---|---|
売る電力 | 太陽光発電システムで発電したすべての電力 | 自宅で発電した電気のうち、自家消費できずに余った電力(余剰電力) |
対象の発電システム | 発電容量が10kW以上の大規模な太陽光発電 | 10kW未満の住宅用太陽光発電 |
適用に向いている利用者 | 事業者の方 | 一般家庭の方 |
一般家庭に設置される10kW未満の住宅用太陽光発電システムの場合、FIT制度下では必ず余剰売電となります。しかし、卒FIT後は売電先の電力会社ごとに対象が決められています。
太陽光発電の売電に必要な手続き
太陽光発電の売電を行う際は、現時点ではFIT制度(固定価格買取制度)を利用するほうがメリットがあります。
FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間、一定の価格で電力会社が買い取る制度です。太陽光発電の場合、導入から10年間は比較的高い水準の価格で買い取ってもらえます。
もちろん、この制度を利用しなくても、電力を買い取ってもらうこと自体は可能です。しかし、制度を利用する場合よりも買取価格が低くなるため、これから売電をしたい方は、FIT制度の適用がおすすめです(2024年8月時点)。
FIT制度の申請方法や期限について、以下で説明します。
申請の流れ
FIT制度を利用するためには、経済産業省から事業計画認定を受ける必要があります。認定を受けるまでには1~3ヶ月程度かかるため、計画的に進めましょう。
申請のおおまかな流れは以下の通りです。
- 電力会社に接続契約の申し込みをする
- 事業計画認定申請書を作成する
- 必要書類を添付して申請書を経済産業省に提出
- 代行事業者が申請する場合は設置者が申請承諾を行う
- 審査後に認定
事業計画認定申請は「再生可能エネルギー電子申請(※1)」から行います。
申請期限
事業計画認定申請には申請期限日が設定されています。例えば10kWh未満の太陽光発電システムの場合、2024年8月時点の最新の申請期限日は2025年1月7日(火)です。(※2)
また、申請には電力会社との接続契約を証明する「接続同意書類(接続契約書類)」が必要ですが、その書類の取得も電力会社ごとに期限が決められています。
申請期限日に間に合っていても、書類に不備があると年度内の認定が受けられません。そのため、早めに申請の準備を進めておきましょう。
太陽光発電の売電価格
太陽光発電の売電価格は、FIT制度の適用期間中とその後(卒FIT後)で大きく異なります。それぞれの期間における売電価格について詳しく見ていきましょう。
FIT適用中の売電価格
FIT制度適用中の売電価格は、直近の2025年度で1kWhあたり15円(※3)です。余剰電力の買取制度が開始された2009年の売電価格は1kWhあたり48円(※4)であったのに対し、年々下がっていることが分かります。
一方で、太陽光発電システム自体の導入費用も下がっており、導入しやすくなっています。
2012年の導入費用の平均は46.5万円/kWでしたが、2023年には28.4万円/kWとなっています。(※5)
つまり、売電価格は下がっていますが、同時に導入費用も下がっているということです。
卒FIT後の売電価格
卒FITとは、FIT制度の適用期間が満了することを指します。一般的な住宅用の太陽光発電システム(発電容量10kWh未満)の場合、FIT適用期間は10年です。
卒FIT後は買取価格が下がるため、売電による収入が激減してしまいます。ただし、売電する電力会社によって買取価格は異なります。たとえば「東京電力(※6)」の売電価格は、1kWhあたり8.50円です(2024年8月時点)。
2025年度のFIT適用価格(1kWhあたり15円)と比べると、大幅に減額していることが分かります。そのため、卒FIT後は、買取価格が高い電力会社と契約して売電したり、蓄電池を導入して自家消費率を上げたりするとよいでしょう。
太陽光発電による売電収入はどれくらい得られる?
3〜5kWの太陽光発電システムを設置した場合のシミュレーションでは、年間の売電収入は3〜5万円程度でした。
このシミュレーションにおける計算方法は、以下の通りです。
- 太陽光パネルの発電容量1kWあたり、1日で約2.7kWh発電する
- 家庭用の太陽光発電の容量は3〜5kW程度なので、年間発電量は、
3〜5kW×2.7kWh(1日当たりの発電量)×365日=2,957~4,928kWh - 平均的な売電率は70%(※7)であるため、年間の売電量は、
2,957~4,928kWh(年間発電量)×70%=2,070~3,450kWh - 2025年度のFIT適用時の売電価格15円/kWhであるため、年間の売電収入は、
2,070~3,450kWh×(年間売電量)×15円/kWh=31,050~51,750円
ただし、実際の発電量は、お住まいの住宅の日射量や天候などの設置環境によって異なります。(※8)そのため、より正確な試算については専門業者に相談してください。
太陽光発電による売電収入は確定申告に注意
太陽光発電による売電収入は雑所得(給与所得などに該当しない所得)にあたります。売電収入を含めた雑所得の年間所得額が20万円を超える場合には、確定申告が必要です。(※9)
住宅用の太陽光発電の売電収入のみで雑所得が20万円を超えることは、基本的にはありません。ただし、売電収入以外の雑所得(副業による所得など)がある方は注意してください。
また、売電収入が20万円を超えない場合でも、市民税・県民税の申告は必要です。売電収入にかかる税金の詳細が気になる方は、税務署や地方自治体に確認しておくと良いでしょう。
太陽光発電の売電について|まとめ
太陽光発電の売電には、主に「全量売電」と「余剰売電」の2種類があります。住宅用太陽光発電システムでは、後者を適用するのが一般的です。
FIT制度を利用して売電することで、比較的高い価格での買取が期待できます。ただし、FIT制度を利用する際は、認定を受けるまでに1~3ヶ月程度かかることと、申請期限が設けられていることに気を付けましょう。
一般的な住宅用太陽光発電の場合、年間の売電収入はおおよそ3~5万程度です。これは概算であり、実際の発電量と売電収入は、発電容量や設置環境などによって異なります。ご自宅に太陽光発電設備を取り付けた場合の発電量や、最適な設置容量などを知りたい方は、専門業者に相談するとよいでしょう。
東京ガスおよび提携企業では、お住まいに適した太陽光発電をご提案させていただくため、無料の訪問相談を受け付けています。太陽光発電設備の導入を考えている方は、お気軽にお問い合わせください。
(※1:出典元)認定手続関係 新規認定申請 | 経済産業省 資源エネルギー庁
(※2:出典元)2024 年度中の再エネ特措法に基づく認定の申請にかかる期限日について | 経済産業省 資源エネルギー庁
(※3:出典元)住宅用太陽光発電による売電量と設備費回収までの所要年数
(※4:出典元)買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー|経済産業省 資源エネルギー庁
(※5:出典元)太陽光発電について|資源エネルギー庁
(※6:出典元)再エネ買取標準プラン|東京電力エナジーパートナー
(※7:出典元)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/gian_hokoku/20240409chotatsu.pdf/$File/20240409chotatsu.pdf
(※8:出典元)太陽光発電により、家庭で使用する電気を全部まかなえますか?|太陽光発電協会
(※9:出典元)太陽光発電等による売電収入がある方の申告相談 Q&A|鳥取市