住み替えローンの金利は高い?審査の基準と金融機関の特徴を解説

2023.11.13

子どもの独立や定年退職を機にライフステージが変わり、将来のことも考えて新しい住居への住み替えを検討している方もいるでしょう。しかし、自宅(旧居)にかかるローン残債があった場合、自宅を売却し新居を購入することはできるのでしょうか。

場合によっては旧居と新居の両方でローンを組む「ダブルローン」も検討できますが、月々の支払い負担が大きく、経済的な余裕がない限りあまりおすすめできません。そこで選択肢となるのが、旧居のローン残債分と新居の購入費用をまとめて融資してもらえる「住み替えローン」です。

この記事では、住み替えローンのメリット・デメリットや審査内容について詳しく解説します。主な金融機関の住み替えローンの特徴も比較・解説しますので、ぜひ参考にしてください。

住み替えローンのメリットとは

一般的に、戸建てやマンションなどの住宅を売却するときは、現在組んでいるローンを完済することが前提条件となります。金融機関から住宅ローンを借りるときには、債務の担保として抵当権が設定されているため、ローンを完済して抵当権を抹消しなければ、不動産売買は行えません。

一方、住み替えローンは、自宅を売却しても住宅ローンを完済できない場合に、残債分と新居分の資金をまとめて借入できるメリットがあります。

そのため、2つのローンを同時に借入れる「ダブルローン」(二重ローン)といった返済額が増えてしまわずにローンを組める点も住み替えローンのメリットです。

また、旧居のローンを完済するために自己資金を充当する必要がないので、手元の資金を残すことができます。手元資金を、新居の購入や引っ越しのほか老後の生活費に充てることもできるようになります。

住み替えローンのデメリット

住み替えローンは、ローン残債があっても住み替えを可能にする大変便利な方法ですが、デメリットも伴います。以下に住み替えローンの主なデメリットを3つ紹介します。

一般的な住宅ローンより金利が高い

一般的な住宅ローンと比較すると、住み替えローンの金利は高くなります。金融機関によって違いはありますが、一般的に通常の住宅ローンよりも0.5%〜2%ほど高い傾向にあります。

加えて、住み替えローンでは、新居の購入資金とローンの残債を含めるため借入額が高額になりやすく、その分返済額が高くなる特徴があります。

審査が厳しい

金融機関の審査では、返済負担率を重要視します。返済負担率とは、ローンの返済額が年収に占める割合のことで、数値が低ければ審査では有利に働きますが、反対に高いと不利になります。金利や借入額が高い住み替えローンでは、自ずと返済負担率も高くなってしまうため、審査は厳しくなりがちです。

また、一般的には30~35%が返済負担率の基準と言われていますが、住み替えローンの場合は基準となる返済負担率が低くなる傾向にあるので、希望通りの借入ができない可能性も高いでしょう。

加えて、たとえば役職定年、再雇用を迎えた場合においては、収入はそれまでよりも低くなることが多く、返済負担率が高くなる傾向があることも要注意です。

スケジュールが制約される

住み替えローンは原則として「売却日と新居の購入日」を一緒にしなくてはなりません。売却する住宅の抵当権抹消と新居の抵当権設定を行う都合上、同時に手続きをする必要があるのです。

そのため、旧居売却と新居購入の引渡日を合わせなければなりません。加えて、新居の引き渡し日と自分の引越し日なども調整する必要があります。

住み替えローンの審査内容

住み替えローンは住宅ローンに比べ審査が厳しくなります。そこで審査においてどのような点が重視されるのかを解説します。

年齢・年収・勤務先・勤続年数

年齢と年収は返済能力を判断するうえで重要な審査項目です。一般的に年齢が若く、年収が高ければ返済能力が高いと判断され、審査でも有利になります。金融機関によっては年収の最低条件を設けているケースもあるので、事前にチェックするようにしましょう。

また、大企業や上場企業、公務員など安定した勤務先で働いていることも、審査で評価されるポイントの一つです。さらに勤続年数が長ければ、より有利になるでしょう。

一方、特定の企業に所属しないフリーランスや個人事業主は不利になりがちなので、ほかの審査項目で評価を上げるか、頭金を多く支払うなどの対策が必要です。

今の家の住宅ローンの残債額

現在利用している住宅ローンの残債額も重要な審査項目になります。住み替えローンの借入額は、住宅ローンの残債と新居の購入費用を合算して決めるため、残債額が大きい場合、多額の借入が必要です。

したがって、住宅ローンの残債額が少ないほど、住み替えローンで必要な借入金額も小さくなるので、審査に通りやすくなります。

もし所有している物件を高く売却できれば、その分だけ自己資金が増え、借入金額を減らすことができます。物件の資産価値も審査を有利に進めるための大事な要素になるでしょう。

過去の借入・返済歴

住み替えローンに限ったことではありませんが、過去の借入や返済歴も審査に影響します。たとえば借金やローンの返済を延滞したことがある場合は、審査では不利になってしまうでしょう。

また、クレジットカードの滞納・延滞や契約違反なども審査の対象になるほか、クレジットカードのキャッシング枠はいつでも借り入れができるとみなされ、その分が住み替えローンの借入額に加算されて審査されるため、借入可能額が下がる可能性があります。

これは、クレジットカードに限らず、カーローンや教育ローンなどほかのローンでも同様です。場合によっては住み替えローンの審査に備えてほかのローンを繰り上げ完済したり、不要なキャッシュカードを解約したりするのも良いでしょう。

健康状態

住み替えローンは長期間のローンになることが多いので、借主の健康状態は重要視されます。

もし借入期間中に病気や怪我により働けなくなった場合、返済が困難になる可能性があるため、金融機関は、団体信用生命保険(団信)への加入を必須条件とする場合がほとんどです。もし健康状態が悪い場合、団信に加入できず、住み替えローンの利用を断念せざるを得ない場合もあるでしょう。

新居の資産価値(担保評価)

万一住み替えローンを返済できなくなった場合に備え、銀行は物件を差し押さえ・売却して残債を回収するための「抵当権」を設定します。ただ、物件の売却益が低いと残債を回収しきれないため、たとえば建物の築年数が古いなど、物件の資産価値(担保評価(注))によっては借入額が下がることがあります。

注…金融機関でローンを借り入れる際、担保にする不動産の評価のこと

金融機関の住み替えローンを比較

最後に主要銀行が提供している住み替えローンを紹介します。利用条件、融資金額などを比較して、それぞれの特徴を掴んでください。(商品説明は、いずれも2023年8月時点の情報です。)

みずほ銀行「みずほ買い替えローン」

みずほ銀行では住み替え(買い替え)向けの商品として「みずほ買い替えローン」を提供しています。産休・育休時の収入減少、子どもの進学による教育費支出増加など、ライフイベントによる収支の変化に応じて返済額を増減できる「ライフステージ応援プラン」というオプションが利用できます。

商品の基本情報は以下の通りです。

年齢条件 ・満18歳以上満71歳未満
・ローン完済時満81歳未満
年収条件 ・指定なし(安定した収入があること)
金利の種類 ・変動金利型
・固定金利選択型
・全期間固定金利
融資金額 ・50万円以上3億円以内
団体信用生命保険 ・加入が必要
その他 ・売却する自宅の住宅ローンに延滞等のないことが条件

出典:みずほ銀行「みずほ買い替えローン」

三井住友銀行「WEB申込専用住み替えローン」

三井住友銀行ではWEB上から申込を行う「WEB申込専用住み替えローン」を提供しています。パソコンやスマートフォン上で審査の申込みから契約までスピーディに手続きできる点が大きな特徴です。忙しくて店舗に出向く時間がない方にとっては、便利な商品と言えるでしょう。

ただし「前年度の年収が500万以上であること」という厳しい年収条件を設けています。

商品の基本情報は以下の通りです。

年齢条件 ・満18歳以上満70歳未満
・ローン完済時満80歳未満
年収条件 ・前年の税込年収が500万円以上
金利の種類 ・変動金利型
・固定金利選択型
・超長期固定金利型
融資金額 ・100万円以上1億円以内
団体信用生命保険 ・加入が必要
その他 ・現在の住宅ローンが借入後4年以上経過しており、直近1年間で返済に遅延がないことが条件
・融資金額に対して2.2%(消費税込)の銀行手数料が必要

出典:三井住友銀行「WEB申込専用住み替えローン」

りそな銀行「りそな住みかえローン」

りそな銀行が提供する「りそな住みかえローン」の特徴は、年収条件が100万円以上とハードルが低く、金利も主要銀行の中では比較的低い傾向があります。

商品の基本情報は以下の通りです。

年齢条件 ・満20歳以上満70歳未満
・ローン完済時満80歳未満
年収条件 ・前年の税込年収が100万円以上
金利の種類 ・変動金利型
・固定金利選択型
融資金額 ・50万円以上1億円以内
団体信用生命保険 ・加入が必要
その他 ・給与所得者の場合は勤続年数1年以上、給与所得者以外の場合は勤続または営業年数が3年以上あることが条件
・利用中の住宅ローンを借入開始から3年以上正常に返済されていることが条件

出典:りそな銀行「りそな住みかえローン」

「住み替えローン」を活用する前に、しっかりと計画を立てましょう

住み替えローンは、住宅ローンが残っている状態で住み替えをしたい方にとって、とても便利な方法です。

ただし、審査が厳しく金利も高くなる傾向にあるため、「残債を減らす」「頭金を増やす」などの返済負担を減らす対策も同時に考えましょう。検討する際は、実際に住み替えローンを利用した場合のシミュレーションをしておくことをおすすめします。

現在所有している物件を高く売却できるように工夫することも大切です。もし不安な点があれば、早めに信頼できる不動産会社や利用している金融機関へ相談してみましょう。

草野芳史

監修者

草野芳史

ファイナンシャルプランナーCFP(R)/住宅ローンアドバイザー/宅地建物取引士/金城学院大学非常勤講師

建設業界歴20年以上の、建築に精通した住宅専門ファイナンシャルプランナー。住宅購入者の味方として、資金計画・住宅ローン、物件・住宅会社選びや建物検査、さらに入居後のライフプランまで一貫して、マイホーム購入を成功に導く専門家。「本当の意味で住宅購入者の味方でありたい」との想いから、住宅や保険、ローンなどの商品を売らないファイナンシャルプランナーとして名古屋駅前に家計とマイホーム相談室を設立。「安心してお得に理想の家が実現した」と喜びの声が多数寄せられる。売り手主導で“クレーム産業”と呼ばれる住宅・不動産業界の体質を変え、買い手主導の家づくりを世に広めるべく、奮闘中。

会社ホームページ:https://my-home-fp.com/

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