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家族信託とは?仕組みや必要な状況、司法書士に相談するメリットをご紹介

2024.02.06

家族信託は、認知症など当人の記憶力や判断力が衰えて、財産管理ができなくなった際に、財産の処分などが困難になった際に有効ということから現在注目されている財産管理の方法です。
いざという時のリスクに備えて、あらかじめ金銭や不動産を家族に託すことで柔軟に財産を管理できる手段として有効な家族信託ですが、家族信託自体は比較的新しい制度であり、まだ一般に浸透しているとはいえないため、実際に内容をしっかり把握している方はまだ少数かもしれません。また、成年後見制度との違いがわかりにくいと感じている方もいるでしょう。
そこで、家族信託の仕組みや活用事例、司法書士に相談するメリットをご紹介します。

なぜいま家族信託が注目されているの?

家族信託は、改正信託法によって2007年に施行された比較的新しい制度です。認知症により判断能力を喪失してしまっても、本人の財産を家族で守ることができる制度として、家族信託は注目されています。

認知症とは何らかの原因で通常より速いスピードで脳細胞が壊れ、記憶障害や理解力・判断力の低下などが起こる状態です。高齢になるほどリスクが高まるため、高齢化が進む日本では、認知症になる人が増えています。2018年には認知症の人は500万人を超え、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症という見込みが発表されました。団塊世代が75歳以上になる2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症になると予想されています。
認知症は誰もがなりうる病気です。現在の日本では認知症が身近な病気となっているため、家族や身近な人が認知症になり、心配したり苦労をしたりした経験のある人も多いでしょう。

家族が認知症になったときに、特に困るのが財産の管理です。認知症により判断能力が低下すると、財産を管理するのが難しくなります。しかし、家族であっても、勝手に当人の財産を管理したり処分したりすることはできません。また、家族の一人が勝手に財産の管理や処分を行うと、他の家族と揉める可能性もあるでしょう。

家族信託では、あらかじめ定めた目的に従って、家族が財産管理できるように契約を結びます。管理を任された家族は決められた目的に合致していれば、財産を柔軟に活用することが可能です。認知症になっても家族が継続的に財産管理できる手段として、家族信託は注目されています。

そのほか、認知症になった際の当人の支援として「成年後見制度」の利用を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、成年後見人は当人を保護・支援するための制度であり、本人の財産を保全することを前提としていることから、家族が財産を柔軟に活用することができません。

家族信託の仕組みと概要

ここまで、家族信託がもしもの際に有効な財産管理の方法だと説明してきました。ここからは、もっと詳しく家族信託の仕組みや概要を解説します。

家族信託の仕組み

家族信託は次の3者による制度です。たとえば、父親の財産を娘が管理する家族信託を想定すると、次のような当事者関係になります。
委託者(父):財産を託す人
受託者(娘):財産を預かる人
受益者(父):財産の利益を受け取る人


家族信託は、委託者が自分の財産を受託者に託し、目的に従って受益者のために財産を管理・運用・処分する制度です。委託者と受託者は事前に信託契約を結び、どの財産を受託者に管理させるかなど、内容を決めます。
上のイラストのように、委託者(父)の生活や介護・医療を目的として委託者(父)と受託者(娘)で事前に信託契約を結んでおいた場合、委託者(父)が認知症になったり自分で財産を管理できない状態になったりしても、委託者(父)所有の不動産や預貯金など、信託された財産の管理・運用・処分を受託者(娘)ができるため、委託者であり受託者の父の生活を支えることが可能です。このように、委託者と受益者は同じ人になることが多くなります。
続いて、家族信託の概要を簡単に解説します。

家族信託のメリット

財産の所有者(委託者)は元気なうちに、財産管理をお願いする人(受託者)と財産の管理・運用・処分の目的を決定します。決められた目的に沿っていれば、受託者は委託者の財産を積極的に活用可能です。たとえば、次のような活用方法があります。
介護費用を捻出するために委託者の自宅を売却する
在宅介護できるように委託者の自宅をリフォームしたり買い換えたりする
委託者が所有する賃貸物件の管理や契約を行う

家族信託の活用事例とは?

家族信託は認知症だけではなく、障がいをもつ子の「親亡き後」など様々なケースで活用できます。家族信託を検討したい具体的なケースをご紹介します。

財産の所有者の認知症に備えて

認知症になると判断力が低下するため、財産の管理ができなくなる可能性があり、契約を結ぶことができなくなります。たとえば、認知症になったときに次のような状況が想定される場合、家族信託を検討するとよいでしょう。
自分が有料老人ホームに入居することになったあと、自宅の管理・運用・処分を家族が行えるようにしておきたい
所有する賃貸物件の賃借料で生計を立てているので、判断能力が低下しても継続できるようにしておきたい
判断能力が低下しても、所有する不動産のリフォームや建設などといった資産管理を継続できるようにしておきたい

認知症になる前の対策として家族信託を締結しておけば、財産の所有者が認知症になっても家族が継続して柔軟に財産を管理できるようになります。

障がいを持つ子どもの「親亡き後」

認知症の高齢者だけでなく、知的障がいや精神疾患などのある家族を守るのにも、家族信託を活用できるでしょう。知的障がいや精神疾患などによって、お金の管理ができない子どもは親が亡くなったあと生活ができなくなる可能性があります。家族信託によって兄弟姉妹などが財産の管理をできるようにしておくと、親が亡くなったあとに備えることもできます。

家族信託と同様に利用されることが多いのが成年後見制度です。家族信託のほうが成年後見制度よりも柔軟に財産を活用できる点が異なります。家族信託と成年後見制度の違いは次の章で詳しく解説します。

家族信託と成年後見制度はどのような違いがある?

認知症の家族を守る手段として、家族信託の他に「成年後見制度」があります。成年後見制度の特徴や家族信託との違いを解説します。それぞれの特徴やメリットデメリットを踏まえたうえで、ご自身のかかわるケースにはどちらの方が適しているかを考えてみましょう。

成年後見制度(法定後見制度・任意後見制度)


成年後見制度は認知症や知的障がい、精神障害などによって判断力が不十分な状態になる方を保護したり支援したりする制度です。財産の管理だけでなく、介護・医療サービスに関する契約を結んだり悪徳商法から守ったりすることも後見人の役割となっています。

成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。
1.法定後見制度:本人の判断力が不十分になったあとに申し立てることで、家庭裁判所が成年後見人などを選任する制度。
2.任意後見制度:本人の判断力がしっかりしているうちに、自分で任意後見人になる人や委任する内容を決めておき、判断力が不十分な状態になったときに備える制度。
ここからはそれぞれの成年後見制度の概要や成年後見制度に共通するデメリットを解説します。

■法定後見制度
法定後見制度の概要や特徴は次の通りです。
・判断能力が不十分になったあと申立により裁判所が成年後見人を選任する
・成年後見人の権限は、財産管理だけでなく、医療や介護、施設入居などに必要な契約・手続を行う身上監護も含む
・本人が締結した不適切な契約を取り消すことが可能
・家庭裁判所への報告が必要
・専門家が成年後見人になるときは報酬の支払いが必要

■任意後見制度
任意後見制度の概要や特徴は次の通りです。
・判断能力が十分あるうちに、任意後見人になる人と委任事務内容を契約する
・判断能力が不十分になったあとに、任意後見監督人が裁判所により選任され、任意後見人は委任された事務を代行する
・権限は任意後見契約で定めた範囲内のみ
・本人が締結した不適切な契約に対する取消権はない
・家庭裁判所への報告が必要
・任意後見契約書で定めた任意後見人の報酬と、後見監督人の報酬の支払いが必要

■成年後見制度のデメリット
成年後見制度ですが、デメリットもいくつかあります。
・財産の管理状況を定期的に家庭裁判所に報告しなければならない
・専門家が成年後見人などになるときは、毎月報酬を支払う必要がある
・本人の財産保護が目的なので、積極的な運用はできない

家族信託

家族信託はあくまでも財産の管理のみを行う制度です。成年後見制度と比較して、家族信託は次のような特徴があります。

・家族だけが関与して財産管理ができる
・家庭裁判所への報告などは必要ない
・柔軟で積極的な財産管理・活用ができる
・委託者が死亡したあとの財産の承継者を指定する、遺言のような機能もある
・信託契約に定めなければ報酬の支払いは不要

家族信託は成年後見制度よりも負担や制約が少ない制度です。ただし、法定後見制度とは異なり、本人が締結した不適切な契約の取消や、施設入居契約などの身上監護は役割に含まれません。
判断力が十分にあるうちに契約締結しなければならない点は任意後見制度と共通しています。しかし、任意後見制度とは異なり、元気なうちから信託契約の効力を発生することもできます。

信託契約を結ぶときに公正証書の作成や信託口座の開設などが必要ですが、財産管理を家族が行うため、専門家への報酬の支払いは必要ありません。
財産の管理・運用・処分も、家族信託では後見制度よりも柔軟に行えます。たとえば、成年後見制度では原則認められていない不動産の売却や処分は、あらかじめ決めた目的に合致しているなら行うことが可能です。

家族信託について司法書士に相談するメリット


家族信託を検討する際は、法律の専門家に相談することをおすすめします。家族信託では、不備が生じないようにあらゆる状況を考えてルール作りが必要です。さまざまな状況を勘案しながら長期間にわたる契約書を作成するのは、難しい作業といえます。
法律の専門家のなかでも、司法書士は成年後見・任意後見・遺言の作成・相続登記などの業務を扱っていることから、家族信託以外の選択も含めて比較しながら相談に乗ってもらうことができます。信託財産に不動産がある場合には、信託登記手続までワンストップで依頼できるところもメリットといえるでしょう。

このように、司法書士は家族信託を検討する際に出てくるさまざまな疑問や不安を相談できる専門家です。契約締結後も財産の管理方法などに不安があれば、司法書士は相談に乗ってくれます。

家族信託を検討する際は司法書士に相談しよう

家族信託は高齢化が進み認知症になる人が増えるなかで、注目されている制度です。家族信託を利用すれば、認知症になった人の財産を信頼できる家族が継続的に管理できます。認知症になった人の財産を柔軟に管理し生活や介護・医療などに使えることは、本人にとっても家族にとっても大きなメリットです。
家族信託と成年後見制度のどちらが自分や家族の状況に適しているのかを知りたいときは、法律の専門家に相談して比較してみることをおすすめします。
司法書士は、家族信託や成年後見制度、遺言の作成など、高齢化社会で発生する困り事を解決に導く専門家です。素人には難しい家族信託の契約書類を作成したり、信託登記の手続をしたりすることも可能です。さまざまな手続を一貫で依頼できるので、認知症になったときの財産管理について検討する際は、司法書士に相談してみてはいかがでしょうか。

小林 美咲

監修者

小林 美咲
司法書士

マザーシップ司法書士法人に所属。不動産登記・商業登記・裁判業務・成年後見業務等、多岐に渡る業務に従事。特に、相続関係手続きについては、長期間相続手続きをしてない、相続人多数など、解決困難事案に携わる。相続関係の書籍の執筆なども手がけている。
マザーシップ司法書士法人ホームページ:https://www.mother-ship.jp/mss/

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