家族信託と任意後見制度の違いとは?それぞれの特徴を理解しよう

2024.05.13

家族信託と任意後見制度は、どちらも認知症などに備えて財産管理に関する取り決めを行う制度ですが、目的や特徴に違いがあります。

たとえば、家族信託は契約を結んだ時点で受託者(ご家族など)に財産管理の権限が発生するのに対し、任意後見制度は原則上、ご本人が認知症と診断されてから支援スタートとなるのが特徴です。

こちらの記事では「家族信託」と「任意後見制度」の違いを解説します。それぞれの制度の目的や相違点・共通点を理解して、ご家族の希望に合った適切な制度を選択しましょう。

家族信託と任意後見制度の目的の違い

家族信託と任意後見制度の制度としての違いを確認する前に、まずは各制度の目的について確認しましょう。

  • 家族信託の目的:委託者(ご本人)の将来的な認知症発症などによるリスクを防ぐために、現在の時点から受託者(ご家族など)に財産管理を任せること
  • 任意後見制度の目的:委託者(ご本人)の将来的な認知症発症などによる判断能力低下に備え、財産管理や生活上必要な手続きをする任意後見人(ご家族など)を決めておくこと

受託者による積極的な財産管理を望むであれば家族信託、任意後見人による身上監護も必要であれば任意後見制度が適していると言えます。それぞれの目的を理解して、契約当事者の意向に沿った制度を検討しましょう。

家族信託の目的

家族信託は、委託者(ご本人)が将来的に認知症などを発症することで資産が凍結されるのを防ぐため、契約締結と同時にご本人のご家族などの受託者が財産管理を始める方法です。信託契約の内容は任意後見制度よりも自由度が高く、財産の管理から運用、処分までを受託者(ご家族など)に任せられます。

財産の所有者が健康で十分な判断能力がある間なら、家族信託の契約はいつでも締結が可能です。また、財産管理を任せる相手は必ずしもご家族とは限らず、信頼できて合意に至れる相手なら、弁護士や友人・知人といった第三者も指定できます。

任意後見制度の目的

任意後見制度は、認知症などにより判断能力が低下した際に備え、あらかじめご本人が生活上で不利益を被らないように契約しておく方法です。万一のときは、ご本人と契約で合意した任意後見人(ご家族など)が、契約に沿った財産管理や生活上必要な手続きなどの身上監護を行います。

この制度の特徴は、締結された任意後見契約はご本人が認知症などと診断されたときに効力をもつということです。正確には、判断能力が十分でなくなったと気付いた周囲の方が、任意後見監督人の選任申立てを家庭裁判所で行い、支援が開始されます。

家族信託と任意後見制度の違い・共通点

家族信託と任意後見制度の目的を把握したところで、制度の詳細を比較してみましょう。2つの制度には異なる点もありますが、契約できる条件など共通していることもあります。

家族信託と任意後見制度の相違点 ・財産管理を開始するタイミング
・積極的な財産管理の可否
・身上監護権の有無
・裁判所による監督
家族信託と任意後見制度の共通点 ・認知症が進行したときの資産凍結対策
・本人が受託者、後見人を選べる
・契約締結時は判断能力が必要

家族信託と任意後見制度の違い

財産管理を開始するタイミング

家族信託と任意後見制度では、支援者による財産管理の開始タイミングが異なります。

家族信託は、信託契約の締結と同時に支援者(受託者)による財産管理をスタートさせる契約です。一方の任意後見制度は、契約内容によるものの、原則としてご本人の判断能力が落ちてしまったときから、支援者(任意後見人)による財産管理が始まります。

このように、家族信託は早い段階から支援者が財産管理を始められるのに対し、任意後見制度は判断能力の低下が明確になってから支援が開始される点が大きな違いです。

積極的な財産管理

任意後見制度と家族信託では、財産管理の自由度に違いがあります。

任意後見制度は成年後見制度の一種であるため、ご本人の財産を損ねる可能性がある行為は、原則として認められません。たとえば、賃貸経営や株式投資などは制限の対象です。利益や損切りを見越した資産の組み替えも、基本的にはできません。

これに対して家族信託の受託者(ご家族など)は、委託者(ご本人)の意思に沿って自由な管理・運用が可能です。ただし、信託契約内で「何ができるのか」をあらかじめ明確にしておく必要があります。そうすることで、投資を含めた積極的な財産管理を行えるようになります。

身上監護権

家族信託と任意後見制度の違いの一つに、身上監護権の有無も挙げられます。身上監護権とは、ご本人の生活を維持するために必要な行為を代行する権限のことです。権限がある方(ご家族など)は、ご本人の生活に必要なインフラに関する手続きや入院・施設入居などの健康な暮らしに関わる手続きの補助、代理ができます。

家族信託は財産管理をメインの目的とする制度であるため、身上監護権は含まれていません。一方、任意後見制度は判断能力が十分ではなくなった方の保護を目的とする成年後見制度の一つであり、任意後見人には身上監護権が付与されます。

裁判所による監督

任意後見制度と家族信託では、裁判所による監督の有無が異なります。任意後見制度で財産管理を開始するには、任意後見監督人の選任が必要です。選任された監督人を通じて、家庭裁判所の管理下で本人の支援が行われます。

対する家族信託の受託者(ご家族など)は裁判所の監督を受けません。受託者(ご家族など)が委託者(ご本人)に合意の上選ばれており、かつ信託契約の範囲内であれば、受託者の判断で自由に財産管理を行うことが可能です。

【監修者からひとこと】
受託者の業務に不安がある場合は、信託契約時に「信託監督人」や「受託者代理人」を置くこともできます。任意後見監督人や家庭裁判所と似たような役割を果たすため、弁護士や司法書士に任せるのが一般的です。

家族信託と任意後見制度の共通点

認知症が進行したときの財産凍結対策

任意後見制度と家族信託は、認知症でご本人の判断能力が落ちてしまった際の財産凍結に備えられるという点で共通しています。任意後見制度ではあらかじめ後見人を決めておき、家族信託では契約時から受託者に管理の権限を移すことで、ご本人の状態に関わらず資産の取引や払い戻しが可能になるでしょう。

これらの制度を活用しないと、判断能力が低下したときに法律上「意思能力がない」とみなされ、預金口座からの出金を含む財産移動が停止されかねません。契約を結んでおくことで、生活費の出金から運用中資産の管理までを途切れなく続けられるようになり、ご本人の生活安定につながります。

受託者・後見人の選任

任意後見制度と家族信託のもう一つの共通点は、委託者みずから財産管理を任せる相手を選べることです。相手との合意は必要ですが、どちらの制度も、ご本人の希望しない第三者が直接的に財産管理へ関与する余地はありません。

契約締結時の判断能力の必要性

任意後見制度も家族信託も、契約という法律行為の一種であり、契約時にはご本人の意思能力があることが前提となります。ご本人の認知症が進行し、ご本人の財産や取引内容・契約内容について適切に判断できる状態にないと周囲に判断された場合、有効な契約ができません。

つまり、両制度ともご本人に十分な判断能力があるうちに契約締結まで完了させておく必要があるでしょう。認知症が進行してしまった場合、周囲の申立てで家庭裁判所に支援者を選んでもらう「法定後見」以外の手段はなくなります。

家族信託と任意後見制度の費用

家族信託と任意後見制度の費用を比較すると、手続きの時点では家族信託のほうが高額になる傾向があります。ただし、利用中にかかる費用に着目すると、任意後見制度は後見監督人だけでなく任意後見人に対しても報酬が発生する可能性があります。

ここからは両制度の費用面について解説します。

家族信託にかかる費用

家族信託を設定する際の費用は、ご自身で手続きする場合だと20万円前後が目安です。一方、専門家に依頼する場合は50万〜100万円程度が相場となります。

専門家への依頼は費用が高くなりますが、手続きをスムーズに進められるほか、契約におけるトラブルを防止できるのが利点です。費用を惜しんでご自分で手続きをした場合、思った通りの財産管理ができなかったり、親族間でトラブルになったりなどの問題にも発展しかねません。

こうした問題を避けるためには、弁護士や司法書士・家族信託サービスの提供会社などにサポートを依頼するのが有効です。

【監修者からひとこと】
そのほか、必要に応じて信託契約中に受託者に報酬(信託報酬)を支払う場合があります。受託者が第三者であったり、信託業務の負担が重かったりする場合の措置です。

任意後見制度にかかる費用

任意後見制度を締結する際には、公正証書による契約書を作成するのが一般的です。公正証書の作成には、下表に挙げたような費用がかかります。

■任意後見契約:公正証書作成に必要な費用

作成の基本手数料 11,000円
登記嘱託手数料 1,400円
登記所に納付する印紙代 2,600円
そのほかの費用 ご本人らに交付する正本等の証書代、
登記嘱託書郵送用の切手代など

引用元:任意後見契約公正証書の作成に必要な費用について|厚生労働

また、任意後見人になってもらう方や合意内容によっては、契約で定めた後見報酬を支払う必要があります。近しいご家族なら無償となることが多いものの、司法書士などの専門家を任意後見人にした場合は、月額2万~4万円(年額24万~48万円)を目安に報酬設定しなければなりません。

そのほか、任意後見監督人についても、家庭裁判所の決定で5,000~3万円程度の月額報酬が発生します。

家族信託と任意後見制度の違いを理解して利用しよう

家族信託と任意後見制度は、認知症などによる判断能力の低下に備え、財産の管理を信頼できる方に任せる手段です。ここまで解説したそれぞれの違いを以下の表にまとめます。

項目 家族信託 任意後見制度
財産管理を開始するタイミング 信託契約の締結と同時に開始 ご本人の判断能力が落ちたときから開始
積極的な財産管理の可否 委託者(ご本人)の意思に沿って、自由な管理・運用が可能 ご本人の財産を損ねる可能性がある行為は原則不可(賃貸経営や株式投資は制限の対象)
身上監護権の有無
裁判所による監督
※信託契約時に「信託監督人」や「受託者代理人」を置くことも可能
費用 ・ご自身で手続きする場合は20万円前後
・専門家に依頼する場合は50万〜100万円程度
・公正証書作成の費用:手数料などに15,000円+証書代や切手代
・任意後見人への報酬:専門家に依頼する場合は月額2万~4万円程度
・任意後見監督人への報酬:裁判所の決定に応じて月額5,000~3万円程度

こうした違いから、受託者(ご家族など)に積極的に財産の管理・運用を任せたい場合や、継続的な費用支払いを避けたい場合には「家族信託」が、ご本人の判断能力低下後に財産管理を託したい場合や、身上監護を前提とする場合には「任意後見制度」が適しているといえます。

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遠藤 秋乃

執筆者

遠藤 秋乃
司法書士/行政書士/ライター

大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。
転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。
2017年に退社後フリーライターへ転身し、現在も活動中。
培ってきた知識や相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応した経験をもとに、原稿執筆を行う。

SNS:https://twitter.com/akino_endo

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