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定年退職ののち、社会貢献を生きがいとして充実したセカンドライフを過ごしたいと考える方は多いのではないでしょうか。そのような方には、シニアボランティアに参加するという選択肢もあります。
本記事では、シニアボランティアの現状や、メリットや種類、参加するうえでの注意点について解説します。
地域活動やボランティア活動に取り組む、60歳以上の人の割合は?
「人生100年時代」と言われるなか、60代以上の方々は、どのように社会活動に取り組んで、それによりどのようなメリットを享受しているのでしょうか。まずはデータで見ていきましょう。
内閣府の『高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果』(2021年)によると、日ごろとくに心がけている点や活動に「社会奉仕、ボランティア活動」と回答した人の割合は、60歳以上の男女で11.9%でした。男性は14.2%で女性の9.7%に比べて高い関心がうかがえました。
また、65歳以上を対象に調査を行った内閣府の『高齢社会白書』(2023年版)のデータでは、社会活動(健康・スポーツ・地域行事など)に「参加した」方のほうが、「参加していない」と答えた方よりも、健康状態が「良い」と回答し、ボランティアを始めとした社会参加活動は健康に良い影響があることも明らかになっています。
なお、社会活動に参加して良かったこととして「生活に充実感ができた」「新しい友人ができた」「健康や体力に自信がついた」という回答が多くあがっていました。ボランティア活動は、社会との接点や健康維持につながるだけでなく、充実したセカンドライフを送るうえでも重要な要素になり得るのです。
シニアボランティアをするメリット
では、シニアボランティアをすることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、主な4つのメリットを紹介します。
新たな生きがいを感じる
定年退職後、社会との接点がなくなったことで「自分の役割がなくなった」と、孤独感や喪失感を抱く方も少なくありません。
ボランティア活動に参加すると、社会との接点が生まれ、誰かの役に立つことができます。人に喜ばれたり感謝されたりする充実感や満足感を得ることで、ボランティア活動に新たな生きがいを感じられるわけです。
心身の健康を維持できる
定年退職後、家で過ごす時間が長くなると、以下のようなリスクが高まります。
- 体を動かさない状態が続き、筋力が低下して足腰が弱くなる
- 人に会う機会が減り、脳の老化や老人性うつなどを発症する
心身ともに健康な毎日を送るためには、日頃から人と交流をしたり、体を動かしたりすることが重要です。
シニアボランティアは、外出をして適度に体を動かすきっかけになるため、運動不足の解消にも適しています。気分転換やストレス解消にも役立つでしょう。
新しい友人・知人ができる
人間関係の輪が広がることもシニアボランティアに参加するメリットです。
ボランティアで知り合った人と親しくなり、ボランティア内外で交流することで、充実したプライベートを過ごすことができます。また、友人との交流は脳を刺激し活性化させるので、認知症予防など心身の健康にも良い影響を与えます。
社会貢献ができる
ボランティアは当然ながら社会貢献につながる活動です。年を重ねてから参加するボランティアは、これまでの人生で培ってきた経験や知識を生かし、社会に貢献できます。
ボランティアには、子育てや仕事、趣味など、これまでの生活のなかで得てきた知見を必要とするさまざまな活動があります。ご自身の得意なことや興味のある分野で社会貢献をしてみてはいかがでしょうか。
シニアボランティアの種類
次に、シニアボランティアにはどのような種類があるのかを見ていきましょう。
まず、ボランティアの種類には、単発ボランティア、継続的ボランティア、物品寄付などさまざまなものがあります。
なお、注意点として、ボランティアの種類や活動内容に地域差があることは覚えておきましょう。
以下では、ボランティアの種類を6分野に分けて紹介します。
地域活性化・まちづくり
地域活性化・まちづくりの分野では、次のような活動があげられます。
- 花壇の整備や清掃活動
- 地域の自然や歴史的建造物の保全
- 防災パトロール など
これらの活動は、地域のボランティア団体を中心に行われ、地域の美化や環境保護、安心安全なまちづくりの向上を目指すものです。
歴史や文化を後世に伝えたり、地域住民の防災意識を高めたり、地域をより良くするための活動にやりがいを感じられるでしょう。
子どもの教育支援
子どもの教育支援には、さまざまな種類のボランティアがあります。そのなかで多いのは、NPO法人や地域のボランティア団体による学習サポートや子ども食堂(注)のボランティアです。
注…無料または安価で栄養のある食事、団らんの機会を提供する取り組み
学習サポートの対象は、不登校の子どもや日本語に不自由を感じる子ども、経済的な理由で塾に通えない子どもなどさまざまです。子ども食堂では、食事の準備や片付けだけでなく、子どもの話し相手になる役割も担います。
そのほか、水泳や将棋の指導、絵本の読み聞かせ、子どもキャンプや児童館のボランティアなどもあります。子どもと関わることが好きな方や、子育て経験を生かしたい方、充実した趣味をお持ちの方に向いているボランティアと言えるでしょう。
農業・環境
農業・環境の分野では、次のような活動があげられます。
- 農作業
- 雑木林の手入れ
- 川や海の清掃
- 里山保全など環境問題への対策
農作業のボランティアでは、人手不足の地域に出向き、農家の仕事を手伝います。日帰りで参加可能なものから、一定期間住み込みで作業する活動までさまざまです。
清掃や自然環境の保全活動では、きれいになったときに達成感を得られるでしょう。里山保全など環境問題に関する活動については、自治体やNPO法人などがボランティアを募集しています。
また、これらの活動は、自然にあふれた地域で行われることが多く、心身のリフレッシュにもつながるでしょう。
福祉(障がい者・高齢者支援)
福祉施設を利用する障がい者の方や高齢者の方の支援などがあります。
福祉施設でのボランティアは、特別な資格がなくても参加できるものもあります。内容は、行事やレクリエーションの補助、入所者の話し相手、洗濯物たたみ、衣類のほつれの繕い物など多岐に渡ります。
また、一人暮らしの高齢者の方がふえているため、訪問活動や社会参加支援、配食サービスに携わるボランティアは、地域での需要が高まっています。さらに、視覚や聴覚に障がいがある方に対する点訳・手話通訳のボランティアもあります。
海外・国際プロジェクト
これまで培ってきた長年のキャリアや専門性を生かし、国際的なボランティア活動をすることも可能です。
たとえば、海外派遣する団体には、JICA(独立行政法人国際協力機構)などがあります。JICAへの応募においては、健康状態や語学力、専門的な資格と実務経験の条件が設定されています。
医療技能などの特殊な技能を要さない一般案件など、募集時の年齢上限が69歳となっているものなどがありますので、興味がある方は自分のやりたい案件の年齢制限をチェックしましょう。
上記制限は「応募時」の年齢です。まだ50代・60代の方は、より早いうちから案件への応募をすることも考慮しましょう。
また、直接海外へ行かなくても、発展途上国への物品支援や募金活動など、さまざまなかたちで国際協力は可能です。
プロボノ
プロボノとは、「公共善のために」を意味する「Pro Bono Publico」というラテン語の略で、仕事を通じて習得した専門的な知識やスキルを活かして、無償で社会貢献をする活動のことです。
たとえば、前述した海外・国際プロジェクトで語学の専門性を生かした活動をすればこれにあたります。そのほか、「教員として40年働いてきた経験を活かして、子どもの学習支援を行う」「看護師資格で災害ボランティアに参加して、被災者の体調管理を行う」といったことなどがあげられます。
プロボノと一般的なボランティアとの違いは、「専門性があるかどうか」です。一般的なボランティアは、専門的な知識やスキルがなくても活動に参加できる場合がほとんどです。しかし、プロボノは、専門的なスキルや知識、経験などを必要とします。
定年退職後も「これまで培ってきた経験を使って生きがいを見つけたい」「これまでの経験を人のために役立てたい」という思いのある方は、プロボノを検討してみると良いでしょう。
シニアボランティアの探し方
参加してみたいボランティアが見つかったら、次は自分に合う条件のボランティアの募集を探してみましょう。探し方は、主に以下の3つの方法があります。
地域のボランティアセンター
ボランティアは1人でもできますが、多くの方はボランティア団体に所属して活動しています。
ボランティア団体に所属するには、まずは地域のボランティアセンターに相談しましょう。地域のボランティア団体を把握しているので、興味・関心のある活動をしている団体を紹介してもらえます。
インターネット
スマートフォンやパソコンで探す方法もあります。ボランティアの参加者を募っている募集サイトにアクセスすれば、さまざまなボランティアの情報をまとめて閲覧できます。
また検索サイトで「(地域名) ボランティア」というワードで検索して探すこともできます。
インターネットを上手に利用し、自身の住む地域、興味・関心に合った活動を探してみるとよいでしょう。
その他(イベント・出版物・知人の紹介など)
ボランティア団体が主催する地域のイベントの際に、その団体が新たな参加者を募集していることもあります。
さらに、地元の広報誌や新聞などに、ボランティアを募集する記事が掲載されていることもあります。
そのほか、ボランティア活動に参加している知人や友人に紹介してもらうなど、探し方はさまざまですので、自分に合った探し方をしていきましょう。
シニアボランティアの注意点
ここでは、シニアボランティアに参加する際の注意点を確認しましょう。
体力に気をつけ、無理をしない
ボランティア活動には、早起きや長時間の拘束、力仕事など、体に負担がかかるものもあります。歳を重ねると、自分が思っているよりも体力が落ちているケースもあるため、無理をしないことが大切です。自分の体力やペースに合ったボランティアに参加しましょう。
参加条件などをしっかりと確認する
参加条件には活動場所までの交通費や食費などの実費がかかる場合や、参加者に謝礼が支払われる場合などもあります。
ボランティアの参加条件は、ボランティア団体や活動内容によって条件が異なります。長く継続するためには、参加条件や必要となる費用を事前に確認しておくことが大切です。
ボランティア活動に参加して充実したセカンドライフを
シニアボランティアに参加すると、新しい生きがいややりがいを見つけられたり、結果的に心身ともに健康に過ごせたりと、老後の生活に潤いを得られます。
充実したセカンドライフを送るための選択肢の一つとして、シニアボランティアを検討してみてはいかがでしょうか。
以下の記事では、ボランティア以外にも充実した定年後を送るためのポイントについて解説しています。ぜひこちらもご覧ください。