• トップ
  • お金の記事
  • 空き家は相続放棄できる?保存義務や必要な費用、失敗しないためのポイントを解説

空き家は相続放棄できる?保存義務や必要な費用、失敗しないためのポイントを解説

2026.07.29

親が亡くなり、実家や空き家の相続について考え始める段階では、「相続放棄すれば全部終わるのか」「その後の管理責任はどうなるのか」といった不安を抱きやすいものです。

ここでは、空き家を相続放棄できるのかどうかを解説したうえで、保存義務が残るケースと終わらせ方、費用、失敗しないためのポイントなどについて、民法のルールを踏まえながら整理します。

【この記事で分かること】
・空き家を相続放棄する方法
・空き家の保存義務を終わらせる方法
・空き家の相続放棄にかかる費用と失敗しないポイント

空き家は相続放棄できる?

亡くなった人に属する権利義務を一切引き継がないものとする「相続放棄」は、空き家も対象です。利活用できない空き家が相続財産の大半を占め、負担になりそうなときは、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うことで所有せずに済みます。

相続放棄で注意したいのは、預貯金など利益になる財産も含め、一切もらい受けることが出来なくなる点です。「空き家だけを放棄して、預貯金は受け取る」といった対応はできません。相続放棄とは、プラスの財産を放棄すると同時に、負担になる空き家や未払い金といったマイナスの財産も相続しなくて良いとする仕組みです。

また、相続放棄が認められても、すぐに空き家と完全に無関係になるとは限らない点に要注意です。ほかの相続人や家庭裁判所に選任された「相続財産清算人」に引き渡すまでのあいだ、建物の状態が大きく悪化しないよう保存する義務(保存義務)が残る可能性があります。

相続放棄後に空き家の保存義務を負うケース

相続放棄をした人が空き家の保存義務を負うのは「相続放棄をした時点で、相続財産に属する財産を現に占有しているとき」です(2023年4月施行)(※1)。

ここでいう「現に占有している」とは、その財産を事実上支配し、管理している状態を指します。空き家でいえば、次のようなケースが当てはまります。

  • 亡くなった人と同居していた場合
  • 相続放棄後も鍵を保管し、定期的に出入りしている場合

一方で、遠方に住んでいて長年別居しており、空き家の鍵や家財を持っていない場合や、相続財産にほとんど関わっていない場合は「現に占有している」とは判断されにくい傾向があります。ただし、同居していなかったとしても、定期的に帰省して掃除や換気をしていた、郵便物を確認していた、近隣からの連絡に対応していたといった事情があると、保存義務の有無は個別に判断されることがあります。

そのため、相続放棄をしたからといって、すぐに空き家を放置してよいわけではありません。自分が現時点で現に占有している可能性があるなら、次の相続人や相続財産清算人への引き渡しまで、建物の状態を悪化させない対応が必要です。

相続放棄後に必要となる空き家の管理・保存の内容

民法第940条では、相続放棄をした人が相続財産を現に占有している場合の責任として「他の相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産と同じ程度の注意をもって保存しなければならない」と定められています(※2)。

つまり、相続放棄をしたあとも、空き家を手元に置いている状態であれば、自分が住む家と同じように維持・管理しなければなりません。

ここで求められるのは、建物を積極的に活用したり、大規模に修繕したりすることではなく、空き家の状態を大きく悪化させないための対応です。具体例としては以下が挙げられます。

  • 建物の倒壊や破損を防ぐための応急処置をする
  • 清掃・換気などを行い、衛生環境を保つ
  • 庭木や雑草を処理し、近隣に枝葉が伸びないようにする
  • 第三者の侵入や不法投棄を防ぐため、看板を立てる

一方で、自己判断で空き家を解体したり、売却したり、大規模なリフォームを行ったりするのは避けましょう。こうした行為は「相続財産の処分」とみなされ、放棄したはずの財産を相続したものとして扱う「単純承認」になってしまうおそれがあります。

相続放棄後の空き家を放置するリスク

相続放棄後でも、保存義務が残る立場にある人が空き家を放置すると、近隣トラブルや防犯上の不安、自治体からの指導につながるおそれがあります。最悪のケースとして考えられるのは、損害賠償責任を負ったり、強制的に行われた解体工事の費用を請求されたりする場合です。

近隣や通行人に損害を与える可能性がある

保存義務があるにもかかわらず空き家を放置すると、老朽化した屋根材や外壁、ブロック塀などが崩れ、近隣住宅や通行人に被害を与えるおそれがあります。台風や強風で屋根の一部が飛散したり、庭木や雑草の放置によって害虫が発生したりすることもあるでしょう。実際に被害が出た場合には、保存義務を負う人が損害賠償責任を問われます

犯罪や不法投棄に利用される可能性がある

人の出入りが少なく、管理されていない空き家は、第三者の侵入や不法投棄の対象になりやすくなります。窓や扉の破損、たまった郵便物、伸び放題の庭木などは、外から見ても放置されているとわかりやすく、防犯上の不安を高めてしまいます。施錠の確認や郵便物の整理などを行い、無管理に見えない状態を保たなくてはなりません

特定空家等や管理不全空家等に指定される可能性がある

倒壊の危険がある、衛生上有害となるおそれがある、景観を損ねているといった空き家は、自治体から「特定空家等」や「管理不全空家等」に指定され、助言や指導、勧告、命令などの対象になります。最終的には行政代執行により解体工事などが強制的に行われ、その費用は所有者に請求されます。

相続放棄後の空き家でも、保存義務を負っている間は危険や近隣への影響を放置せず、必要に応じて自治体や専門家へ相談しましょう。空き家が遠方にあって定期的に様子を見に行くのが難しい場合は、空き家管理サービスを利用する方法もあります。東京ガスの「実家のお守り」では、月1回の訪問による状態確認や、換気や通水、草木の確認、郵便物の回収などの管理を依頼できます。

相続放棄後に空き家の保存義務を終わらせる方法

相続放棄後に空き家の保存義務を負ってしまっても、いつまでも管理を続けなければならないわけではありません。相続人への引き渡しや、家庭裁判所での手続きを通じて、保存義務を終わらせることが可能です。

相続人の誰かが空き家を相続する

相続放棄しなかった相続人がいれば、その相続人が空き家の保存・管理を担うことになります。相続放棄をした人が空き家を現に占有していた場合でも、相続を承認した相続人に鍵や家財、建物の占有を現実に引き渡せば、保存義務の負担を終えられるのが一般的です。

ただし、相続人全員が放棄した場合、空き家を引き受ける人がいなくなります。このようなケースでは、相続放棄をした人のうち、空き家を現に占有している人が、相続財産清算人に引き渡すまで保存義務を負い続けなくてはなりません。

家庭裁判所に相続財産清算人を申し立てる

相続人全員が相続放棄をした場合や、空き家を引き継ぐ人がいない場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる方法があります。相続財産清算人とは、相続財産の管理や清算を行う役割を持つ人です。財産を売却して未払い金に充てるなどの業務に従事し、弁護士などの専門家が選任されます。

空き家を現に占有している人は、選任された相続財産清算人に財産を引き渡せば、保存義務の負担を終えられます。注意したいのは、選任の申立てには、各種書類の交付手数料や収入印紙、郵便切手代などの費用が発生する点です。ほかにも、清算人の報酬や管理費用に充てる予納金が必要になる場合があり、その金額は数十万円から100万円前後となる可能性があります。

相続財産清算人の選任を申し立てたい場合は、家庭裁判所や弁護士・司法書士などの専門家に費用や流れを確認しながら進めると安心です。

空き家の相続放棄にかかる費用

空き家を含む相続の放棄にかかる費用は、「自分で手続きするか」「司法書士に依頼するか」「弁護士に依頼するか」で大きく変わります。ここでは、それぞれの費用感と特徴を押さえておきましょう。

自分で手続きする場合|3,000~1万円

空き家の相続放棄を自分で手続きする場合は、3,000円~1万円程度と、最低限の費用で済むことが一般的です。家庭裁判所への申述書を自分で作成し、必要な戸籍類などの書類を揃え、実費のみを負担して手続きを進めるため、コストを抑えたい人に向いています。

必要な実費 目安
収入印紙の費用 800円
戸籍謄本の取得費用 500~2,000円
郵便切手代 400~1,000円

ただし、家庭裁判所への相続放棄申述に必要な書類作成や申請の手間がかかる点はデメリットです。とくに、書類作成では必要書類の収集や、記載内容に関する一定の知識が求められます。記載漏れや添付書類の不足があると不備扱いとなり、申請が受理されないおそれもあります。

また、自分で相続放棄の手続きをする場合は、相続の開始を知ったときから3か月以内に申述しなければならないため、期限管理と書類不備の両方に注意しながら進めることが重要です。

司法書士に依頼する場合|3万~8万円

相続放棄の手続きを司法書士に依頼する場合、費用の目安は3万~8万円程度です。依頼すると、次のような業務を行ってもらえます。相続放棄に関する細かな法律知識がなくても、形式面で適切な書類を準備してもらえる点がメリットです。

  • 申請に必要な書類の作成
  • 必要書類の収集
  • 家庭裁判所へ書類送付

ただし、司法書士の主な役割は書類作成・提出に関するサポートであり、家庭裁判所とのやり取り全般を代行するわけではありません。また、手続きの過程で相続人同士の人間関係のトラブルが発生した場合や、債権者との交渉が必要になった場合など、紛争性のある対応について司法書士は関与できないことがあります。

あくまで書類面の専門家であることを踏まえたうえで、どこまでを依頼するか判断することが大切です。

弁護士に依頼する場合|5~15万円

相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合、費用の目安は5万円~15万円程度です。自分で行う場合や司法書士に依頼する場合と比べて負担は大きくなりますが、その分受けられる支援の範囲も広くなります。

  • 相続放棄に必要な書類作成
  • 家庭裁判所への申し立て手続き
  • 書類の補正や相続人との話し合い
  • 債権者との交渉
  • 相続に関わるトラブル対応

弁護士への依頼では、相続放棄に必要な書類の作成、家庭裁判所への申立て手続き、書類の補正対応に加え、相続人同士の話し合いへの助言や調整、債権者との交渉、相続に関するトラブル対応などを一括して任せやすくなります。限定承認の検討や、相続放棄を選ぶべきかどうかの相談にも乗ってもらえるため、事情が複雑な場合やトラブルになっている場合は相談先として良いでしょう。

ただし、相談内容や対応範囲によっては費用が高額になり得るため、無料相談などを活用し、見積もりで費用感を確認しておくのがおすすめです。

空き家の相続放棄で失敗しないためのポイント

空き家の相続放棄は、負担を軽減できる一方で、元には戻しづらい重い決断です。メリットとデメリット、期限などの基本ポイントを押さえてから手続きに進むことが大切です。

相続放棄のメリット・デメリットを理解しておく

空き家の相続放棄には、プラス面とマイナス面の両方があります。あらためて相続放棄の特徴からメリット・デメリットを整理すると、次のとおりです。

メリット デメリット
・経済的な負担がなくなる
・多額の負債を相続せずにすむ
・自分の将来計画に集中できる
・相続の権利は永久に失われる
・空き家の管理責任が残る可能性がある
・相続放棄に手間とコストがかかる

注意したいのは、家庭裁判所に相続放棄が受理されると、原則として撤回はできない点です。本当に相続放棄を選ぶべきか、メリットとデメリットを整理したうえで、家族と話し合いながら慎重に判断してから手続きを進めてください。

相続放棄は相続の開始を知った日から3か月以内

空き家を含めた相続放棄の手続きができる期間は「自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内」と定められています(※3)。

期限が迫ってくると、十分に情報を集める前に慌てて家庭裁判所で相続放棄の申立てをしてしまうケースも少なくありません。反対に、迷っているうちに相続放棄の手続きが完了できないまま期限を過ぎてしまうと、原則として相続を承認したものとみなされ、負債を含めてすべての財産を相続してしまいます。

冷静に判断しながら手続きするためにも、被相続人の死亡や相続開始を知った段階から、少しずつ空き家を含めた財産や負債の状況を確認し、専門家への相談も視野に入れて検討を始めておくことをおすすめします

空き家の相続放棄に関するよくある質問

空き家を相続放棄するべきかどうか、また放棄後の解体費用や責任の所在などは、迷いやすいポイントです。ここでは、判断の目安と注意点を押さえておきましょう。

空き家を相続放棄すべきか見極める方法は?

空き家を相続すると、修繕費や管理費、固定資産税、解体費用などの負担が生じます。こうした維持コストが空き家の資産価値を大きく上回る場合は、相続放棄を検討する余地があります。

一方で、賃貸や売却、二拠点生活などに活用できる可能性があるなら、相続して管理する方法も選択肢です。相続放棄をすると、空き家も含めて資産・負債すべてについて相続する権利がなくなるため、あとから「一部だけ相続したい」と考え直すことはできません。空き家に具体的な活用方法を見出せるかどうかが、相続放棄すべきかを見極める大きなポイントです。

相続する空き家がマンションの場合は、相続放棄を決める前に査定を受け、売却できる可能性を確認するのも一つの方法です。東京ガスグループのマンション買取サービスでは、相続したマンションの買取価格を無料で査定いたします。相続放棄をすると売却もできなくなるため、維持費や管理の負担と売却によって得られる金額を比較したうえで判断しましょう。

相続放棄した空き家の解体費用はだれが負担する?

相続放棄した空き家を解体する場合、その費用を誰が負担するかは、相続放棄の状況によって異なります。具体的には、次のとおりです。

  • 放棄しなかった相続人がいる場合:その相続人が負担
  • 自治体が強制的に解体した場合:現に占有している相続人
  • すべての相続人が相続放棄した場合:相続財産清算人

相続財産清算人が解体費用を負担する場合は、空き家以外の預貯金など、相続放棄された他の財産が費用の原資となるのが一般的です。相続人や相続方法が決まっていない段階で自己判断で解体すると、相続財産を処分したとみなされ、自動的に空き家を相続した扱いになる「単純承認」に移行するおそれがあります。その結果、想定していなかった費用負担が生じてしまうこともあるため、焦って空き家を解体しないよう注意が必要です。

空き家の解体を検討する場合は、相続放棄の状況や費用負担者を整理したうえで進めることが大切です。クラッソーネでは、空き家の解体工事に関する一括見積もりや、家財整理・売却などを含めた空き家処分の相談ができます。

まとめ

空き家を含む相続財産は、家庭裁判所で手続きを行うことで相続放棄の対象にできます。ただし、相続放棄を選ぶと、空き家だけでなく預貯金や借金なども含めて、すべての相続権を放棄することになる点は押さえておきましょう。

また、相続放棄後も空き家を現に占有している場合は、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務を負うため、放置による倒壊や近隣トラブル、不法投棄などのリスクにも注意しなければなりません。

遠方に住んでいて自分で見回りをするのが難しいときは、東京ガスの「実家のお守り」のような空き家管理サービスを活用する方法もあります。解体や処分を検討する場合には、相続放棄の状況や費用負担者を確認したうえで、自治体や専門家への相談、クラッソーネのような一括見積もりサービスの利用も選択肢に入れるとよいでしょう。

まずは空き家の状態と、自分が相続放棄後にどのような立場になるのかを整理し、一人で抱え込まずに、必要に応じて相談先を活用しながら対応を進めていくことが大切です。

(※1)財産管理制度の見直し(相続の放棄をした者の義務)|法務省
(※2)e-GOV法令検索|(相続の放棄をした者による管理)民法第九百四十条
(※3)e-GOV法令検索|(相続の承認又は放棄をすべき期間)民法第九百十五条

遠藤 秋乃

執筆者

遠藤 秋乃
司法書士/行政書士/ライター

大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。
転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。
2017年に退社後フリーライターへ転身し、現在も活動中。
培ってきた知識や相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応した経験をもとに、原稿執筆を行う。

SNS:https://twitter.com/akino_endo

  • この記事をシェアする
  • Facebookアイコン
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
マンション無料買取査定!

東京ガスなら提携の買取会社から
最短1日でお電話で 査定価格を
ご連絡します。

今すぐ査定を申し込む
買取サービスについて詳しく見る

関連記事を読む