目次
定年退職や子どもの独立、転勤などをきっかけに、慣れ親しんだ住まいから新しい住まいへの住み替えを検討する方も少なくありません。20年、30年先の将来のことも考えると、どのような観点で住み替え先を選べばよいのでしょうか。
この記事では、将来を見据えて住み替えを考える理由から、住み替え先の選び方、マンション・戸建てのメリット・デメリットなどについて解説します。
住み替えを検討するようになったタイミングや理由は?
不動産流通経営協会による『シニアの住宅に関する実態調査(PDF)』によれば、「住み替えの最も大きな理由」として一番多かった回答は「老後を見据えた家に住み替えたかったから」というもの。これを見ると、多くの方が老後を見据えて住み替えを検討していることがわかります。
ここでは住み替えを検討するようになったタイミングについて説明します。
定年退職を見据えて将来を意識するようになった
同調査によれば、住み替えを検討するタイミングとして最も多かったのは「退職・リタイアしたとき(リタイアを意識したとき)」でした。回答割合は、次に多かった「子どもの独立」の3倍以上です。
定年退職を機に、これまでのライフスタイルは大きく変わります。在宅時間が長くなったり、自分自身のために使える時間が増えたりと、生活の大半を占めていた仕事がなくなることを意識したタイミングで将来について具体的に考え始める傾向があります。生活スタイルが変われば、住まいに求めることも変化します。
子どもが独立した
同調査で次に多いのは、「子どもの独立」。定年退職前後は、子どもの独立とも重なりやすい時期といえます。子どもが独立することで、今まで使っていた部屋が広く感じるようになったり、子どもが小さい頃に購入した家のメンテナンスが必要になってきたりすることで、今後の住まいについて考えるきっかけになるようです。
仕事で転勤になった
仕事の転勤をきっかけに住み替えをすることもあります。転勤は基本的に配属日が決まっているため、ほかの場合と比較してゆっくり住み替え先を検討することが難しいケースです。必要に迫られても、自分の年齢や将来設計も踏まえたうえで住み替え先を検討する必要があります。
親の介護などで同居・近居する
50〜60代で、親の介護が始まる方も少なくありません。介護のスタートの多くは、在宅介護です。厚生労働省の『国民生活基礎調査の概況』によれば、介護者のうち構成割合27%超を占めるのが同居をしている子どもや子どもの配偶者となっており、介護において同居の子世代が果たす役割が大きいことを示しています。
老後を見据えて住み替え先を選ぶ際に確認したいポイント
老後を見据えた住み替えで大事なのは「どのような住まいを選ぶか」です。ここでは、将来の住み替え先を選ぶときに考えるべきポイントを紹介します。
このポイントを踏まえ住み替え先のイメージを持つことで、このあとに説明するマンションか戸建かを判断する手掛かりとなるでしょう。
生活に必要な施設への利便性
先ほどの調査で「住み替え時に重視する利便性」という問いに対して最も回答割合が高かったのが、「スーパー・商業施設の近さ」です。また「駅」「病院」「自然」などの近さを重視している方も多い傾向が伺えました。
利便性の捉え方は、定年退職前後でも変わることがあります。定年以降も可能な限り働き続けるつもりでいる場合は、駅から近いほうが、利便性が高いといえます。一方、定年退職後は年金や預金で暮らしていきたい方やさらに高齢になったときのことを考えると、生活に必要な施設から近いかどうかも大切です。
歳を重ねるたび、自転車や車の運転に不安を感じるようになっていくもの。「徒歩圏内で生活しやすいか」は、老後を見据えた住み替え先を検討するうえで必ずチェックしておきたいポイントといえるでしょう。
維持・管理のしやすさ
住んでいる人数に対して部屋が広すぎたり、管理すべき場所が多すぎたりすると、将来的に負担になってしまうことも考えられます。たとえば、室内においては掃除、設備のメンテナンスがあげられますが、室外においても戸建なら庭、屋上など、マンションであったとしても自主管理部分などがあります。物件を購入する際には、将来的に適切な維持・管理が続けられるかどうかも検討するようにしましょう。
家族構成に応じた間取り
家は、広すぎても狭すぎても快適とはいえません。維持・管理に通ずることですが、広い家は掃除や整頓が負担となったり、逆に狭い家では退職後に在宅時間が増えると暮らしにくくなったりすることも考えられます。子どもと暮らしてきた家が大きすぎると感じている場合はダウンサイジングを、逆に親や子どもとの同居を検討している場合は、今より広い家とする必要があるかもしれません。大切なのは「今」だけではなく、10年後、20年後の暮らしをイメージすることです。
バリアフリー
足腰は、加齢とともに弱くなっていくものです。「今は大丈夫!」と思っていても、年を重ねると、少しの段差が大怪我にもつながりかねません。バリアフリーの家は、高齢者が暮らしやすいだけでなく、小さな子どもがいる家庭にも好まれます。マンションであれば、共用部分にエレベータや手すり、スロープがあるか、専有部分の水まわりなどに段差はないかなどを確認しましょう。
セキュリティ
高齢者の住宅には、セキュリティも求められます。空き巣が、高齢者をターゲットにすることは少なくないからです。人目が多い立地であれば比較的防犯面で安心感がありますが、昼間はにぎやかでも夜や休日はほとんど人が歩いていないエリアもあります。物件選びの際には、時間帯や曜日をずらして見に行くといった工夫も大切です。
マンションは、一般的に戸建てと比較して防犯性が高い傾向にあります。オートロック機能や防犯カメラの有無、セキュリティ会社との契約状況もチェックするようにしましょう。
コミュニティ
老後は、仕事や子育てに充てる時間がなくなり、自由度が増します。その自由な時間を使って、日々の生活を彩るためには、趣味や友人を持てるかどうかも大切です。近隣に趣味を共有できる友人がいるか、人とのつながりが持てるコミュニティがあるか、こうした点も考えて住み替え先を検討できるとよいでしょう。
地域やマンションのコミュニティ活動、また自治体の取り組みも、住み替え先を選ぶうえで確認しておきたいポイントです。
住宅種別(マンション/戸建て)
「マンション」「戸建て」のどちらの住宅種別を住み替え先に選ぶかどうかです。それぞれのメリット・デメリットから、ご自身に合う住み替え先を導き出しましょう。
「マンション」を選ぶメリット
マンションの共用部分の維持・管理は、基本的に管理組合や管理会社が主導して行います。そのため本来居住者が行う維持・管理の負荷は、戸建てと比べて小さくなることがメリットとしてあげられるでしょう。また、オートロックなどの防犯設備を備えているマンションもあります。
最近建設されたマンションには、エレベーターやスロープの設置などバリアフリーに配慮した建物が多いのもポイントのひとつ。都市部においては利便性が高い立地であることも多いため、選択肢が幅広いのもマンションの特徴です。
「マンション」を選ぶデメリット
マンションのデメリットとして、まず管理費や修繕積立金の負担があげられます。管理費や修繕積立金は、築年数が立つほどに建物の老朽化や人件費の高騰などの社会情勢により値上げされる可能性があります。ローンを払い終えたとしても継続的にかかるこれらの費用が老後生活の負担になってしまうこともあり得るため、管理体制についても併せて確認しておきましょう。
また、最近では管理費を増額できずに管理会社への管理委託ができないマンションも問題化しています。そうしたマンションでは適切な管理ができなかったり、自主管理として居住者たちが自ら管理をしなければならなかったりするケースも。マンションへの住替えを検討する場合は、修繕積立金の状況、長期修繕計画の内容、管理体制などを必ずチェックしましょう。
さらに、場合によりマンションでは上下階の住民との騒音トラブルが発生することも残念ながらあり得ます。物件選びの際には、できる限りマンション内での過去のトラブル歴や遮音性能など、未然にトラブルを回避するための情報についても確認しておきましょう。
「戸建て」を選ぶメリット
戸建てには、リフォームやリノベーションによって自分たちのライフスタイルに合わせた間取りや設備を導入しやすいというメリットがあります。さらに子ども家族や親との同居を視野に入れている場合、マンションと比べて生活スペースが広く、家族のプライベートも守りやすいでしょう。
定年後の生活を彩るために趣味を楽しめる環境を整えやすい点もポイントです。総務省が行った『令和3年社会生活基本調査』によると、50代では1位「映画館以外での映画鑑賞」同列1位「音楽鑑賞」、3位「ゲーム」と、家で楽しめる趣味を持っている方が多い傾向にありました。そのほかにもガーデニングや日曜大工など、戸建てであればこうした趣味を楽しめるスペースを確保しやすいでしょう。
「戸建て」を選ぶデメリット
戸建てのデメリットとしては、管理の手間や防犯への配慮などがあげられます。マンションと比較して面積が広い傾向があるため、すべてを自身で管理・維持していかなければならないとなると、それなりに労力がかかります。費用は掛かるものの、管理やセキュリティの確保を外注することは可能であるため、資金計画を考慮して検討してみてもいいでしょう。
老後の生活を豊かにする準備を始めましょう
平均寿命が伸長して、人生100年時代といわれる時代。セカンドライフを楽しむためには、時間をどう使うか、どのような環境で暮らすかを早いうちから考えておくことが大切です。とくに生活の要ともいえる住まいは、老後の生活を大きく左右する要素の一つ。
まずは、自分や家族の希望に耳を傾け、理想をかたち作っていくことから始めてみましょう。この記事が、理想的なセカンドライフを実現するための一助となれば幸いです。
※この記事に含まれる情報の利用は、お客さまの責任において行ってください。 本記事の情報は記事公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。詳しくは、「サイトポリシー」をご覧ください。
※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。
※個別事案については、専門家へのご相談をお勧めします。