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認知症は何歳から発症する?物忘れとの違いや発症を抑えるポイント【医師解説】

2023.06.20

認知症は、脳の機能が低下することで物忘れなどさまざまな症状を引き起こします。進行すると日常生活にも影響を与えるようになるため、発症してしまう前からの対策が必要です。

今回は、認知症になりやすい年齢や対策を開始する目安、対策のポイントなどについて詳しく解説します。

認知症は何歳からなる?

認知症は何歳からなる?
認知症は、何歳になると発症率が高くなるのでしょうか。認知症に気を付けるべき年齢や気になる初期症状について詳しく見てみましょう。

65歳以上になると認知症の発症率が上がる

認知症の発症率は、65歳を過ぎると高くなりますが、65~69歳での発症率は1.5%です。しかし、年齢が高くなるほど発症率はどんどん上昇し、75~79歳での発症率は10.4%、80~84歳では22.4%、85~89歳では44.3%と上昇していきます。

認知症は75歳以上になると急激に発症率が高くなり、男性よりも女性のほうが認知症になるリスクが高いとされています。

認知症の原因と前触れとなる症状

認知症を発症すると、物忘れが目立つだけでなく、抑うつ気分や不安などの精神症状、徘徊などの行動異常といったさまざまな症状が現れるようになります。認知症の原因はいくつかありますが、少しずつ脳の神経細胞がダメージを受けて機能が低下していくのが一般的です。そのため、進行して日常生活に支障が生じるようになるまで発症に気付かないケースも少なくありません。

また、日常生活は問題なく送れていても、物忘れが目立つ状態のことを「軽度認知障害(MCI)」と呼びます。軽度認知障害は、認知症と正常の中間とも言える状態であり、認知症の初期段階と考えられています。軽度認知障害は年間で10~30%が認知症に進行しますが、年齢に関係なく適切な対策を行えば、症状を改善したり進行を遅らせたりすることが可能です。

若年性認知症とは?

若年性認知症とは?
認知症は年齢を重ねるごとに発症率が高くなり、一般的には65歳以上の高齢者に多く見られます。しかし、65歳以下で発症する場合もあり、そのような認知症を若年性認知症と呼びます。

若年性認知症の原因

若年性認知症の原因はさまざまですが、最も多いのは脳梗塞や脳出血などによって脳の神経細胞にダメージが生じて発症する脳血管性認知症です。次いで多いのは脳にアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積することで脳が萎縮していくアルツハイマー型認知症とされています。

脳血管性認知症を引き起こす脳梗塞や脳出血などの病気は高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病による動脈硬化が主な発症原因です。アルツハイマー型認知症も生活習慣病が発症リスクを高めるとされており、生活習慣病を放っておくと若い世代でも認知症を発症してしまう危険があります。

若年性認知症は発見が遅れがち

物忘れが増えた、気分が落ち込みやすくなった、物事を順序立てて行うことができなくなった…。このような症状があっても50代や60代前半であれば、ご自身や周囲の人が認知症の発症を疑うことはほとんどないでしょう。うつ病などほかの病気を疑って医療機関を受診する場合もありますが、適切な診断が下されないまま長い時間が経過してしまうことも少なくありません。

認知症は早い段階から治療を開始することで進行を抑えられる場合があります。65歳以下であっても物忘れが気になったり、これまでできていたことができなくなったりしたときは、放置せずに医療機関を受診しましょう。

認知症と物忘れはどう違う?

認知症と物忘れはどう違う?
物忘れは加齢に伴って生じる症状であり、日常生活に支障がなければ問題となることはありません。しかし、認知症を発症すると物忘れ以外にも多くの症状が引き起こされ、日常生活に多くの影響を与える病気です。

認知症の症状や加齢による物忘れの違いについて詳しく見てみましょう。

認知症の症状

認知症は脳の神経細胞にダメージが加わることで、脳の機能が低下していきます。物忘れだけでなく、判断力や思考力の低下によってこれまで問題なく行えていた動作ができなくなる、計画や段取りを考えて行動できなくなる、時間や場所の感覚がわからなくなるといった症状が現れます。

また、認知症は抑うつ気分、不安、興奮などの精神症状、人格変化、幻覚や妄想、徘徊や暴力行為などの行動異常といったさまざまな症状が生じるのも特徴です。進行すると活動性の低下による筋力の衰えなどで自力での歩行が困難になり、介護が必要な状態となります。また、嚥下障害や免疫力低下によって命に関わる肺炎などの病気にかかるリスクも高くなります。

加齢による物忘れと認知症の物忘れの違い

加齢による物忘れは誰にでもある症状ですが、日常生活に支障をきたすことはありません。本人は物忘れをしていることに自覚があり、つい最近のことを記憶する能力は一定に保たれています。また、一般的な物忘れは過去に体験したことの一部のみを忘れるのが特徴であり、何らかのヒントがあれば思い出すことができます。

一方、認知症による物忘れは体験したエピソードを丸ごと忘れてしまうのが特徴です。ヒントを与えられても思い出すことができません。本人は物忘れをしている自覚はなく、つい最近のことも記憶できなくなって日常生活に支障を引き起こします。

認知症対策をするのは何歳から?

認知症対策をするのは何歳から?
認知症にはさまざまな原因があり、完全に発症を予防する方法はありません。しかし、適切な対策をすることで発症や進行を抑えることが可能です。認知症対策を開始する目安や注意点について詳しく見てみましょう。

認知症対策は40歳から

認知症への対策は40歳を過ぎたら始めましょう。認知症の最多を占めるアルツハイマー型認知症の原因物質アミロイドβは、発症する20~30年前から少しずつ脳に蓄積していると考えられています。また、脳血管性認知症の原因となる生活習慣病も40歳を過ぎた頃から発症率が高まるため、40歳を過ぎたら生活習慣に注意するなど適切な対策を行うことが大切です。

自身の健康状態を知ろう

アルツハイマー型認知症も脳血管性認知症も生活習慣病が発症リスクを高めるとされています。生活習慣の乱れや遺伝によって20代や30代から生活習慣病を発症する方や、50代になって突然生活習慣病を発症する方も少なくありません。

健康状態に問題がある場合は、年齢に関係なく生活の見直しや治療をしていく必要があります。自覚するような症状がなくても定期的に健康診断などを受けて、自身の健康状態を正しく把握するようにしましょう。

認知症への備え

認知症への備え

認知症は発症や進行を抑えるため、40歳を過ぎたら対策を始めることが望ましいと考えられます。最後に、どのような備えをすればよいかご紹介します。

生活習慣を整えましょう

認知症対策は第一に生活習慣を整えることが大切です。とくに食生活や運動習慣は認知症対策の要でもあります。

認知症の原因となる生活習慣病を予防するには、栄養バランスが整って摂取カロリーが守られた食事と適度な運動習慣が必要です。なかでも運動は脳の神経細胞を活性化する働きがあることもわかっており、活動性も高まることから身体機能の維持も期待できます。無理な運動は怪我を引き起こすこともあるため注意が必要ですが、日頃からできるだけ体を動かす習慣を身につけておきましょう。

具体的な対策については以下の記事をチェックしてください。

老後資金について考えましょう

認知症を発症すると介護や入院、施設入居など、若い頃には思いもよらなかった出費がどんどん増えていきます。認知症になった場合、月々の介護費用は8万円を超えるとされており、リフォームや介護用品の購入費用にも多くの費用がかかります。
金銭面での不安はストレスになり、認知症の悪化を引き起こすことも少なくありません。将来的に不安な状態になるのを避けるためにも、50代や60代の現役時代から老後の貯蓄や保険などを見直して、希望する生活に合った計画を立てておくことをおすすめします。

将来の資金計画を立てる方法については以下で解説しています。

認知症を発症させないために

認知症を発症させないために
認知症は脳の神経細胞がさまざまな原因でダメージを受け、脳の機能が低下していきます。一般的には65歳以上で発症することが多いですが、50代や60代前半で発症する若年性認知症もあることを覚えておきましょう。

物忘れが増えてきたと感じたら、認知症の前段階とされる軽度認知障害かもしれません。今の段階で生活習慣を見直したり、生活習慣病の治療を行ったりするなど適切な対策をすることで、認知症への進行を予防できる可能性があります。

自覚症状がない場合も40歳を過ぎたら対策を行ったうえで、万が一に備えて貯蓄や保険を見直すなど安心して老後を送れるように計画を立てておきましょう。



成田 亜希子

執筆者

成田 亜希子
医師

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の診療を行ってきた。自身は二児の母。育児中は医療行政に関わり、国立保健医療科学院や公益財団法人結核予防会の結核研究所で感染症対策などを含めた公衆衛生分野の研鑽に励んだ。

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