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近年、電気代の高騰や環境への配慮から、家庭用のソーラーパネル(太陽光発電システム)と蓄電池への関心が高まっています。
これらを組み合わせることで、電気の自給自足が可能になり、さまざまなメリットが得られます。しかし、導入にあたっては初期費用や設置スペースなど、考慮すべき点も多いです。
ここでは、ソーラーパネルと蓄電池の役割や、組み合わせるメリット、導入費用、設置する際のポイントについて詳しく解説します。
ソーラーパネルと蓄電池の役割
ソーラーパネルと蓄電池は、それぞれ異なる役割を持っています。これらを組み合わせることで、家庭での電気の自給自足が実現可能です。
ここでは、各システムの基本的な役割と、組み合わせることのメリットについて説明します。
ソーラーパネルは電気を「つくる」
ソーラーパネルの役割は、太陽光エネルギーを利用して電気をつくることです。ソーラーパネルのシリコン半導体に光が当たることで、太陽の「光エネルギー」を「電気エネルギー」に変換します。
ただし、つくれる電気の量は住んでいる自宅の日射量や地域、季節により変動します。そのため、設置を検討する際は、設置業者に相談して発電量のシミュレーション(どれくらい電気がつくれるか)を確認するのがおすすめです。
蓄電池は電気を「貯める」
蓄電池は、ソーラーパネルで発電した電気や電力会社から購入した電気を貯めて使うことができる装置です。
ソーラーパネルと併用する場合、自家消費しきれなかった電気(余剰電力)が蓄電池に貯まります。これにより、夜間や曇りの日などの発電量が少ない時間帯でも貯めておいた電気を使用することができるため、電力会社から購入する電力量を減らすことができます。
ソーラーパネルを設置せずに蓄電池単体で設置する場合は、電力会社から購入した電気を貯めることができます。電気料金の安い時間帯に電気を購入し、電気料金の高い時間帯に貯めた電気を使用することで、電気代の節約が可能です。
組み合わせることで電気の自家消費率を上げる
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせることで、「電気をつくる・貯める・使う」というサイクルが実現可能となります。
このサイクルを供えておくことで、ソーラーパネルで日中に発電し、昼間は発電した電気を使い、余った分を蓄電池に貯めることができるようになります。そして、貯めた電気を夜などの発電量が期待できない時間帯に使用することで購入電力量を減らせます。
太陽光発電は従来、発電した電気を売ることを目的に設置されるケースが多くありました。しかし、近年は電気代高騰や売電価格の下落を受け、自家消費するケースが増えています。
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせるメリット
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせることで、単独で導入するよりも多くのメリットが得られます。両者を併用する主なメリットは、以下の通りです。
- 電気代の節約になる
- 停電時の非常用電源になる
- 環境貢献できる
各メリットについて詳しく説明します。
電気代の節約になる
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせることの大きなメリットは、電気代の大幅な節約です。発電した電気を自家消費することで、電力会社から購入する電気量を減らすことができます。
日中にソーラーパネルでつくり出した電気を蓄電池で貯めて利用することで、夜間などの発電できないときや雨天時などの発電量が少ないときでも、貯めておいた電気を使うことができます。
結果として、電力会社からの購入量を大幅に減らすことができるため、電気代の削減につながります。システムの導入には初期費用がかかりますが、長期的に見れば、大きな経済的メリットを得られるでしょう。
停電時の非常用電源になる
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせることで、停電時の非常用電源として機能します。
ソーラーパネル単独では、荒天時や夜間は電気が使えません。また、蓄電池単独では、事前に充電した電力しか使えないので、両者を組み合わせて使うことが大切です。在宅避難時にも電気が使えるため、生活の質を維持することが可能です。
ただし、機種や、設置の状況によっては、災害時に期待通りの機能をしないこともあり得ます。防災で使いたい場合は、しっかり専門家と計画して設置しましょう。
環境貢献できる
ソーラーパネルと蓄電池の併用は、環境貢献にもつながります。
ソーラーパネルは、CO2や排気ガスを発生させない再生可能エネルギーを活用する発電方式です。化石燃料に依存しない電力生産により、温室効果ガスの削減に貢献します。
さらに、蓄電池を組み合わせることで、発電された電気の最大限の利用が可能です。これにより、再生可能エネルギーの利用効率が高まり、より大きな環境貢献ができるでしょう。
ソーラーパネルと蓄電池の導入費用
ソーラーパネルと蓄電池の導入には、ある程度の初期投資が必要になります。
ソーラーパネルの相場は、新築か既築によって導入費用に違いがあります。新築への設置は1kWhあたり28.8万円、既築は27.8万円、全体平均で28.4万円です(※2)。一般家庭に設置される発電容量の平均は3~5kWのため、86.4~144万円が相場となります。
蓄電池の相場は、蓄電容量(貯められる電気の容量)で表すことが多く、システム本体と工事費を含んだ相場は、1kWhあたり18.7万円(※1)です。一般家庭に設置されることの多い蓄電容量は5~7kWhであることから、93.5~130.9万円が相場となります。
これらを合わせると、ソーラーパネルと蓄電池の導入費用の合計は、単純計算で179.9~274.9万円です。
費用を抑える方法としては、ソーラーパネルと蓄電池を同時に導入することが挙げられます。別々で設置するよりも設置工事費用がまとめられ、費用を抑えることができます。
また、ソーラーパネルと蓄電池の導入には使える補助金を設定している自治体も多くあるので、施工する際は業者に確認すると良いでしょう。補助金を活用することで、初期投資の負担を軽減できます。
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせる際のポイント
ソーラーパネルと蓄電池を同時に導入する際は、以下の3つのポイントを抑えておきましょう。
- 同じメーカーの組合せでも対応しているか確認する
- ソーラーパネルの出力に合った蓄電池を選ぶ
- 目的に合わせて選ぶ
これらのポイントを押さえることで、より効果的なシステム導入が可能になります。
同じメーカーの組合せでも対応しているか確認する
ソーラーパネルと蓄電池は、両者が対応しているか確かめておきましょう。同じメーカーの製品でも、発電効率や蓄電効率が変わることから、事前の確認が必要です。
セット販売されているものは互換性の面で安心ですが、個別購入の場合はメーカーに確認したほうが良いでしょう。具体的には、ソーラーパネルの電流や電圧、コネクタ等が蓄電池に対応しているかなどをチェックします。
製品によっては、組み合わせにより効率が低下してしまう可能性があるので、注意が必要です。
ソーラーパネルの出力に合った蓄電池を選ぶ
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせるときは、ソーラーパネルの出力に見合った容量の蓄電池を選ぶことが重要です。
蓄電池の容量が大きすぎると、蓄電池をフル充電できない可能性があります。また、蓄電容量が大きいほど商品価格も高くなるので、蓄電池の性能を利用しきれないと、導入費用が無駄になってしまいます。
一方、容量が小さすぎると貯められる電気の量が少なく、売電に回したり電力会社から電気を購入したりしなければいけません。
しっかりとしたシミュレーションをし、適切な出力の蓄電池を選ぶことが大切です。
目的に合わせて選ぶ
ソーラーパネルと蓄電池の選択は、導入の目的に合わせて行うことが重要です。とくに、災害における停電対策が目的の場合は、停電時の機能性についてしっかりとチェックしましょう。
たとえば、蓄電池には「特定負荷型」と「全負荷型」があり、停電時にカバーできる電気の範囲が以下のように異なります。
- 「特定負荷型」停電時は特定の部屋や家電にのみ電力を供給する
→200Vの家電製品を使用できない(IHクッキングヒーター、エアコンなど) - 「全負荷型」停電時でも、家中の電力をまかなう
→200Vの家電製品を使用できる
導入の目的や家庭の電気使用状況に応じて、適切なタイプを選択しましょう。
ソーラーパネルと蓄電池の導入は設置業者に相談しましょう
ソーラーパネルは電気を「つくる」、蓄電池は「貯める」役割を果たします。両者を組み合わせることで、電気の自給自足が実現可能です。また、電気代の節約や停電時の非常用電源、環境貢献といったメリットがあり、同時に導入することで初期費用が抑えられます。
ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせて設置する際は、同じメーカーの製品同士でも、組み合わせに対応をしているかを確認しましょう。家庭の電気使用状況も踏まえて、導入目的やソーラーパネルの出力に適した蓄電池を選ぶことが重要です。
東京ガスでは、お客さまのご家庭の状況や目的に合わせ、シミュレーションを基に最適なシステムのご提案を行っています。無料相談も承っておりますので、蓄電池やソーラーパネルの設置をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
(※1:出典元)定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ|MRI 株式会社三菱総合研究所
(※2:出典元)太陽光発電について|資源エネルギー庁