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高齢者の一人暮らしは年々増加しています。内閣府のデータ「令和4年版高齢社会白書」によると、総人口における65歳以上の割合(高齢化率)は28.9%となっており、今後も増加していくことが見込まれています。
そこで考えたいのが、高齢者の一人暮らしにおける対策です。高齢者の一人暮らしには、健康面や防犯面などさまざまなリスクがあるため、適切な対策が必要です。
本記事では、高齢者の一人暮らしに対策が必要とされる理由を解説したうえで、具体的な対策を紹介していきます。
高齢者の一人暮らしにおけるリスク
高齢者の一人暮らしは、ケガや病気、認知症などへの対応が遅れたり、犯罪などに巻き込まれたりするリスクがあるため、十分な対策が必要です。どういった危険性があるか、確認していきましょう。
病気やケガの発見の遅れ
高齢者は、軽度の風邪やケガであっても、放っておけば重症化してしまうおそれがあります。若い頃の経験から「これくらいはすぐに治る」と症状を軽く捉えてしまい、対応が遅れてしまうことも考えられるでしょう。
家族と暮らしていれば、家族が発見して医療機関の受診を促せますが、一人暮らしの場合はそれができないため、周囲の人が変化に気付けるような環境を意識して作っておくことが大切です。
生活意欲の低下
他社との関わりや、毎日取り組む仕事がない暮らしは、生活意欲の低下を招くおそれがあります。生活意欲が低下した状態は、心身の機能が弱ってしまう「フレイル」に陥るリスクが高いため、意識的に対策しなければなりません。
フレイルの予防には、適切な運動習慣と、バランスの良い食事、そして社会活動への参加が効果的だとされています。
認知症の症状の進行
病気やケガと同様に注意したいのが、認知症対策です。
認知症は、重症化すると日常生活にも支障が出てきますが、早期に発見することで進行を大幅に遅らせることができます。しかし、症状を自覚しにくいため、一人暮らしでは発見が遅れ、重症化してしまうリスクが高いです。
発症した場合でも、離れて暮らす家族や周囲の人に、早めに気づいてもらえるような工夫が必要です。
詐欺や犯罪などのトラブル
高齢者を狙った犯罪が増えています。特に多いのが詐欺被害で、「オレオレ詐欺」や「架空請求詐欺」「還付金詐欺」など、その手口は多岐にわたります。
近くに家族などの頼れる存在がいれば被害に遭うリスクを減らせますが、一人暮らしの場合は、もしもの時に連絡する相手を決めておくなど、事前に対策方法を決めておく必要があるでしょう。
詐欺だけでなく、悪質な訪問販売や電話による勧誘販売のような契約トラブルにも注意が必要です。本人の判断能力が不十分な場合は、成年後見制度の利用を検討するのもひとつの方法です。
自然災害の発生時の対応
一人暮らしの高齢者は、台風や地震などの自然災害発生時に、対応が難しいケースが少なくありません。一人で避難できず、逃げ遅れてしまう事態も考えられるでしょう。
災害発生時に頼れるような人間関係を近隣の人と築いておくなど、普段からの対策が必要です。特に日本は自然災害が多いため、その対策の優先度は高いといえます。
孤独死
一人暮らしの高齢者が増えたことで、誰にも看取られずに亡くなる「孤独死」も増加傾向にあります。孤独死したまま、長期間発見されないケースも少なくありません。家族と定期的に連絡を取り合ったり、地域の人との交流を持ったりして、異常があったときにすぐに気づいてもらえる体制を作っておく必要があります。
高齢者の一人暮らし対策として有効な方法
高齢者の一人暮らしには、上述のとおりさまざまなリスクがあるため、安心・安全に生活するためには、適切な対策を取っておくべきです。具体的な対策方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 近くに住む
- 成年後見人になる
- コミュニケーションの機会を確保する
- 自治体や民間企業による生活支援サービスを利用する
- 見守りサービス・緊急通報システムを活用する
それぞれ見ていきましょう。
近くに住む
高齢者の一人暮らし対策として、親世帯と子世帯が近くに住む近居です。近居は、住居は異なるものの、日常的に往来が可能な範囲に住むことを指します。
一人で暮らすにあたって不安や心配な面もありますが、「何かあったときにすぐに駆けつけることができる」という点は、お互いにとって安心材料になります。また、小さなお子様がいる場合に頼ることもできるでしょう。
ただし、近居を決めた場合にも、実際に引越すまでには時間がかかることもあります。状況によっては支援サービスも適宜活用して、近居の対応を進められると良さそうです。
成年後見制度を活用する
成年後見人制度を利用すれば、加齢や認知症によって判断力が衰えた場合も、詐欺や契約トラブルから財産を守ることができます。
成年後見人制度とは、成年後見人に選ばれた人が、本人に代わって財産を管理したり、契約を結んだり、本人の結んだ契約を取り消したりできる制度です。
成年後見人制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、どちらが採用されるかは、その時点での本人の判断力の有無によって決まります。本人の判断力がすでに衰えている場合は法定後見制度が採用され、家庭裁判所に選ばれた人が成年後見人になります。
一方、その時点で本人が十分な判断力を持っている場合は、任意後見人制度が採用され、本人が選んだ人が成年後見人になります。
コミュニケーションの機会を作ることを促す
コミュニケーションの機会を増やすことも、一人暮らしの対策になります。社会参加への機会が減ってしまうと気持ちもふさがりやすく、生活意欲も低下につながります。地域の活動や町内会行事へ参加するなど、積極的に人と関わる機会をつくることが大切です。
また、近くに住んでいる方とのつながりもポイントです。災害発生時の安否確認や体調の変化などに気づいてもらいやすくなるため、適度にコミュニケーションをとるようにしておきましょう。
自治体や民間企業による生活支援サービスを利用する
自治体や民間企業では、一人暮らしの高齢者が利用できる生活支援サービスを実施しています。サービス内容としては、配食、見守り、買い物の代行や同行、家事代行、その他さまざまな雑務と、多岐にわたります。自治体のサービスの場合は、地域ごとに内容や料金が異なるため、ぜひ確認してみましょう。
サービス内容だけではなく、一人暮らしの高齢者の生活に第三者の目が入ることも、生活支援サービスを利用する大きなメリットです。第三者であるサービス提供者によって、自覚していなかった心身の異変に気づき、早期の対応につながるケースもあるでしょう。
見守りサービス・緊急通報システムを活用する
見守りサービスや緊急通報システムの活用も有効です。何かあった場合に家族に連絡する仕組みを構築でき、安心して暮らしやすくなるでしょう。
見守りサービスにはさまざまなタイプがあります。例えば、自宅にセンサーを取り付けるタイプでは、高齢者の動きを検知し、異常があった時に通知を発信します。押しボタンつきのアクセサリーを身に着けるタイプでは、もしもの時に自分で押してサービス提供者に知らせます。
東京ガスグループでも、見守りサービス「もしものたより」を提供しています。ドアの開閉から安否を確認し、確認が取れなかった時のみ連絡がいく仕組みになっているため、高齢者本人のプライバシーを尊重しながらの見守りが可能です。
高齢者の一人暮らし対策を進めて安心して暮らせる環境をつくろう
高齢者の一人暮らしには、健康上、防犯上のリスクが数多くあります。対策するためには、異常があった際、家族をはじめとする周囲の人が、すぐに気付くことのできる仕組みを作っておくことが大切です。
高齢者の一人暮らし対策には、どこまでやればよいという正解はありません。まずは自分たちでできる対策をとり、それでも心配な場合は見守りサービスや緊急通報システムを活用しましょう。
東京ガスが提供する見守りサービス「もしものたより」では、トイレ等必ず使うドアに開閉を感知するセンサーを取付け、24時間以内に開閉がない場合、コールセンターから連絡があり、それでも連絡がつかない場合は家族などの見守り先に連絡がいく仕組みです。
初期費用は無料で、月額990円で利用することができます。インターネットも不要で、手軽に導入できるため、気になる方はチェックしてみてください。