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子どもの教育費や住宅ローンの返済、親の介護費、老後の生活資金など、お金の悩みは一生つきまとう問題です。それぞれの状況やライフステージなどによっても立てるべき資金計画が異なるため、個々人に合わせたプランニングが重要となります。
しかし、自分ひとりで資金計画を立てようと思っても、お金の問題は専門知識が求められることも多く、なかなか難しいものがあります。そうしたときに相談相手として活用したいのが、お金のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)です。
そうは言っても、「そもそもFPにどのような相談ができるのかわからない」「金融商品や保険商品の売り込みをされるのではないか」などと不安に思う方も多いでしょう。この記事では、そもそもFPとは何をしてくれるのか、FPに相談するメリット、相談できる内容や注意点などについて解説します。
FPとは?
FPは、相談者の将来の目標や夢を経済的な側面から実現するためにライフプランの設計を行う、暮らしにまつわるお金の専門家です。
日々の家計収支から貯蓄、投資、保険、税金などを総合的にみて資産設計・生活設計をプランニングし、必要に応じてほかの専門家の協力を得ながら、相談者にとって最適なアドバイスや提案を行います。
なお、FPは国家資格と民間資格があります。国家資格は「FP技能士」があり、1~3級の3段階に分かれています。民間資格には、国内で幅広く普及している「AFP」と、世界共通基準の上級資格「CFP®」があります。
相談できるCFP®は、日本FP協会の公式ホームページからも探すことができます。
金融商品や保険商品の勧誘がある?
FPへの相談で不安に感じやすいことのひとつに、「金融商品や保険商品の勧誘をされるのではないか」という心配があります。日本FP協会の『2021年度ファイナンシャル・プランナー実態調査 結果報告書』のFPの年間収入内訳の平均値によると、FP業務の売り上げのうちもっとも割合が多いのが「FP相談業務(16.7%)」 、次に「金融商品等の募集・仲介・販売による手数料(12.4%)」、そして「FPに関する講演・講師料(9.0%)」となっています。
これは相談者の悩みを解決するための方法の一つとして、金融商品などを勧める場合があり、その販売による手数料として利益が生じるためです。一方、相談者の意思に反し、強引に商品を売り込むことはできません。
原則的にFPは、相談者から受けた相談に解決策を提示するうえで必要な商品を提案します。その提案は相談者を第一に考えたものでなくてはならず、FPの養成や認証にあたっている日本FP協会の『CFP®認定者の倫理原則』でも「顧客第一:顧客の利益を最優先させなければならない」と示されています。『CFP®認定者の倫理原則』の8つの原則は「顧客第一」の考え方が起点となっており、これを違反した場合は懲戒処分など厳しい規定が定められています。
多くのFPの方は以下の倫理原則に基づき、顧客の利益を最優先として働かれています。
<CFP®認定者の倫理原則>
第1原則 顧客第一「顧客の利益を最優先させなければならない」
第2原則 誠実性「誠実性をもって専門的サービスを提供しなければならない」
第3原則 客観性「客観的に専門的サービスを提供しなければならない」
第4原則 公平性「専門家としてのすべての関係において、公平で道理をわきまえていなければならない。また、利益相反を開示し、管理しなければならない」
第5原則 専門家意識「専門家としての模範的な態度で行動しなければならない」
第6原則 専門的力量「専門的力量に満ちたサービスを提供するために、必要な能力、スキル及び知識を維持しなければならない」
第7原則 秘密保持「顧客のすべての情報を保護しなければならない」
第8原則 勤勉性「勤勉性をもって専門的サービスを提供しなければならない」
引用:厳格な倫理原則「CFP®認定者の倫理原則」|日本FP協会
FPに相談するメリット
FPの名前は聞いたことがあっても、実際に相談したことがあるという人は多くないかもしれません。相談のハードルを感じることも現実です。しかし、FPに相談することには大きなメリットがあります。
ここでは、FPに相談する主なメリットを3つ紹介します。
メリット1:お金の悩みを解消する方法を相談者に寄り添いプロの視点から考えてくれる
資金計画を立てる際は、家計収支から貯蓄、投資、住宅ローン、税金などを総合的にみてプランニングします。プランニングにはお金に関する幅広い知識を要するうえ、お金にまつわるさまざまな制度は複雑な仕組みであるものが多く、自分で計画を立てるのはなかなか難しいのが現実です。
加えて、個人を取り巻く環境やライフスタイル、価値観などによって立てるべきプランが異なります。相談者の意向や状況、目標を把握したうえで最適な選択肢を提案するのがFPの役割であり、相談する最大のメリットです。
メリット2:家計や保険の見直しによって、経済的負担を軽くできる
FPに資金計画を相談すると、まず現状分析をしっかりと行います。そのうえで、収入や支出、貯蓄などの要素を総合的に評価して、将来の目標に適した資金計画を作成し、問題点や改善点を抽出します。
また、家計や保険の見直しを始め、固定費の削減や節約方法などもアドバイスしてもらえるので、支出の見直しにもつながります。
メリット3:将来に対する漠然とした不安を解消できる
FPによるライフプランニングは、今後のライフイベントをまとめた「ライフイベント表」や、ライフイベント表をもとに将来の収支や貯蓄の状況をまとめた「キャッシュフロー表」といった資料を用いて行われます。
今後、まとまった資金が必要となるタイミングが具体的にイメージできるので、将来の漠然とした不安を解消できるでしょう。また、FPに相談することでお金に関する専門知識を吸収できれば、今後の生活で生かすことができ、将来の経済的な安定にもつながります。
以下の記事では、「ライフイベント表」や「キャッシュフロー表」の作り方についても解説しています。
FPに相談できる内容
FPに対しては、家計について、老後の生活設計、教育資金の準備、住宅ローンの見直しなど、暮らしにまつわるお金のこと全般を相談できます。
FPに相談できる主な事例を以下にまとめます。
・老後の資金づくりをするための投資の必要性
・親の土地や家屋を相続する場合に準備すること
・賃貸と住宅ローンを組んで購入するマイホームはどちらが得か
・要介護になった場合の必要資金の目安
・完済が70歳を超える住宅ローンの繰り上げ返済のタイミング など
なお、事例については日本FP協会のホームページ「みんなのFP相談事例集」にくわしく掲載されているので、ぜひ参考にしてください。
FPに相談するときに必要な事前準備は?
FPに相談する際は、事前準備をすることで効率的な相談につながります。
加えて、有料のFP相談を利用する場合、相談料金は時間単位で設定されています。相談前に無駄な時間が取られないように、質問事項などをまとめておくと良いでしょう。
以下に事前準備のポイントをまとめます。
お金に関する不安や疑問を整理する
まず自分のお金に関する不安や疑問を整理することが大切です。お金の悩みは、ライフスタイルやライフステージによって大きく異なります。
たとえば老後の生活資金がテーマであれば、年金対策、老後生活における節税方法など、聞きたい内容を具体的にまとめましょう。
収入と支出の状況がわかるものを用意しておく
自分の収入と支出の状況がわかるものを用意しておき、現在の収支が明確に伝わるようにしましょう。収支がわかる資料の例としては、家計簿、給与明細、預金通帳、保険証券、住宅ローンの返済予定表などが該当します。
これらの書類があれば収支状況を概ね把握できるので、FPの視点で問題点や改善点を提案できます。
いつまでにどうなりたいか「目標」を決める
いつまでにどうなりたいか、自分の目標を明確にすることも重要です。たとえば定年退職後の資金計画について相談する場合は、定年退職後のライフスタイルや資金計画のイメージをできるだけ具体的に話せるようにしておきましょう。
どのようなライフスタイルを目指すかによって、必要な資金はまったく異なります。自分の目標とするライフスタイルが定まっていれば、FPは目標に合わせた計画を立て、実現に向けての道筋を示してくれるでしょう。
FPに相談するときの費用相場
それではFPにはどのように相談したら良いのでしょうか。日本FP協会には、FP相談を体験するための無料電話相談窓口があるので、そちらを利用する方法があります。また、より具体的な内容はFPへの有料相談という方法もあります。
日本FP協会のホームページに相談料の目安(有料相談)』(2023年7月時点)によると、1時間当たりの相談料の割合で一番多いのが5,000円~10,000円(47.3%)、次いで10,000円~20,000円(33.5%)、そして5,000円未満(14.2%)、20,000円以上(5%)です。
出典: 相談料の目安(有料相談)|日本FP協会
ライフプランの提案書、キャッシュフロー表作成などを依頼する場合や、税理士、弁護士といったほかの専門家の協力が必要となる場合は、別途費用がかかります。
また、実際にかかる費用は相談内容や相談する地域によっても異なります。
FPに相談する際に注意すべき3つのポイント
ここでは、FPに相談する際に注意すべきポイント3つを解説します。
1.自分に合ったFPを選ぶ
FPに相談する際は、自分に合ったFPを選ぶことが重要です。FPはお金に関する悩み全般に対応しますが、得意分野は人によって異なります。また、金融機関や保険会社などが運営している場合もあり、その場合は特定の分野を得意としている場合が多いでしょう。
FPを選ぶときは、相性や話しやすさなどももちろんありますが、まず「相談したい内容に精通しているかどうか」を見極めるのがポイントです。確認するには、会社やFPのホームページ、プロフィールなどを見て、相談したい分野の実績の有無をチェックすると良いでしょう。
2.相談料金を事前に確認しておく
相談料金を事前に確認することも大切です。FPの相談料金は前述の相場が参考になりますが、実際の料金はそれぞれが独自に設定しているため、相談先によって料金が大きく異なる可能性もあります。
また、相談料金はプランや時間で設定していたり、定額制や顧問制を取っていたりとさまざまです。ライフプランの提案書作成、キャッシュフロー表作成など、サービスごとに別途料金を設定している場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
3.相談内容を明確にする
相談をする前に、相談したい内容を整理しましょう。これが明確になっていないと、相談者が本当に欲しいアドバイスができないこともあります。
老後の資金計画を相談したい場合であれば、まず目標とするライフスタイルを考えておきましょう。また、現在の資産状況や収支状況もできるだけ把握しておくことや、子どもの教育費、住宅ローンの有無など、今後も負担になりそうなものを取りまとめておくことも大切です。
ポイントをおさえて、FP相談を有意義なものにしましょう
FPがお金の専門家であり、FPが相談者の悩みを解決するうえで必要と判断した商品については、提案を受ける場合もあります。しかし、その提案を受け入れるかどうかは、ご自身できちんと判断することが大切です。
FPへの相談を有意義なものにするためには、まずどのような将来像を目指したいのか、今後必要になるの親の介護の負担はどれくらいかなど、目的を決めて相談内容を明確にすることです。次に自分の相談したい内容を得意としているFPを選ぶことで、より満足度の高い解決策を示してもらえる可能性が高まります。これらの点を踏まえて、信頼できるFPに相談してみましょう。
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