目次
「農業や漁業をやりたい」
「若いころから田舎暮らしをしたいと思っていた」
「都会の喧騒から離れたい」
このような夢や理想を実現するため、50代、60代から移住を検討する方が目立つようになりました。故郷に帰るUターン、故郷の近くに移り住むJターン、新しい土地に移住するIターンなどという言葉もあります。とくに働き方・暮らし方が多様化した昨今では、これまで住んでいた都市部を離れて地方に移住し、第2の人生をスタートさせる方が増えつつあります。
しかし、移住生活を成功させるには、夢や理想だけでなく、現役世代であれば仕事をして生活していくという現実もしっかり見据えなければなりません。本記事では、移住のメリット、デメリット、移住先での働き方、今住んでいる家の取り扱いなどについて解説します。
地方への移住や仕事探しをするメリット、デメリット
セカンドキャリア、第2の人生として、住まいを地方に移すメリットは多くあります。一方で、デメリットもきちんと認識したうえで、自分のライフスタイルやキャリア、家族の状況などを踏まえて検討することが大切です。
メリット
●自然の多い環境で生活できる
●生活費が抑えられるなど
地方に移住したうえで仕事をするメリットには、通勤ラッシュが少ないことがあります。また、都市部に勤めていると、郊外から都心部への移動など通勤に時間がかかる傾向があります。混雑した電車での通勤を繰り返すことはストレスを抱える大きな要因となります。一方、地方は都市部よりも通勤時間が短い傾向にあり、交通機関も都市部ほど混雑していないため、通勤のストレスが少なく、自由時間が増えるというメリットがあります。
また、自然豊かな環境が好きな方にとって、地方移住はそれ自体が生活の満足感につながるものです。さらに地方は都市部に比べて、住居費や物価が安い傾向にあるため、生活費が抑えられます。
デメリット
●公共交通機関が不便
●医療機関が少ないなど
地方は都市部と比較して生活費を抑えられやすい反面、都市部に比べて最低賃金が低いなど、収入が減少する可能性があります。たとえば2022年度の全国の最低賃金をみると、最も高い東京が1,072円なのに対し、最低の青森県、高知県、長崎県、沖縄県などが853円と、219円もの差が生じています。都市部で働いていたときと同等の収入を目指すとすれば、なかなか仕事が見つからないリスクもあります。
また、都市部に比べて交通の利便性が低いこともデメリットのひとつとしてあげられます。都市部では電車やバス、タクシーなどの公共交通機関が豊富ですが、地方の多くは自家用車が必須です。
さらに、今後、年齢を重ねていくにあたって必要不可欠になる医療機関が少ないことも、懸念材料です。健康に不安がある場合は、最寄りのかかりつけ医を探すなど、予め対策を打っておいたほうが良いでしょう。
移住先での働き方
移住するからといって、必ずしも転職を伴うわけではありません。移住先での働き方については、次の4つに大別されます。
現在の仕事を継続する
●移住先の支社へ転勤する
現在の職場が完全リモートに対応している、あるいは通勤が可能なエリアへの移住を検討している場合は、今の仕事を続けることも可能でしょう。
たとえば、東京都内に勤務先がある場合、1時間半程度の通勤圏内であれば、今の仕事を継続することも難しくないでしょう。リモートワークとの併用ができれば、もう少し距離を伸ばしても対応できるかもしれません。
また、会社によっては移住先の支社などに転勤することも可能でしょう。ただし、これが可能となる会社は多くはなく、会社との調整も必要となります。会社といつまで支社で務められるかなど、綿密に認識合わせをする必要があります。
起業する
移住を機に一念発起して起業するという手段もあります。事前に移住先の状況を調査し、起業したい事業の競合状況を確認するなど、事前準備は重要です。また自治体によっては、起業を支援する助成金などが活用できることもあります。
ただし、移住と起業という2つの人生の変革を同時に行うことにはリスクも伴います。移住自体にも、起業にも多額の投資が必要になります。いざというときにどのように備えていくか、リスクを踏まえて慎重に検討しましょう。
移住先で仕事を探す
移住を機に、移住先の企業に転職するのも選択肢のひとつです。たとえば、これまでの技能を生かして転職ができれば、移住生活も充実したものになるでしょう。また、移住先でそれまでは取り組めなかった全く新しい職種にチャレンジするのも、豊かなセカンドライフを過ごすうえでは有効です。転職を希望する先の条件などを見定め、新たな土地での仕事に挑戦しましょう。
完全リモートの会社に転職する
移住先では、業種の選択肢が限られていたり、希望の職種の募集がなかったりすることもあり得ます。そのような場合は、完全リモートの会社に転職するのもひとつの方法です。移住する先と別の場所にあっても出社する必要がなく、どこでも仕事に携われるのであれば、移住先の選択肢はさらに広がるでしょう。転職サイトなどで、フルリモートの仕事を検索してみて、ご自身に合った仕事を探してみましょう。
移住する際、今住んでいる家はどうするのか
移住した場合、現在の住まいはどうなるのでしょうか。空き家にして放置しておいても、固定資産税のほか管理の費用もかかります。そうなると、選択肢は「売却する」か「賃貸に出す」かです。売却にも賃貸にも、それぞれメリット・デメリットがあります。
次でそれぞれ解説しますので、現在の状況や将来のライフプランに合わせて、適切な方法を選択しましょう。
売却する
完全な移住を決め、今後は家族も住む予定がないのであれば、売却するのが現実的です。売却によって得られた資金は、移住資金や老後資金に充てることもできます。
しかし、万が一にも移住先が合わなかったり、移住先で理想の仕事が見つからなかったりしたときに、戻る場所がなくなってしまうリスクもあります。心配なときは、一時的に空き家や賃貸住宅とし、移住先での生活が安定したときに売却することも選択肢として有効でしょう。
賃貸に出す
移住先に永住する予定がない場合、賃貸に出すという選択肢もあります。しかし、賃貸にすれば必ず安定的な収入が得られるとは限らないことに注意が必要です。
賃貸需要が少ないエリア、築年帯、広さ、間取りの家であれば、貸し出すことで逆に赤字になってしまうリスクも生じます。「賃貸収入が欲しい」という意向だけでなく、賃貸住宅として価値があるのかを客観視したうえで判断することが大切です。
●いくらで売れるのか
●貸した場合、需要はあるのか
これらの疑問は、自分だけではわからないものです。不動産会社に査定を依頼したり、相談したりしながら、自身の意向と物件の特徴や価値を踏まえたうえで総合的に判断しましょう。
地方移住によって利用できる制度
地方創生の一環として、昨今では移住に対する自治体の助成金制度、支援制度が充実しています。これらの制度は自治体によっても異なるため、活用するには、移住を検討している地域にどんな制度があるか調べる必要があります。
制度を活用することによって仕事が見つかりやすくなったり、起業しやすくなったりするため、積極的に活用していきましょう。ここでは、移住支援制度の一例をご紹介します。
地域おこし協力隊
「地域おこし協力隊」とは、都市地域から過疎地域等に移住し、地域ブランドや地場産品のPR、地域おこし支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る総務省の取り組みです。
隊員は、各自治体の委嘱を受けて活動します。任期は、おおむね1年から3年。隊員1人あたり上限480万円の補助金が充てられます。2022年度の隊員数は、6,000人以上。受け入れ自治体は、1,000人を超えています。
この仕組みを活用することで、移住先にも早くなじむことができるでしょう。
移住支援制度
ほかにも、国や自治体をあげ、それぞれの地域特有の移住支援制度が設けられています。以下は、その一例です。これらの情報は、2023年7月時点のものとなっています。最新の情報は各自治体のHPで確認してください。
制度名 | 支援の内容 | 対象者・条件(一部) |
---|---|---|
起業支援金 | 起業などのための伴走支援と事業費への最大200万円の助成 | 東京圏以外の道府県や東京圏内の条件不利地域において社会事業の起業をする人 |
移住支援金 | 世帯:最大100万円 単身:最大60万円 |
東京23区に在住または通勤する人が東京圏外へ移住し、起業や就業 |
静岡県移住・就業支援金制度 | 世帯:100万円 単身:60万円 |
東京圏から静岡県に移住して就業・起業 |
とちぎWORKWORK就職促進プロジェクト事業 | 世帯:100万円 単身:60万円 |
東京23区に在住または通勤する人が栃木県へ移住し、起業や対象企業に就業 |
奈良市お試し移住支援制度 | 宿泊費・交通費等 最大2万円 |
奈良市外にお住まいで奈良市への移住及び定住を検討し、本市での暮らしを試験的に体験するため登録宿泊施設に2泊以上宿泊 |
地方移住の際は、事前準備をしっかりと
地方移住をするのであれば、早い段階から計画や構想を練り、段階的に検討を重ねていくことが大切です。ポイントは、仕事や生活において譲れない部分、妥協できる点を明確にすることです。
昨今では、移住や移住先での就業に対する助成や支援の制度が充実しています。これらの制度を有効活用することで、スムーズな移住につながります。
また、移住のプロセスは、不動産の売買や賃貸が伴う複雑なものです。必要に応じて、移住支援の専門家や不動産会社、税務アドバイザー、キャリアアドバイザーなどに相談しながら進めていきましょう。
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